賭け金は魂
蛍タンポポも納まり始めた頃、偲はシスターに頼まれ事をされた。「ごめんなさいシノブさん。神父様の手伝いを頼みたいのだけど…今大丈夫かしら?」
「はい」
「隣町に行って、建物の修理を手伝ってほしいの」
「はぁ…?出来るかな?」
「必要な物を手渡しするだけでいいよ。最近アスタもユノも手伝ってくれなくてなぁ……」
教会の運営費のために、よく違う村や街の住民の手伝いをするのだ。
トホホと寂しげに言う神父にほだされて、偲は手伝いを承諾した。
近いといっても目的地までは歩いて数日。
彼女は神父の箒に乗って向かうことになった。
「高い高い高い高い!きゃーーっ!?」
「はっはっは!緊張し過ぎだよ!もっとリラックスして」
「ひぇえ…!」
箒に乗るのが初めてだった偲は、町についた時にはすっかりグロッキーに。
「うぅ…」
「すまんすまん!はしゃぎ過ぎた!」
「帰りもこれか……」
帰宅の際にも同じことが起こると気づき、彼女は遠い目をした。
「ま、まぁあれだ!気分が落ち着くまで此処にいるといい。私は依頼主のところに行ってくる」
「はい、いってらっしゃい」
この村の治安は良いのだろう。神父は偲を置いて先に歩いて行った。
小さくなる背中をボーッと見つめた後、偲はその場で膝を抱えて目を瞑った。
「お姉さん?」
「う、なぁに……?」
「大丈夫?」
「ねむいけど、大丈夫…」
うとうとしていると、いつの間にか側に子供が来ていた。
びっくりして顔を上げる。
「あのね、お父さんもお母さんもお仕事で暇なの。お姉さんも暇?」
「箒に酔っちゃって…気分が落ち着くまで此処にいていいって言われたから、暇だね」
「じゃあ、僕と遊んでくれないかなぁ?」
「此処から動かないなら、いいよ」
「やったぁ!」
少年はバルトと名乗り、両親が共働きで家にいないといつも此処に来ると話した。
「私は神父様のお手伝いでこの町に来たの。バルト君はお手伝いしないの?」
「大工も酒場もまだ危ないから、ダメだって…」
「そっか。きっとご両親は怪我しないか心配なんだよ」
「そう…かなぁ……?」
「うん。きっとそうだよ」
「……」
「いつか必ず、お手伝い出来るようになるよ」
「本当?」
「うん。バルト君が諦めないで、練習したりお願いしたらね」
「僕、頑張るっ!」
「その意気だ!」
(遊ぶというよりお悩み相談になってしまった)
愚痴を聞いて欲しかったのだろう。
励ました後、少年はすっかり元気になり。偲と砂で絵を描いたりしてしばらく遊んだ。
「あ、神父様だ」
「おぉ、シノブさん。気分は大丈夫かな?」
「はい。バルト君が声をかけてくれましたから」
「バルト君と言うのかい?ありがとうね、お姉さんの様子を見ていてくれて」
「う、うん」
「じゃあねバルト君。お願いが叶うといいね」
「ありがとうシノブお姉ちゃん!」
笑顔に見送られ、偲は神父と共に仕事現場に向かった。
「ハージ村から来ました偲です。今日はよろしくお願いします」
「おう!よろしく!」
快活に挨拶を返してくれた依頼主は屋根の上で作業している。
冬の間に傷んだ屋根の修理を行っているのだ。
「今回は坊主共は来てねえのか?」
「ユノとアスタは今年魔導書が授与されましてね」
「ほう!そうかそうか」
片手間だが着々と作業を進めていく彼は魔法をほとんど使わない。
平界との境目に比較的近いこの村は、魔力が乏しい人が大多数らしい。
だからみんなで助け合って生活しているのだ。