(3)
笑いながら街中を駆け抜ける日本人女性二人。足の運びに漲る若さのせいだろうか。
あっという間に通り過ぎて行った彼女等を、現地の老夫婦は微笑ましく眺めた。
「はぁ…はぁ…ここまでくればいいかしら?」
「分からない。イタリアはスリが多いらしいし、私服警官のふりをして近づいてくる奴らもいるって」
「うわぁ〜」
「スリはグループで動いていた。"匂い"は覚えた。でも違う面子で来られたら意味が無い」
「ホテル突き止められたら面倒ね」
「そこまで大規模な集団でなければ大丈夫だろうけど…危険な少ないほうがいいね」
宿泊先の変更を満夜が提案すると、すんなりと渚沙は承諾した。
「元々一つの都市に留まろうとは思っていなかったもの。いい機会だわ」
「そういうポジティブ思考好きだわ」
「ありがとう。じゃあさっそく荷造りしましょう」
帰りの道のりはバスの中も警戒し、無事宿泊していたホテルに到着。
早めのチェックアウトをした。
「次、どこに行きたい?」
「うーん。フィレンツェかヴェネツィア。満夜は?」
「渚沙が行きたい所で」
「じゃあ両方行こうか」
「軽っ!?」
二人は空港に戻り、テルミニ駅から各都市へ繋がる列車に乗ることにした。
しかし、
「申し訳ありません。予約のため全席満席で」
「遅延による影響で、チケットを購入いただいても座席が保証できません」
「天候の影響で…」
天高く昇っていた太陽の傾きが大きくなっても、彼女達の列車は決まらなかった。
なんとかローマから出発する寝台列車にギリギリ空席ができ、露伴先生の伝で予約したフレンツェのホテルに着く頃には、夜の帳が深く下りていた。
「ほんと…空席あって良かったね」
「うん」
忙しなくやって来た自分たちに笑顔で応対してくれるホテルの従業員にありがたく思いながら、二人は部屋に入った途端ベッドに倒れ込む。
「もう寝よう…」
「そうね‥明日は付近をのんびり観光しよう?」
「うん」
「おやすみ〜」
「おやすみ…」
荷解きもしないまま、二人は泥のように眠った。
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