(3)
何度もYシャツの袖とパンツスーツの裾を折り、髪をゴムで結ぶと不毛の大地と化している部屋と格闘し始めた。
まずは自分の荷物からゴム手袋を出し、装着。
(この汚れを素手で触るのは、今の私では覚悟が足りない)
古びた窓を開け、食器を一カ所にまとめ、テーブルの姿を露わにする。
床の物も一度全て外に出し、スピードワゴンと、スピードワゴンが連れてきた顔に刺青のある人などに盗られないよう見張ってもらった。
「ねぇおにいさん」
「ア”ァ!?」
「抱っこして?」
「え…」
小さくなった身体を持ち上げてもらい、棚の埃をハタキで落とす。
部屋に入る人達には顔と手を洗って、マスクや手ぬぐいをつけて作業してもらっている。
強面だが、彼等にちゃんと説明したら自発的につけてくれた。優しい。
(彼等にも病気になってもらいたくないし。頑張ろう!)
「塵、埃、虫、生ゴミなし!次は拭き掃除!」
拭き掃除が終わったら外の荷物入れなくちゃ。
やる事はまだまだある。どこから手を付けようと考えていたら、
「ユウキ嬢ちゃん!寒いんだがまだか!?」
「ちょっと待って、ください!」
今度は彼等が風邪をひいてしまう。
急いで自分の荷物を漁り荷物の包み紙を引っ剥がすと、食用油と外に持って行く。
軽く土を掘りその場をレンガや石で囲むと、木の葉や枝と一緒にライターで火をつけた。
「いいのか!?こんな綺麗な紙なんて見たことねえぞ!」
外からスピードワゴンが叫ぶ。
「はい。ごめんなさい、大丈夫?後で来て、部屋掃除フォローください。お願いします」
頭を下げ作業に戻る。
(さぁさぁ急がないと)
「恩人一人にやらせちゃあ、申し訳無さすぎだぜッ!」
「あんな小せぇ女の子が、弱音吐かずに見ず知らずのゴロツキの世話焼いてくれてんだ。…なんかすっか」
気まずそうに次々部屋の中を窺う男達。
そんなことはつゆ知らず、私は床を雑巾がけしていた。
何度も根気よく拭いたおかげか、こびりついた汚れも粗方取れた。
荷物を運んで貰おうと振り向くと、男達が大勢でかい図体を小さくさせこちらを見ていた。
思わず後退る。
「ご、ごめんなさい。寒いのに…」
「いやいやいや!これから荷物運べば身体も温まるぜ!なぁ!?」
「あぁ!そうだな!」
「嬢ちゃん。いいか?荷物運んでも」
「は、はい、お願いします」
「あぁ。こちらこそよろしく」
「!」
(な、なんか認められたみたいで嬉しい)
ニコニコ顔で優祈が掃除に戻る。
その後ろでは何故か男達がギクシャクしていた。
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