蹴り放つ大和撫子
*失禁表現あり
今日はツイてない。
組織のトップが新しくなってから暗殺チームも仕事に合った評価を与えられ、仇も取れて(生きてたけど)…。
俺はスタンドによる毒ヘビに咬まれたものの、お払い箱にされず治療を受けさせてもらっている。
まるで夢のようだと浮かれ、リハビリを街中にしたのがいけなかった。
「よぉメローネェ…あの時はよくもいたぶってくれたなぁ!」
「うん?誰だっけ?」
「なっ…!」
「まあまあ、終わったことをグチグチ言わないでさぁ〜」
「テメェ!」
あぁ面倒くさい。
ベイビィは…ストックないんだよなぁ。ギアッチョ待ってればよかったかな。
なんて考えているとこんな状況なのに声を掛けられた。
(なんだよ面倒くさい)
そう思いつつ振り向く。
「美しい人どうかしたのかい?もし貴方が許すのなら、どうかその憂いを帯びた眼差しの理由を聞かせてはくれないか?」
「「ハア!?」」
「つーか何一人で歩いていってんだよ。心配すんだろうがよォ!」
俺はそいつに見覚えがなかった。
俺は髪が長いし、そのせいで女と間違ったんだろうと思った。
けれど、こいつは俺に向かって心配したと言いながらウィンクをし、合図を送ってきた。
(おもしろい)
ギャングと知っても知らなくても、声をかけてきたなら利用してしまえばいい。
最近荒事とは離れていたせいか、変に高揚した気分だ。
俺はその"男"の口車に乗ることにした。
(つーか何でただトイレ行くだけでこんな時間かかるんだよ。ちょっと、ヤバいかも…)
「ゴメンゴメン、悪かったよ。ちょっと気晴らしにさ」
「…チッ、後でなんか奢れよな。まったく」
相槌を打つとすぐ返事が返ってきた。
それがギアッチョ…あ、俺の仲間ね!に似てて自然と笑顔になる。
なんてそうしていると、"男"が俺の横に立ちスタンドを発動させた。
「!?」
「な゛っ!?」
「…?」
「じゃあさようならお二人さん」
スーツ型のスタンドらしく、下半身を覆った後"男"が軽く足を振ったかと思うと、ゴロツキが消える。
どうやら向こうも一人スタンド使いがいたようだが、実力は見ての通り。
何メートルもの路地の向こうに、先程まで粋がっていたゴロツキ共がすっ飛んでいた。
それを唖然と見ていると、"男"は俺をいわゆるお姫様抱っこをし、その場で跳んだ。
いや、飛んだのだ。
「うわぁぁあああ!?!」
「おにいさん落ち着いてください」
首にしがみついていると耳元で言われる。
反論しようと顔を上げると、スタンドで背中に翼を生やした"男"が笑顔で俺を見つめていた。
背後に見える青空。そいつの微笑みに思わず見惚れる。
俺たちは空を飛んでいたのだ。
いつもと違う街の景色に見惚れていると、あることに気づいた。
"男"の身体が柔らかい。主に胸の部分が。
更に。
「おにい、さん?」
「はい。あれ?違いますか?あ、ちなみに私女です」
「マジかよ!」
「はい。おにいさんは体格?骨格とか?筋肉の付き方とかで目星を」
「…」
(男って勘違いして女にときめいたのかよぉおおッ!見抜けよ俺の審美眼!!)
なんて落ち込んでいるといつの間にかどこかの建物の上に降りたようだった。
それに安心したのもつかの間、身体の中で不意にこみ上げるものが。
それは尿意。
ヘビの毒の後遺症で右半身に上手く力が入らないため、我慢が出来ない。
冷や汗が滲む。そして、
「絡まれているの見ていられなくて…。あ、すいません貴方をどこ、に……」
「……ッ」
俺は、一応命の恩人の女の腕の中で。我慢できずにションベンを漏らしちまった。
今日はツイてない。…本当に。
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