(6)
騎士団二人の元手金を取り戻して返還した偲。自分のお小遣い分も稼げた彼女は、何処かで教会の子供達にお土産を買おうと思っていた。
「お前やるなぁ!」
「いや…次は無いですよ」
「なんか欲しいもん無いか?」
「買収しにかかってる!?しかもお金私が今稼いだやつ!というか何で付いてくるんですか!?」
「いやぁ…」
「何でモジモジ!?」
ヤンキーとヤクザのドンみたいな見た目の男性が、指をいじりながらモジモジしてるのは精神的によろしくない。
内心引きながらも、偲は話を聞くため相対した。
「どうかしましたか?」
「あ〜…」
「?」
「何か、礼がしたいんだが──」
「さっきナンパ断られたからヤミさんがご遠慮してんだよ!察しろや!」
「え、あれ本当にナンパだったの?嘘だぁ〜!」
「お前等が察しろよこの気まずさを」
後頭部を気まずそうに掻きながら、ヤミは青筋を立てる。今にも殴りそうな雰囲気だ。
「いやいや、気にしなくていいですよ」
「だがなぁ…」
「え〜…気持ちは嬉しいです。その、ナンパ(?)されたのも。初めてだし…。でも私は仕事に来てて、同じ職場の人を待ってるんです。断り無しに他所に行ったら心配や迷惑をかけてしまいます」
「それもそうだな…」
彼女の正論にヤミは黙った。
トサカヤンキーもといマグナは、それを見て驚く。
傍若無人を地で行くような振る舞いをする団長を見てきた彼は、女の一言で行動を止める姿を見たことがなかったのだ。
「もし、そちらの都合がよろしければ」
「?」
「保護者に声を掛けて、許可をいただいた上でなら──…」
頬を染めて二人を見る偲にマグナも釣られる。
「なら作業場まで行くか」
「え?あ、ウッス!」
三人は少し離れた作業場まで歩いて行った。
作業場では大工達が談笑しながら休憩に入っているらしく。
その中に大工の棟梁ヴァイツと神父もいた。
「神父様」
「おぉ〜!シノブ、戻ったか!」
「嬢ちゃんどうだった?俺の家内の飯は?」
「とても美味しかったです。デザートまで頂いてしまいました」
「ハッハッハッ!そりゃあなにより!…で?何で魔法騎士団の方がいるんだい?」
「奥さんの店で賭けをしてるところに遭遇して…私が割り当てられた仕事は終わったという話をしたら」
「賭け金取り戻してもらったからな。何か礼をしてぇってことだ」
「もしこれ以上お仕事が無いなら…教会の子供達にお土産を買いに行きたくて。了承をいただければと」
「賭けをしたのか!?」
「す、すみません…」
(やっぱり賭けはいけなかったかな?この世界の宗教ってどうなってるんだろう?)
怒鳴られ畏縮する偲。
「まぁまぁそう怒鳴んなよオッサン」
「!?」
「夕暮れまでに此処に戻って来っから。なんなら家まで送るし。じゃ、よろしく」
「え?ハッ!?」
偲はそのままヤミに手を引かれて作業場から離される。
(庇われた…?)
結構乱暴な印象が先行していたが、漫画では癖のある団員達を統率する団長なのを思い出す。
案外世話焼きなのだろうか、と痛くない力で繋がれた手を見て偲はこっそりと笑った。