05
「けどオレ、魔力少ないどころか全然無いんスよぉ〜〜」「ア゛ァン?魔力が無いだァァア〜〜?」
「!」
冷や汗を掻くアスタ。だが、
「余計カッケーじゃねぇか!さてはお前…漢だな?」
彼は、アスタを認めた。
それどころかその根性を、努力を褒めたのだ。
「いいねぇ〜!面白そーじゃんキミ〜〜!」
「コレ食べる〜〜?」
「すごいじゃないの坊や!」
「さすがアスタ君!」
「オレの妹には近づくなよ?」
彼を中心に人の輪が出来る。
「それじゃ洗礼の儀2をやろう。僕と殺り合うっていう」
(えええ)
「コレ美味しいから食べてみ?な?」
(あ、どうも)
ウマイ。ともらったケーキに舌鼓を打つアスタは、食べ終えたところでマグナから魔法騎士団のローブを手渡された。
「ほらよ。テメーのだ!アスタ!!」
「ウフフ、ついでに…」
酔っていた美女がアスタの身に付けていたバンダナに刺繍を施す。団の象徴である骸骨の牡牛が縫い込まれ、
「これでオマエも魔法騎士団『黒の暴牛』の一員だ──!!
「あざぁぁあああす!」
認められた彼は喜びの声をあげた。
(あぁよかった…知ってても手に汗握るわ)
「じゃあ次はオマエだ!」
「…?」
「いやオマエだよ!?」
指を差され後ろを振り向いた偲にマグナからツッコミが入る。
やる気満々で彼女を見るマグナに、制止の声は無い。
《魔力が残り少ないぞ…いけるか?》
《やりたくねーーーーっ!!》
「シノブさんやらなくてもいいと思うんスけど?試験で団長と戦ってたし」
「知るかァァア!七つ葉だかで話題になってるが試験合格したって団員として動けるかが問題だろがァアアア!」
「確かに…」
(一理あるよなぁ…)
マグナの主張は正論だ。
「…分かりました」
「お?聞き分けがいいじゃねーか!」
「七つ葉じゃなくて"私"を認めて欲しいですから。頑張ります」
「──っしゃあ!なら気合い入れて来いやァ!」
「はいっ!」
「じゃあさっき話してたし、次は僕がヤるね!」
「ハァッ!?」
ボルテージが上がっていたマグナは出鼻を挫かれた。
「洗礼の儀2は、僕に一撃加えられたら合格ねぇ〜!」
「はい!」
「行くよ〜!」
「って始めんのかーい!!?」
相手の先制攻撃で、洗礼の儀2は幕を開けた。
彼は雷魔法の使い手らしく、魔力で手を鉤爪のついたグローブで覆い、雷球を放ってきた。
「"セウシル"!」
半透明の薄いバリアが偲を包む。
しかし、攻撃を食らったそのバリアは、攻撃を受けた箇所からバラバラと崩壊した。
「ゲッ!?」
「どんどんいくよぉ〜!」
「うおっとぉ!?」
すぐさま回避行動に移る。
土煙に紛れてみるが、魔(マナ)感知能力に優れているらしく居場所がばれてしまう。
奔る雷玉が彼女の前髪を焦がす。
《怖え!参ったなぁ》
《魔法を乱発するのは避けたい。だが、距離が詰められないことには》
《先に体力が底をつくことになりそう…!》
「"ラウザルク"」
「!」
「おりゃあああっ!」
「おぉっと!へぇー、キミも雷魔法を使うの?」
「チッ!速い─」
「負けてらんないなぁ」
「!」
先程よりスピードが上がった攻撃が偲に直撃する。
「シノブさん!!?」
「ゲホッ!」
「わぁ!無傷か〜〜!高密度の魔力の鎧かな?」
「あ…」
「時間制限があるんだ?で、次は何を見せてくれるの?」
《ネタ切れだボケェ!》
《どうする?今ので決められなかったのは痛いぞ》
《…残り一発の魔法に賭ける!!》
「汝、満たされぬ餓えに足掻け…"暴食の魔弾"!」
「わっ!」
偲が放った幾つかの魔力の弾丸は、黒い炎を纏いながら相手に向かって飛んでいく。
攻撃を躱した彼は、魔弾に追尾されていることに気づいた。
「よっ、ほっ!」
次々に躱され、相殺されていく魔弾。
偲はまた立ち込める土煙に紛れた。
「また隠れたの?そんなのすぐに─…?」
彼は目視でも、魔(マナ)感知でも、彼女を見つけられなかった。
最終試験から今までの戦いで極限まで魔力が少なくなった彼女は、今度こそ隠れ遂せたのだ。
そして、
「こっちだ!」
「!?」
彼の背後に回ると、歯を食いしばり思いきり素手で殴る。
「これでどう、だ…」
しかし、仰け反り後退する相手の前に、偲は魔力不足で限界を迎え倒れてしまった。