紡ぐ

 歌が、聴こえた。
 優しく、繊細で、けれど力強い歌声だと思う。カムイはこの歌声が大好きだった。アクアがよく歌っているものと同じ歌。やはり歌声の主――シグレはアクアの息子なのだと実感する。
 最近はよく彼の天馬に乗せてもらい、一緒に様々な場所へ出かける機会も増えた。綺麗な景色を見ながら、彼の歌を聴く。その瞬間はつらいことも忘れられるような気がした。
 やがて歌が止み、天馬が地上に降りてくる。その様はまるで本の中に登場する、白馬に乗った王子様のようだと思った。
 シグレは確かに王族の血を引いているのだけれど。

「シグレさん、また歌っていたんですね」
「カムイさん、聴いていたんですか」
「邪魔をしないように聴いていたつもりだったんですけど……迷惑だったでしょうか?」

 そんなことありません、とシグレは笑った。
 彼の歌は聴いているだけで元気になるような気がする。きっと歌っている本人が優しい人だからだろう。

「カムイさん、もし時間があるなら今から一緒に出かけませんか?」
「天馬に乗って、ですか?」
「俺、カムイさんに見せたいものがあるんです」

 ほら、と差し伸べられた彼の手を掴む。今日は何処へ連れて行ってくれるのだろう。楽しみだ。