(3)
「満夜ー!」
「おかえり渚沙。迎えに行けなくてごめんね?」
「大丈夫よ!その代わりきっちり割り勘ね」
「勿論!今払う!あ、こんにちはおにいさん。渚沙とたくさんの荷物ありがとうございました。どうぞお入りください」
「…おう」
親友と、隣にいる男の荷物を自然な動きで譲り受け、部屋に招き入れる満夜。
男は室内に入りドアを閉め、メローネを見つけるとツカツカ歩み寄った。
「チャオっす〜ギアッチョ!」
「一人でふらふら歩き回ってバカかお前は!オラッ!」
「ギュエッ!?」
「まっ、松葉杖…」
「ギアッチョさんやばぁっ!」
「笑っとる場合かーッ?!」
剣道の試合だったら見事な一本が判定されていただろう。
絡まれていた時に満夜が拾うことが出来なかった松葉杖を、ギアッチョがメローネに鋭く振り下ろしたのだ。
「心配してくれたのかギアッチョ?ディモールト・ベネ!」
「うるせーッ!俺が担当の時に問題起こすなってだけだ!!」
「「ツンデレ?」」
「ツンデレじゃねえ!大体何ださっきの【チャオっす〜】は!チャオは分かる。イタリア人なんだから当たり前だ。でも語尾の"っす〜"は要らねえだろうが!意味わかんねぇ!!空気でも漏れてんのかクソクソクソッ!!」
原作通りのマシンガントークに思わず口の端が笑ってしまう満夜。
(さすが本物だ)
「えっと、ギアッチョさん?」
「あ゛んだよ!」
「チャオっすは、日本の漫画の登場人物が言うセリフです。私がメローネさんにお話したので使用したのかと。何故イタリア語が入っているかは、作中で架空のイタリアンマフィアが出てくるので、そういうセリフを作者が考えたのではないでしょうか?詳しくは漫画貸すのでご自分でお確かめ下さい。…はい、どうぞ」
「お、おう」
彼女が鞄から取り出したのは暇潰しにと持って来ていた漫画。しかし、
「あっ、これ日本語だった!」
「オイ」
「「あははははっ!」」
「ミツヤちゃんはしっかりしてんのかうっかりなのか分かんないな…ふふっ」
「テメェも大概そうだろうが」
「誰だって失敗は…。もう!メローネさん笑いすぎですよ!」
「そうだそうだ!」
「渚沙だって笑ってたでしょ!」
「てへっ」
うっかりのせいか。その後メローネもギアッチョも気を張るといった様子はなく、室内は明るい雰囲気に包まれている。
そこで満夜は渚沙に食事代を返した後、彼等にお礼と称してルームサービスを呼び、4人は少し遅い昼食を取ることにした。
「これ美味しい!」
「そうなの?」
「うん!はい、あーん」
「「え」」
「あー…ん、本当だ。美味しい!」
「そうでしょうそうでしょう」
目の前で渚沙が満夜にルームサービスで運び込まれたデザートを食べさせる。
女子同士仲が良いのは分かるが。悪ふざけか、わざとらしさを出した渚沙のせいで、まるで交際しているカップルの様だ。
「美味しいの当たってよかったね」
「うん。メローネさんも、はい。クッキー美味しいですよ」
「おぉ!これはいいな!ベネ!」
「ウゼェぞ変態。静まれや」
「あ、あはは…」
興奮するメローネと辛辣なギアッチョ。
対照的な二人に苦笑う満夜。
そんな彼女の様子を見たギアッチョは、ちらりと目線を上下すると口を開いた。
「お前」
「え?あ、はい」
「笑ったら可愛いんだからもう少し女らしい格好しねえのか?今の恰好もいいけどよ。似合うぜきっと」
「!?」
満夜は持っていたサンドイッチのトマトを皿に落とした。
一度烏の行水でシャワーを浴びた彼女は、最初の恰好に比べて、確かに本来の女性らしさを取り戻していた。
「──やる〜!ギアッチョ!」
「満夜を口説こうなんて許しまへんで!」
「な!?くっ、口説いてねぇ!!」
「「余計タチ悪い!!!!」」
ギャーギャーとやかましい室内で満夜は驚いて固まっている。
(ギ、ギアッチョさんもそういう事言ったりするんだ…完全に予想外…っ!)
イタリアの男性舐めてた!とじわじわ顔が赤く染まる。
そして固まってた間に。
「よし満夜!観光行くわよ!」
「え?」
「俺達も一緒にな!」
「え!?」
「…逃げんなよ」
「ええぇぇぇぇぇっ!!?」
何故か4人で出掛けることになっていた。
(なんで!?)
(こうなったら満夜改造計画よっ!)
(お詫びくらいにはなるかなぁ〜)
(…)
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