刹那の夢を見る

 ――先生は、きっと自分よりも長く生きるのだろう。
 漠然とそんなことを考える。ベレスは普通ではない。良くも悪くも。彼女は恐らく黒鷲の学級の教え子の誰よりもずっと長く生きる。
 それでも、そんな彼女と一緒に生きていきたいと願った。だからこの選択は間違っていないのだと思う。

「……リンハルトのいない世界、か。想像もしたくないな」
「先生は僕が死んだら悲しむでしょうね」

 そんなの当然だ、と言いたげなベレスを見てリンハルトは苦笑する。
 戦争が終わってから数節。ベレスとリンハルトは婚約し、忙しいながらも平和な日々を過ごしていた。
 5年前、黒鷲の学級の担任と教え子として出会ったその日からベレスの外見は全く変わっていない。彼女の出生の秘密を考えるとリンハルトが年老いてもベレスは若い女性の姿のままかもしれない。

「僕が死んだあとも先生にとって一番の存在が僕だと嬉しいんですけど」
「……心配しなくてもリンハルト以外に恋をする自分の姿なんて想像出来ないよ」

 本当に奇特な人だとリンハルトは思う。
 面倒くさがりでいつも寝てばかりで、そんな自分にベレスが惚れる理由が分からない。教え子としても自分なんて問題児でしかなかっただろう、と。
 そんなリンハルトのことが好きだ、と確かに彼女は言ったのだ。
 1秒でも長く一緒に生きていきたい、そう思ってもらえたのなら嬉しくはあるのだが――。

「でも、出来ることならリンハルトと共に眠りたい」

 リンハルトの心臓が止まるその瞬間にこの命を終えたい、なんて寂しげに笑うベレスはどこか美しかった。