(2)


(まいったなぁ…あの着物、ジジイのところのやつだろ?どんだけ入れ込んでんだよ曾孫扱いか)


人当たりの良い笑顔は変わらないが、少し見ない間に増した魔力量。
試験にギリギリ間に合う運の良さ。困難を自力で何とかしてしまう頭の回転の速さは、戦場で生き残るにはもってこい。

(こりゃあ、駄目かな)

他の魔法騎士団団長達の力の入れように内心思った。誰もが彼女を欲しがっている。
黒の暴牛は評判が悪い。
その評判を知らずにいた偲と会話をしたが、これからは他と変わらない敬遠された態度を取られてしまうかもしれない。

(…ん?)

なんとなくオレは、それに違和感を覚えた。

「おいヤミ。後はお前だけだぞ?」
「おぉ。うーん……」

アイツを見下ろす。
真っ直ぐ、期待しながら自分の言葉を待つ眼差しと目が合った。

「…お前が世話焼いてくれねぇと、団が物理的に崩壊しそうでな。悪いが、ちょっと助けちゃくれねぇか」
「「「「はぁ!?」」」」
「…」
「お、お前等男のせいで、彼女の中で騎士団に対する評判がまた下がってしまうではないか!」
「ヤミ!テメェのせいでこっちに飛び火したじゃねぇかよ!」

また揉めてる団長達。
偲は彼の言葉を熟考していた。

《賭けの時と一緒だな?》
《あ、うん。見てたんだ?》
《見応えあって面白かったぜ。だが便利屋扱いされそうだな…》
《そっかぁ》
《碧か?紅蓮か?水色はよくわからん。紫はうさんくせぇ感じがするな。金色のはまず顔見せろ》
《まともそうな所はそこらへんだよね》

「シノブさーん!オレと一緒にクソボロになるまで頑張りましょ〜?」
「アスタ。その誘い方はおかしい」
「何ぉおお〜っ!」
「…ふふっ、クソボロ仲間か。何かあったらアスタ君に慰めてもらおうかなぁ」
「「「「え?」」」」
「知ってる人がいるほうが安心するし。じゃあ、黒の暴牛で」
「「「「えぇ〜〜〜っ!!?」」」」

会場は揺れた。

「金は?出世は!?貴族の仲間入りだって夢じゃないのに!?」
「いや七つ葉あるし。金儲けしても、お世話になってる所に寄付くらいしか思いつかないしなぁ…ていうか貴族になってどうすんの?下民うんぬんで仲間外れにされたりして寂しいのは嫌だよ私は」

《だからアスタ君の所に行きまーす!まぁ、何処にいてもアルはいてくれるからいいけど》
《ったく、ありがたく思えよ?》
《はーいっ!ありがたや〜》

ポカンとした表情のヤミだったが、よろしくお願いしますと頭を下げる偲を見て、彼女が自分の団に来ることに気づいた。

「マジ?」
「ヤミさんが七つ葉取った〜〜っ!!」
「お兄さん、七つ葉呼びやめてくださいね。引き摺り下ろして雑草呼びするぞ」
「アッハイ」
「…」
「あの、駄目でした?何か不都合ありました?」
「無いし、いいけど…」
「もしかして冗談?」
「いや本音。お前が欲しかった」
「お、おう…」

ストレートな言い方に顔が赤くなる。

(誤解される言い方止めろ!)


他の団長からは不満が噴出したが、

「何処の騎士団入るかは受験生の自由って言ってましたよね?」
「そっ…それはそうだが!」
「…本当にその団でいいのか?君は後悔しないか?」
「何かで後悔するなら、自分で選びます」
「──では、決まりだね。これにて試験の全ての行程を終了とする。受験生の皆、お疲れ様」

緊張がゆるみ、途端にざわつく会場内。

《アル、眠い》
《もうちょいだ。頑張れ》
「シノブさん」
「ユノ君、お疲れ様。最終試験見れなくて本当にごめんね」
「いえ。シノブさんが無事で何よりです」
「お互いにね。まぁユノ君は涼しい顔して倒したと思うけど!」
「そんなことは」
「ことは…?」
「想像にお任せします」
「あはは!団離れたけど仲良くしてね!手紙書いていい?」
「勿論」
「シスター達に文字とか教えてもらったけど、文章変だったらごめんね?」
「はい。じゃあ、騎士団の方が待っているので」
「うん。またね!」
「はい、また」

ユノは軽く手を降ると、金色の夜明け団の待つ方へ歩いていく。

《オレ等も行くか》
《うん》

偲とアルの二人も、黒の暴牛団の待つ場所へと向かった。
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