(2)


恩人の女の服、腕、太ももが俺の漏らしたションベンでベチャベチャに濡れる。
女は唖然と雫が滴る音と様を見ていた。


「…」
「…」


沈黙が痛い。

いい年齢した男が情けない。
罵声を浴びせられて張り手食らって、あぁこんな場所に置き去りにされるかもしれない。とか羞恥心と共に考える。

しかしどれも違った。

「ごめんなさい。気がつかなくて…」

彼女は俺に謝り、被害の少ない自分の腰に巻いていたパーカーを解けないように俺の腰やケツが隠れるように巻くと、また俺を姫抱きし空に飛び出した。今度は目的地があるようだ。

「…どこ、行くんだ?」
「私ともう友人が宿泊しているホテルです。あ、もう一人は今外出中なんで大丈夫ですから」
「…」
「フード被って少し顔隠せばなんとかなりますよ」
「…」
「お風呂入っている間にランドリーで服、洗っちゃいますから」
「…ごめん」
「いえいえ」
肩をポンポンと軽く叩かれ、あやされるようにホテルまで俺は運ばれた。
…ちょっと泣きそうになったのは皆、内緒だぜ。

「ホテルに着いたのでもう少しの我慢です」
「…あぁ」

玄関ドアに所々身体をぶつけながら彼女が言う。俺は顔を手で覆いながら頷いた。
事情を説明されすんなりと部屋に通される。
3階の316号室に入るとそのまま風呂場に運ばれ湯船の縁に下ろされた。

「え?」
「靴脱がせますね」
「あ、うん」
「痛かったら言ってください」

靴ひもが解かれ靴と靴下が脱がされる。生暖かくて不快だったからマジ助かった。

「靴は洗えないんで後で私が買ってくるか、誰か知り合いに連絡して持ってきてもらってください。どうします?」
「じゃあ、知り合いに連絡する」
「わかりました。携帯電話は?」
「ズボンのポケット…うおっ!?」
「危ない!」

湯船の縁から落ちそうになり動きを止める。
俺の手を掴み支えてくれた彼女は、また俺を持ち上げ運び出した。
次に運んだ場所はベッド。
俺を持ったまま足でシーツを剥がし床に重ねて敷くと、その上に俺を下ろし、換気のために窓を開けた。

「携帯は…あった。はい、どうぞ」
「あ、ありがとう」
「湯船にお湯張っておきますね。靴はビニール袋に入れときます。あ、私も友人に連絡するんで一旦部屋の外に出ますから気兼ねなく話してくださいね?部屋に入る時はノック三回の後にまた二回扉ノックしますから、返事お願いします」
「わかった。…なんか手慣れてるよな」
「以前介護の仕事を。後は知人に警備会社で勤めてた方がいて一通り教えてもらいました。私自身はただの事務員ですけど」
「なにこれすごい」
「興味あることに関しての集中力や勉強はすごいと言われます」

(※何回も転生体験してるせいで経験豊富なだけです)

「へぇ〜」
「はい、この部屋の鍵です。じゃあよろしくお願いします。5分後に戻ってきますから」

そう言い女が出て行く。
いつの間にか風呂場から湯が流れ、溜まり始めている音がしていた。

「……ジャッポーネの女は、皆あんなに親切なのかな…?」

しばらく俺は彼女が出ていった扉を見つめていたが、手に持っている携帯で仲間に連絡を取るのだった。

「…プロント」
「もっしーギアッチョ!」
「何がもっしーだ!テメェどこにいやがるッ!」
「それがさぁ〜」

これからおもしろいことがありそうだ。

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