(5)
「ガルちゃんもふもふ過ぎて動きたくない…」「おいおい。他の使い魔がやきもち焼くだろうが。…お前が餅になるかもな」
「さぁ次の魔法、どうぞ!」
「ジョークだよ」
「行けガルちゃん!タックルだ!」
「うおっ!?」
アルを轢き逃げしたガルム(?)はそのまま消えた。話の邪魔になると思ったのだろう。
「アイツめ…」
「まぁまぁ、どうぞ話の続きを」
「仕方ない。座学といくか」
仕切り直したアルは魔導書を指差す。
「魔導書は所持者の魔力を糧に呪文が発生する。」
「うん」
「七つ葉(これ)の場合は、魔力の部分は同じだ。だが、異国の民がちょうどよく伝説上の凄い呪文を持っているわけないよな?」
「どういうこと?」
「これは見た呪文、想像した呪文が"創造"される魔導書だ。だから万病も治せるし、下手すりゃ巨万の富を得ることが出来るのさ。あれだ、妄想・欲望が形に成るってことだ。【オレが認めればの話】だがな」
「あぁ、なるほど」
(だからハリポタの引き寄せ呪文が使えたのか)
「良いことに使うとオレの善行の数が増えて、ご主人様が巨万の富を得るなりして堕落したらオレの餌になる。効率的だろう?」
「うん、そうだね。じゃあ良いことに使うね」
「軽いなぁオイ!そんで、アンタの想像する魔法が面白そうだから」
「乗っ取り計画?」
「…だぁっ!もうしねぇよ!」
「本当に?」
「あぁ。外にも出してくれるし話だって聞いてくれる。そんな奴今までいなかったからな!」
不貞腐れたようにそっぽを向いたアルの耳は赤い。偲がくすくすと笑うと、彼は更に口を尖らせた。
「ちぇっ」
「ごめんねアル。嬉しくて」
「……許してやるよ」
「ありがとう」
「──話を戻すぞ。つまり、この魔導書に呪文が無いのはそういうことだ。オレが認めればある。認めないから無い。シンプルでいいだろ?下手に強大な力を持つと皆変わっちまう…」
「じゃあ、私とアル、二人の魔導書ってことだね?名前書いとく?今マ●キーしか無いけど」
「うわ臭っ!そのペン仕舞え!」
「はーい」
大人しく従う偲。
「万年筆でも借りるか」
「そうしてくれ…」
ふと、偲は疑問に思った。
「もし想像した魔法の魔力足りなくて、それでも呪文唱えたらどうなるの?」
「不発に終わるか、制御が効かなくなって使い魔に喰われるか、魔力の奔流に身体が耐えきれず四肢が弾け飛んで死ぬか─」
「段々酷い結末に!?」
「どれも過去にあったことだ。オレは、アンタにはそうなって欲しくない」
「アル…」
「だから試験までに、みっちり仕込んでやるから安心しろ」
整った顔に悪どい笑みを浮かべ彼女を見つめるアル。
背筋に冷たいものが走り、偲は生唾を飲み込んだ。
「今日はここまでだ」
「ウベァ…」
「大丈夫か?」
「ヒエー…あんまり…」
「だろうな。喧嘩したことは?」
「小さい頃には少し…」
「躊躇しているのが丸わかりだ。動きがぎこちない。敵はお前を心配なんかしてくれねぇぞ」
「そうなんだけどさぁ…アルは友達だし…」
「──あのなぁ…オレは今、魔(マナ)の集合体と実体とが半々。怪我したって本の中に戻れば治る」
「ごめんなさい。せっかく教えてくれてるのに」
「なら、しっかりしてくれ」
「…うん」
「アンタと、いろんな景色が見たいんだ」
「!」
「おっし!明日は呪文の数増やすのにバンバン魔力使うからな!」
「うへぇええ〜!?」
こうして試験日前日までの時間。アルに地獄の特訓をされたのだった。