神亡き世界の嘆き

 苦労をかけてごめんなさい、マーク。
 あなたの幸せを望んでいながら私はあなたを不幸にする。仲間を、家族を始末しろと命じる私はなんと残酷なのでしょう。
 そんな私を今でも健気に慕うあなたに私は何もしてあげられません。母さんと呼ばれる資格もない私の為に世界を敵に回すあなたを、守ることすら出来ない。
 ギムレーの隙をついて少しでもこの体を奪い返すことが出来ればマークを解放させられるかもしれない。お願いだから私の為にその小さな手を汚さないでほしいのです。
 マーク。ひとりにしてごめんなさいね。母親らしいことを何ひとつ出来ないままあなただけに罪を背負わせて死んでしまう私を許さなくてもいい。どうか私のことは忘れて幸せに生きて。
 もうすぐ希望の子たちが、異界のクロムさんたちが、私を殺してくれるでしょう。

「奴らの信じる神なんてこの世界にはいません。私が殺しました」
「ギムレー様」
「さあ、忌まわしき奴らを始末しなさい、マーク。たとえ相手が姉だったとしても手加減してはいけません」
「分かっています。……僕はあなたに忠誠を誓っています、あなたの傍を離れない」

 嗚呼、なんて恐ろしいことを命じているのでしょう。私はあなたに殺されてしまうほうが遥かに幸せだというのに。
 もう一度あなたをこの腕で抱きしめたいのに、それさえも許してくれない忌まわしい邪竜の血。
 あなたから父親を奪い、姉と殺し合いをさせている私を本心では憎んでいるのかもしれません。否、憎んでいてほしいと私が思っているのです。マークの笑顔なんてもう何年も見ていませんけれど、彼が幸せに暮らせる世界に私は必要ない。

「ギムレー様、あなたのお手を煩わせるまでもありません。僕が、殺します。相手が誰だとしても」

 私は罪深い邪竜。
 我が子に罪を背負わせることしか出来ないのです。