真綿にくるまれるような

*ジョカムの息子のディーアとカムイの話

 ディーアにとって、カムイは母である。
 戦場では大抵の兵士を倒してしまう戦士であり、不慣れな家事を頑張る強くて優しい母親。確かに自分は、そして弟のカンナは「普通の家庭」では育っていないけれどもそれを不幸に感じたことはない。
 物心ついた頃には両親と離れ、世話係の者たちと暮らしていたし弟とも会うことなどなかった。たまに会いに来る両親に寂しいと漏らしてしまうこともあったが――全て自分たちを守る為に決断したのだと知っている。
 優しいが故にその決断が正しかったのだろうかと時々悩んでいる母を見るのは少しだけ心苦しい。

「……父さんと母さんが俺とカンナのことを守る為に決めたんだから恨むわけないじゃん?」

 第一、そう決めたカムイが一番苦悩したであろうことはディーアにも分かっている。両親の幼少期の話などあまり詳しく聞いたことはないがカムイが複雑な環境で育ったことは何となく知っているしだからこそ出来るだけ子供と過ごしたいと思っていた筈だ。
 仮に自分が同じ立場だったとしても我が子を守る為に同じことをしたのではないだろうか。
 まあ、時間の流れが違う場所で育ったから両親が頻繁に会いに来たつもりでも自分たちにとっては数年振り、なんてこともあったのは否定できないけれど。

「ディーアは優しい子ですね。やっぱりジョーカーさんに似たのでしょうか?」
「えー……父さんは別に優しくないじゃん……俺も優しいってキャラじゃないけど」

 両親の元で育っていたら自分はまだ赤子だったのだろう。
 秘境で育てられたお陰で両親の隣で戦うことが出来、両親を守ることも出来るのだから、やはり自分は全く不幸ではないと思う。

「そんなことより、そろそろ父さんのところに戻らないとまずいんじゃね?」

 父であるジョーカーと弟のカンナを置いて出かけていたことを思い出す。
 主であり妻でもあるカムイのことになると父は息子が相手でも容赦ない。そんなつもりはないが母を一人で独占していると後が面倒なことになりそうだ。

「そうですね、ジョーカーさんもカンナも寂しがっているかもしれませんし」
「…………父さんももう少し大人になればいいのに」

 それでもこの両親と弟が、ディーアは好きだった。