温もりの腕
…暗い。あ、これさっきの夢?
いやあこの年代の世界にトリップする夢みるとかどんだけチャレンジ精神に溢れてんだ私。この調子でバイトか就職先探してみようか?目が覚めたらまた就職戦争だよぉ怖いよー笑顔で面接落とされるよ〜…。
あれ?でもこの夢、箱の中じゃないな。
なんか、嗅いだことのある……。
「ん…っ」
目は覚めた。
「…ふわぁ…んんっ、嬢ちゃん……」
「……」
だが、夢が覚めない。
だってこんなところにワンコみたいな金髪天使いるわけ、が……。
「す、すぴードッ!ワゴンさん!?」
「…ん?」
「なん、なんで」
なんで私を抱き枕にしてんだぁぁぁあ!!
ちょっ、「…ん?」とかやめて!心臓が!毛根が!
「いや、昨日俺らが飯食ってる間、ユウキの嬢ちゃんが看病してくれてたんだろ?ありがとうな。ふぁあ…だが様子見にきたら寝ちまっててな?」
「う、うん」
「ああ、無理させてすまねぇって思って…」
「うん」
「風邪移るといけねえんで、俺の部屋に運んでってベッドに寝かせたんだが……」
「…」
ちょ、何この間。
「嬢ちゃんが、あったかくてな?」
「え」
あぁ、湯たんぽか。
焦ったあ。今ミリオ●アかってくらい間を延ばしたんじゃね?
一瞬でも彼をロリペドさんかと思った私、爆散しろ。
脳内で懺悔の舞を踊っていると。
「まだ寝てようぜ…」
「うわっ」
ぎゅうぎゅう抱き寄せられ、すっぽりと肉布団に包まれる。
なんとか両手は出せたが身動きが取れない。
「……っ、」
「なんでユウキの嬢ちゃんは、こんなにあったかいんだ…?」
「こ、子供だから?」
「そぉ、か」
そのまま二度寝を始めてしまったスピードワゴン。優祈は動けず、ただずっと目の前の男が起きてくれるを待っている羽目になったのだった。
「…大丈夫、大丈夫。何とかなるって大丈夫。私は今子供です。チャイルド、心の底からチャイルド。あっ無理かも!煩悩退散!!」
全て小声で呟く優祈。
ニワトリが鳴き声を発してどれくらいの時間が経っただろう。一向に起きる気配がないスピードワゴン。
彼に包まれてるのを見られると、彼が恥ずかしい思いをするのに。
「だめだ、良いツラして安眠してやがる…」
しょうがない。
我ながらキッモーイと思うが、コレしかない。
本当に起きて。めっちゃトイレ行きたいんだ。
「…おにーいちゃーん」
「……」
「スピードワゴンのおにいちゃん」
「…むにゃ……」
「スピードワゴン!」
「ぅ…ん?」
「…起きてロバート」
「うああああああァッ!?」
その瞬間スピードワゴンは凄まじい声をあげ目を覚ましたッ!!
「うわぁっ!」
腕の中にいたため持ち上げられ、一緒に運ばれる優祈。
「くっ、苦しい‥!」
「あ!?あっ!」
気づいて謝り腕の中から出してくれる。
(あぁ、トイレトイレ)
急いで部屋から出てトイレに向かった彼女は、背後でスピードワゴンがひどくうろたえていたことに気がつかなかった。
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