やがて世界を蝕む呪い

 神よ、ともう何度目になるかわからない祈りを捧げた。
 どうか、どうか、忌まわしい邪竜の呪縛から妻を解放してくださいと。そのためならばこの身を全て捧げたって良い。
 ルフレがクロムを殺害したのは少し前のことで、あの日から彼女は豹変してしまった。邪竜と同化してしまったのだ。
 どうして気付かなかったのだろう。一番近くで彼女を見守っていたのは自分だった筈なのに。
 邪竜ギムレー。忌むべき存在であるそれが、愛しい人の中にいる。
 最愛の人の意志を、自由を奪い、世界を滅ぼそうとする邪竜をどうしても許せなかった。彼女を救わなければ。
 彼女を救う術なんてわからない。彼女を救う為に彼女と戦わねばならなかったとして、自分は彼女に武器を向けることが出来ないような気がした。

「……ルフレさん。どうか、ご無事で」

 あなたはきっと邪竜に負けない。
 胸の前で手を組み目を瞑る。この祈りが少しでもルフレに届きますように。邪竜に打ち勝つ力となりますように。