(4)
戦いが終わり。クソボロだけど大事にすると言い、魔導書に頬を擦り付けるアスタは、五つ葉に気づいていない。
「アスタ」
魔法の使い手が倒されたことにより拘束が解かれたユノが、アスタに話しかける。
「また、助けられちまったな…この借りはいつか必ず返す…!約束、覚えてるか?」
「ユノこそ。覚えてたのかよ」
互いの顔を見て、自然と顔に笑みが浮かぶ。
「どっちが魔法帝になるか勝負だ!!」
拳を突き合わせ、約束を改めて固く誓った。
「魔導書が手に入ったって、シスターやチビ共に教えたらびっくりするぞぉー!」
「シノブさんにも魔導書手に入れたことを知らせないと。オマエの分を取っちまったかもしれないって、塔の管理者に直談判しに行ったから」
「オイィィイイッ!!なにしてんのユノ君?!止めろよ!」
「…いや………」
(オレも直談判しに行こうとしてたなんて言えない…)
「止める間もなく…」
「仕方ないな!ならシノブさんを探しに行こう!」
単純なライバルに気づかれないよう、胸を撫で下ろすユノ。
レブチの事を知らせる為にも、二人は魔導書塔の中へと足を踏み入れた。
場所は変わって最上階。
偲は受付に案内され、魔導書塔の管理者に謁見していた。
ユノとは途中まで一緒にいたのだが、偲が先にトイレに行った後受付に見つかったため、別行動になってしまった。
偲は先に今回の魔導書授与について不服を申し立てたが、意見は通らなかった。
「シノブさん。ワシは此処で長年魔導書の授与に携わってきたが、言えることは唯一つ。ワシの力で持ち主を変えることは出来ない」
「そんな…!」
「魔導書が持ち主を選ぶのです。我々にはどうしようもできません」
「………そう、ですか…」
(でも、他に魔導書が無いか、探しもしてくれないんだ…)
偲は椅子に深く腰掛け、溜め息をついて苛立ちを落ち着かせた。
「優しく、友人思いな貴女にこそ。その魔導書は授与されたのでしょうな」
「お爺さん…。私は、この国の人間ではありません。何故魔導書が授与されたんでしょうか?」
「では、この七つ葉の魔導書について、少しお話ししましょう」
自分の持つ魔導書について何も知らない彼女は、管理者の話を静かに聞いた。
「それは昔の事───。とある災厄がクローバー王国にもたらされた」
それは空を黒く覆い、多くの人々を蝕み、死を齎した。
「あれ?魔神の話じゃないんですね?」
「あぁ、それよりさらに古い伝承だよ。絶望と恐怖に人々が膝を折る中、一人の異国の民がその地に足を踏み入れた。彼もしくは彼女は身寄りがなく、近くの村に助けを求めた。しかし排他的な村のほとんどの住人がそれを無視し、ある時は追い払ってしまう」
「タイミング悪いし酷いなぁ…」
「だがある日。村人の一人が哀れに思い、こっそり自分の家に保護したところ。異国の民が親切にされたお礼として、人々を苦しめていた災厄を終焉に導いた」
「へぇ…」
「それから何度も、クローバー王国に危機が訪れた時に異国の民が現れた。多くの者が冷たく接する中でも、行く道に病人があれば病気を治し、貧しい者に自分の金品を与え財を成す手助けをし…」
「ボランティア精神ありすぎでは?」
「ワシも子供の頃聞いた時は信じられなかったよ。その魔導書をこの目で見るまでは…」
話は続く。
「施しを為した異国の民は、いつしかクローバー王国の人々に慕われるようになった。その人物が持っていた魔導書が七つ葉と言われておる。また、クローバー王国にある三つ葉・四つ葉の魔導書の原形だとも伝えられておる」
「あぁ、葉っぱの数的に」
「人伝に話が伝わったせいか、多くの伝承が生まれた。どれが真実かはワシにも分からん。七つ葉故に、貴女は多くの者に慕われ、狙われるじゃろう。気をつけなされ」
「はい…」
偲は管理者から返された魔導書を受け取る。
話を聞く前よりも重く感じるそれを、彼女は恐ろしく思った。