番外編 初めての魔法
部屋から出た偲は、聞き覚えのある声のした方向に振り向いた。「あ、シノブさーん!」
「うるさいアスタ。通路に響く」
「ユノ君、アスタ君も…!?」
偲はアスタの負っている傷を見て青ざめた。
「大丈夫アスタ君!?血が出て─」
「もう止まったから大丈夫ッスよ」
「いやいやいや!頭の怪我は危ないよ!」
何か出来ないかと焦りながら偲が考えていると。
ひとりでに彼女の魔導書が開き、ページから光と共に小瓶に入った水薬がコロンと出てきた。
「おっと!何だこれ?」
「シノブさん。これは…?」
「えぇーとっ?ポーションだって。青は傷とか体力の回復、赤はエリクサーっていうらしくて、魔力と体力の回復だってさ」
「スゲー!!」
「飲むの早っ!?」
説明を聞いてすぐ口付けたアスタの傷が、みるみるうちに治癒していく。見事ならっぱ飲みだ。
「ぷはー…っ!」
「アスタ君。副作用とかあったら困るし、話は最後まで聞いてね?知らない人からなら毒かもしれないし」
「いやぁシノブさんだから大丈夫だろうし」
「確かに」
「何その厚い信頼!?」
「「だってオレ等のこと馬鹿にしないから」」
二人は口を揃えて言った。
「チビ達に優しいし、けどちゃんと叱ってくれて。教会に来てから手伝いもずっとやってくれてるし」
「今だってオレのこと心配してくれて魔導書使ってくれたしさ!」
「シノブさん、もしかして初めて魔導書から魔法使ったんじゃ?」
「マジすか!?あざーすっ!」
「…アスタだけずるい」
「へっへ〜!いいだろぉ!!」
「じゃあユノ君も。怪我したら使ってね。お守り程度だろうけど、無いよりはマシだと思うから」
「ありがとうございます。大事に使います」
ユノはズボンのポケットにポーションをしまう。
「あ!そうだシノブさん聞いてください!オレも魔導書貰えたんすよ!ホラ!」
「おぉ!!よかった…!私、アスタ君のやつ取っちゃったと思ってさ」
「いいんすよそんなこと〜!塔のじいさんに直談判までしてくれたんでしょ?それだけで嬉しいし」
教会の皆くらいしかオレ達に優しくないしと話すアスタに偲は眉を潜めた。
「それに魔導書は与えられた人にしか使えないし!」
「……あ!?そうなんだよね。シスターかな?前聞いたと思うんだけど、すっかり忘れてて」
「──それだけ、一所懸命だったってことでしょう」
「だな!」
「アスタ。あの男のことを知らせないと」
「あぁ!?レブチとかいうヤツ!じいさん何処か偲さん分かりますか?」
「う、うん。この部屋にいるよ」
三人は勢いよく扉を開けて塔の管理者を呼ぶ。
お爺さんは驚いて飲んでいた紅茶を勢いよく吹き出した。
三人は窃盗の犯人を捕まえたとして褒められたが、お爺さんを驚かせたことを注意されてしまうのだった。