黒の暴牛
「疲れた…黒の暴牛の人見つかんない…うげぇ人酔いしそう」《疲労困憊だな。大丈夫か?》
今の偲は団長との試験のせいで、風に吹かれたら飛んでいきそうなくらいにフラフラのヘロヘロだ。
「あぁ、いたいた!あれ?顔色悪いよどうしたの?」
「さっきのお兄さん…」
「あ、あはは〜……」
「ごめんなさい。少しというか、かなり、すごく、疲れてしまって…」
(座ったらきっと秒単位で寝れる)
「もう一人の新人君が来たらアジトに行くから、もうちょっとの辛抱だよ。凄い戦いだったからねぇ。お疲れ様」
彼女は感動した。
チャラい人だけどきちんと話が通じることに。
「ありがとうございます。さっきは失礼なものの言い方をしてすみませんでした。シノブ・アマチと申します。黒の暴牛で一生懸命頑張りますので、どうかご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」
「あ、いやいや!こちらこそありがとうございます的な?俺はフィンラル・ルーラケイス。よろしく」
謝意と共にお辞儀をすると、そんな堅苦しくなくていいよとフランクに言われる。
「ねぇ、ヤミさんと俺以外にもう一人観戦してたのに気づいてた?」
「え?いや、緊張してましたし。トイレに疑似軟禁されてたので」
「そ、そうだったね。ごめんごめん。紹介するよ。同じ黒の暴牛の、ゴードン・アグリッパだ」
「…」
後ろを振り向くと、黒い軍帽を被り小声で何事かを呟く男が立っていた。
目を見開いたままの彼は、夜いきなり飛び出されたら子供が泣きそうな表情をしている。
(瞬き、いつしてるんだろう?)
「はじめまして。今フィンラル先輩から試験を見てくれてたと聞きました。改めましてシノブ・アマチと申します。シノブとお呼びください。これからよろしくお願いします。ゴードン先輩」
「ブツブツブツブツブツ…」
「えっと…。コイツいつもこんな感じだから、あまり気にしなくていいよ」
「じゃあ、はい握手!」
「!?」
「ご迷惑かけるかとは思いますが、頑張りますので」
「………よろしく」
「お、頷いた」
「よかったぁ…!」
僅かながら反応が返ってきて、ひと安心する偲だった。