(2)

子供達とのやり取りを見ていたシスターが声を掛けてきた。

「アルルから話は聞いてます。道端でほとんど荷物も持たずに寝てたそうですね」
「あ、はい」
「これ、頭のところに落ちてたよ!お姉ちゃんの?」
「…あ!たぶん!」

持ってきたのはスマートフォンと携帯音楽プレイヤー。
ケースとストラップにイニシャルが付いているため、自分の物だと言っても不審ではない…はず。だといいな。

「話を戻しますが、行く宛てが無いなら教会で暮らしませんか?古い建物ですが、雨露は凌げます」
「……」

(申し出は嬉しい。お金はケツポケットに財布あるけどジャンプ買う用の小銭しか持ってないし、たぶん使えないだろう。でも…)

子供たちが暮らしている教会は、決して裕福では無いだろう。
1日1日やりくりして生活しているはずだ。

「いや、気にかけてくれて嬉しいですけど…」
「えぇ〜!!」
「お姉ちゃん来ないの!?」
「遊ぼうよー!アルルね、おままごとしたい〜!」

そう思い、断ろうとした途端にブーイングの嵐が彼女を襲う。

「チビ達もこう言ってるし、行き先決まるまで居たらどうですか?」
「アスタ君。でも」

「その代わり、教会のこと手伝ってください!そうしたら俺の修行の時間が増える!」
「魔法も使えないのに魔法帝になれるわけ無いだろ。シノブお姉さんまで巻き込むなよ」
「何を〜っ!」
「ま、まぁまぁ…」

言い争いになってしまい、ぎゃあぎゃあと騒いでいると強い風がアスタの顔を横切り、彼が転ぶ。

「わっ!?」
「てめぇユノ!何すんだ!」
「顔がうるさい。その人が困ってるだろう。アスタにしては良い意見だけど」
「んだとぉーっ!?」

涼しい顔をした黒髪の少年が、アスタに魔法で起こした風を吹きかけたらしい。
彼も見覚えがある。

(うわぁ…本当に来ちゃったんだなぁ)

「大丈夫ですか?」
「あ、はい。ありがとうございます。えっと、ユノ君?」
「あぁ…」

言葉少なだが気遣いを感じた彼女は、微笑み礼を言った。
この教会には優しい人達ばかりだ。

「アスタ君もユノ君も誘ってくれてありがとう。じゃあ迷惑かけると思うけど、お言葉に甘えていいかな?」
「おう!」
「あと、魔法帝?なれるように頑張ってね。応援する」

(ガッ●ュみたいにね!)

王様は優しい人がいいから。
そう告げると、周りは何故か静かになってしまった。

「お、お姉さん?」
「うん?どうした?」
「…何でもない!教会の中案内するよ!」
「俺も行く」
「わたしも〜!」
「じゃあ皆で行く?」
「さんせーい!!」

あっという間に駆け出す子供達。
アスタに腰を押され早足で駆けていく偲を、シスターとユノが見つめていた。

「あの人は?」
「恵外界の村で倒れていたところをアルルが見つけました。記憶が無く、行く宛が無いそうなので此方に。何故か背中に傷を負っていますが…」
「何で治していないんですか?」
「…あ!?」

話に夢中ですっかり忘れていた、とシスターが慌てる。
細い背中を斜めに切り裂いた跡が、彼女の衣服に克明に残されていた。
しかし、当の本人はケロリとしている。
ユノは、慌てて駆けるシスターをゆっくり追いながら考えた。

(負傷しているのに痛がる素振りもなかった…)


prev back next