02



「遅いですね〜」
「あのチビいつまで待たせんだ」
「ブツブツブツブツ」

試験会場も人が少なくなりつつある。
アスタを待ち始めて30分が経過し、少しずつ会話が減っていく。
とうとう偲は我慢できず地面に座り込んでしまい寝始めた。


「すいませーん!遅れましたぁーっ!」
「オレを待たせるとは良い度胸だな…!!どんだけ長ぇウンコしてんだテメー」
「いやホンっっトすんごいの出たんスよ!もうこ〜〜〜〜〜んな極大な…」
「誰がお前のウンコ事情を話せと言ったよ」

いだだだだだと騒ぐアスタ。
アイアンクローで持ち上げられているため、米神で体重を支えている状態だ。
偲が起きていたら皮膚は大丈夫かと心配していただろう。

「おい。そいつ起こせ」
「あ、はい。シノブさーん?新人君来たから移動するよ〜?」
「…」
「ありゃりゃ。爆睡かな?」
「ブツブツブツブツ」

先程まで疲れきっていた彼女の姿を思い出す。

(う〜ん、背負えっかなぁ?)

「フィンラル」
「ヤミさん、爆睡っス。背負えます?」
「馬鹿ヤロー。特別扱いしてんじゃねぇよ」
「え?」

ヤミは躊躇なく、彼女にアイアンクローをした。

「いたいいたい痛い痛いっ!?」
「よぉし起きた。アジトに行くぞー」
「うわいってぇ目ぇ覚めた…はい。分かりました」
「えぇええーーっ!?!」

フィンラルは目の前の光景に驚愕した。

「どうした。なんか忘れもん?」
「いやいやいやいや!団長何でそんな扱いしてんの!?君も何早くから順応してんのって!?」
「ウチは男女平等だからな」
「いや、案内していただくのに居眠りしていた私が悪いし。それに──顔舐められるよりはマシかなと」
「もう何と言ったらいいか…。比較対象酷いね」
「アイツと一緒にすんなよ。オレはもっと大人しいから。乙女座だから」
「乙女座関係あるんスか?」
「細かいことはいいんだよ。ほら、さっさと行くぞ」

ツッコミを諦めたフィンラル。
やっと彼等は、フィンラルが使用した空間魔法"堕天使の抜け穴"でアジトに向かった。
アスタはヤミを待たせた罰だろうか。服の襟を捕まれ空間魔法の中に投げ入れられたため、顔面から向こう側に着地した。

「ぶふぉぉぉっ!おづづ…─!」
「わぁ…!此処がアジトかぁ!」
「クソボロだけどな」
「いや自ら評価下げてどうするんすか」
「変に美化するよりマシだろ」

(ココが『黒の暴牛』──…)

感慨深く騎士団の建物を見つめる二人の目の前で、正面に見えていた門が"内側"から爆発する。

(え゛えええええ!?)
(うおわァアアア!!?)

「ハイ怒ったァーーー!!!覚悟はいいかコラァ!!?」
「いくないけどやろうよ♪」

激しい魔法の攻撃と怒声が響く。

「あぁ〜飲み過ぎた…頭痛ぁ〜…」
「もぐもぐもぐもぐもぐ」
「うるせーバカヤロー共ォォ!/今日も天使のようにカワイイなマイリトルシスター」
「フシュー…」

崩れた外壁から見えるのはマイペースな団員達。

「あ、あの人…こんにちは〜!」

偲は見覚えのあるトサカヤンキーに声を掛けたが、騒音で掻き消されてしまう。

「駄目かぁ」
「まーたやってるよ…」
「ワッハッハッハ!」

笑うヤミ。

「ようこそ。最低最悪の魔法騎士団『黒の暴牛』へ」

アスタは目を見開いて固まっていた。
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