その奇跡に祝福を

*CPとは言い切れない内容

 まだ、ユーリスと名乗っていなかった頃。
 とある貴族の令嬢を暗殺するという仕事を与えられた少年は庭師として貴族の家に潜り込み、暗殺対象だった少女と親しくなった。親しくなって油断させたところで息の根を止める。そんな簡単な仕事の筈だった。

 ――出来なかった、どうしても。

 あと少しで少女は殺せるという距離にいたのに。彼女とあまりに親しくなりすぎたのだ。暗殺の為に近付いたこの少女のことが殺せなくなってしまうほどに。
 結局少女の父親に犯行が見つかり、その貴族の家からは追い出されて二度とその少女と会うこともないだろうと、そう思っていた。
 少女……ベルナデッタと再会したのはつい先日のことだ。
 事件を起こしたことで地上での居場所を失い、陽の当たらぬアビスで過ごしてきたユーリスを元傭兵だという新任教師がスカウトして、その教師の教え子にベルナデッタがいた。

「よっ、ベルナデッタ」
「ひいいぃぃユーリスさん!?」
「……そんなに驚くことないだろ?」

 殺される、などと取り乱しているベルナデッタにユーリスは思わず溜息をついた。
 平民の男の子と仲良くしていたことが平民嫌いの父に知られて、その男の子は二度と現れなくなった。その男の子は殺されたのではないか、とベルナデッタが話してくれたのは昨日だった。
 その平民が自分だと打ち明けてからもベルナデッタはユーリスのことを必要以上に怯え、避けている節がある。
 尤も、他人に対して必要以上に怯えたり被害妄想が激しかったりするのは今の彼女の性格でもあるのだが。

「なあ、ベル」
「はっ、はいいぃぃ」
「俺はさ、あの頃本当に楽しかったんだよ。だからまたお前に会えて嬉しい」
「そ、それはベルだって……ユーリスさんと一緒に遊ぶのは楽しかったですけど……!」

 あの頃と全く同じ、というのはまだ難しそうだが今はこれで十分だ。