小手調べがラスボス級
「で、調子はどうかね?」「友達に助けてもらって修行?いや拷問?されたので、魔法のコントロールとかは自信あります!」
「ほうほう…して?対人戦闘は?」
「あ、相手の胸を借りるしか…っ!」
「自信が無いのか…?」
「いや、試験で殺したらどうしようと不安で」
「あっはっはっは!コントロールが出来るなら大丈夫じゃろう」
とある僻地の片隅。先にハージ村を出ていた偲は、試験日当日にダイゴロウに会いに来ていた。
不安を子供達に悟られたくなかったのだ。
「己と、その友人とやらを信じなさい。努力したんじゃろう?」
「はい。ゲロ吐いても頑張りました…」
「刃物の怖さを知っているなら、使い方を誤ることもあるまいて。しゃんとせい!」
「ぐおおっ…!」
バシリと背中を叩かれ、偲は悶える。気合いの一発だ。
「気合いを入れるためにこれをやろう。それに、真っ正面から戦わずとも勝利は出来るさ」
「えっ?」
「孫子の兵法を知っているかな?」
「!」
魔法騎士団入団試験会場。
そこには多くの受験希望者が集まっていた。
魔法騎士団とは、九つの騎士団から成る魔法帝直属の、戦闘に特化した魔導士軍団のことを指す。
命を懸けて国を護る英雄軍として、全国民の憧れだ。アスタとユノは既に試験会場で注目の的になっていた。ユノは四つ葉の魔導書の所持者として、アスタは沢山のアンチドリに集られて。
「ぬぉあああ寄るな鳥共〜〜!」
「シノブさんまだかな…?」
「えっ?シノブさんまだ来てないのウベフッ!?…いや〜〜〜ぶつかってごめん─」
「あ?殺すぞ小僧」
そして、彼からの処刑宣告で。
ぶつかった相手は、周囲から破壊神と恐れられるヤミ・スケヒロ。武功より被害額が上回る、魔法騎士団黒の暴牛の団長だ。
それを知らずアスタは更に失言をし、頭部にアイアンクローをされる始末。
(うぉおおお頭が爆発する〜〜!)
(何やってんの)
刑執行のカウントダウンがされる中、偲が会場に到着した。
「あれ?アスタ君?」
「おっ、お゛助けぇええ〜〜!!」
「え?おはようございますヤミさん。彼がどうかしましたか?」
「この小僧が無礼極まりない発言をしたので処してます」
「…アスタ君、この人にご迷惑をおかけしたのかな?」
「ぶつかった挙げ句老け顔発言」
「ユノてめ゛ぇぇええ!」
「老け顔は私でも言われたらショックだわ…」
「うおおおおすいませんシノブさんイダダダダダダッ!」
「俺に謝れよ俺に」
結局カウントダウンは進み、残り2になった時。他の魔法騎士団長が集まり、アイアンクローは解けた。
「チッ、大事にしろよその命。でないと殺す」
「えぇぇえええ!?」
「あ、そうだ。─偲さん、アンタもな」
「えっ?あっ、はい!」
(((声掛けただけで死の危険あんの!?)))
周囲で見守っていた受験生は勘違いして恐れ戦いた。
「今回の試験は私が仕切らせてもらうよ」
「おぉ─!現最強魔法騎士団『金色の夜明け』団団長…ウィリアム・ヴァンジャンスだ!」
黄色い声援が男女問わず発せられている。喧しく思いながら耳を傾けていると、敵の大将首を取ったとか団員からの信頼が厚いとか称賛の言葉ばかり。
(へ〜。まぁ上に立つならそれくらい人望とか能力があったほうがいいよな…)
偲がボーッとそれを聞いていると、いきなり後ろから突き飛ばされる。
いつの間にか第一の試験が始まっていたらしい。ヴァンジャンスが出した魔法【魔樹降臨】。それから作られた箒の偲の分が奪われてしまい、
「フン、みすぼらしい最果て出身が。とっとと家に帰りな」
目の前で折られてしまったのだ。
その場に残るのは、周囲からの嘲笑と折れた箒だけだった。