(4)

「シノブさん…かっけー!」
「あぁ」

アスタとユノは興奮冷めやらぬ状態で言葉を交わす。
一撃。しかも相手の魔法を跳ね返しただけ。
自身の消耗は無いも同然で、まだまだ彼女は実力を隠しているだろう。

(オレも負けてらんねーな!)
(魔法の威力に磨きをかけないと…)

胸中で闘志を燃やす二人。


「はぁ…終わった。こんなもんか」
《オレと特訓しといて、こんな奴に負けてたらぶっ殺そうかと思ってた》
《マジかよ》
《ジョークだ、ジョーク》
「おい、テメェ!」
《怖いなぁ…教会の今日の晩御飯なんだろう?それとも騎士団で食べるのかな?》
《あ〜…》
《教会に帰れたらノモイモ入ったシチュー食べたいな。ホッとするから》
「シカトか!」
《《うるせぇな…》》


渋々振り向いた先には。


「こんだけ待たせといて一撃で終わらせてんじゃねぇ!」
「え、いきなり叱られた…」

魔法騎士団『翠緑の蟷螂』団長、ジャック・ザ リッパーが舌なめずりして立っていた。

(えぇぇ?どういうこと?勝ったのに怒られるとかなにそれ…)

「今度は俺と戦え!」
「えっ?対戦相手は倒したのに…」
「細かいことは─いいんだよっ!」
「わっ!?」

いきなり魔法で斬りつけられ、偲はその場から飛び退いた。

「どういうことですか!」
「テメェを最後にしたのは七つ葉の魔導書の力を確認するためだ。それなのに一発で終わらせやがって!つまんねぇことしてんじゃねぇよ!!」
「質問への返答あざーす!でも横暴じゃね!?他の団長さん達も止めてくださいよ!」

団長達にサッと顔を逸らされ、偲は気づいた。

(皆楽しみにしてたんかい!!)

彼女は怒りを通り越して呆れた。

「喋ってるなんて余裕だな!」
「ッ!?」
「シノブさん─っ!」
「い゛ぃっ〜〜〜てぇ……っ!!」
「ハッ!余所見してるからだ!」
《偲!》
《大丈夫、深くない…》

隙をついて攻撃され、偲は右肩から二の腕を負傷した。
だが、あぁ見えて騎士団長は手加減しているらしく。離れた所で彼女の反撃を待っていた。

「エピスキー…よし治った」
《面倒臭ぇなぁ》
《だよねぇ。でも、あぁまでされて尻尾巻いて逃げ出したんじゃ、貴方の主も、女も廃るってもんだ》
《偲…》
《無謀だけど、やるしかない─!》
「オイオイオイ、まだやる気起きねぇのかあ?なら─テメェの名前呼んだ奴等刻めば、やる気は起きるか?」
「あ゛ぁ?」

その言葉に彼女はキレた。
無言で魔法を出し、攻撃を仕掛ける。しかし魔法騎士団の団長たる彼には軽くあしらわれる。

《落ち着け偲!》
「あの野郎ふざけやがって…!」
「ヘッ!そんなもんかテメェの実力はよぉ!」
《危ねぇ!!》
「!」

ギリギリで魔力の刃を躱す偲。しかし、冷静さを欠いた彼女は足払いで転倒させられてしまう。

「うわっ!」
「さっきよりは敵意が出てるが…まだだな」
「ひぇっ…!?」

転んだ拍子に頬を擦りむき、そこから滲む血を舐められた。

《あぁぁぁーーーっ!?》
「うわぁああああシノブさんが汚されるぅうう!?」
「え、えんがちょ…!」
「まだ余裕があるみてぇだな。危機感ねぇのか?」
「ある!めっちゃある!公衆の面前っ!恥ずかしいからやめて!」
「「「「…」」」」
《…》

一瞬にして静まり返る会場。

「え?何?…え?」
「─オイ」
「は、はい?」
「公衆の面前じゃなけりゃいいのか?」
「はぁ?………ばっ、違うっ!違うからっ!?」
「ほ〜う?」
「その意地悪い顔やめて!ちょっ、近い近い近い!」
《偲から離れろトカゲ面!》

ひいこら言いながら何とか拘束から抜け出した偲は、自分の身体を抱き締めた。

「騎士団の人ってこんなのばっかなの!?変態っ!変態集団!」
「おい。アイツのせいで他の騎士団の評判まで下がってるぞ」
「女の敵だな。彼女は私の騎士団にこそ相応しい。貴様等になんぞ勿体無いわ」
「勝手なことをぬかすな」

内輪揉めが起こりながらも、戦いはまだ続く。

(とりあえず顔洗いたい)
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