(4)
なんとか生活スペースの掃除、洗濯、食器洗いと片づけが終わった。
「風邪?の人の部屋も掃除しないと」
(いつまたトリップして消えるか分からない。出来るだけ些細なことでもやらないと…。)
スピードワゴンと刺青さん(仮名)に案内された部屋は、なるほど。確かにさっきの部屋より綺麗だ。が、しかし。
「ひえ〜」
やっぱり汚い。
どこから手を着けようか悩んでいると咳き込む声が聞こえた。
「大丈夫ですか?」
「ゲホゲホッ‥誰だ」
簡素なベッドに横たわり、熱と外からの寒さに身を震わせている病人。こちらを見ている彼は満足な防寒具も身につけておらず、薄っぺらい毛布にくるまっていただけだった。
これでは治るものも治らない。
「スピードワゴンおにいちゃんの知り合いです」
「?」
彼が首を傾げている間にやることを決める。
先程の部屋より念入りに清掃し、簡素なベッドのシーツを清潔な物に代える。
「全部脱いでください」
「「「!?」」」
服を脱いでもらい、病人の身体を念入りにタオルで拭く。
掃除の始まりと並行して洗濯し、乾かし終えた服に着替えさせた。
防寒具が無いので、縮む前に自分が着ていたダウンコートとストールを寝かせている彼の毛布と共に掛けた。
部屋も、このアジトに棲む食屍鬼街の方々が修繕してくれたので、最初より暖かい。
(最後にマスクを着けて…終わり!)
これでひと段落だ。
「何かして欲しいことはありますか?」
彼の汗を拭いながら言うと。
「腹が減った…」
と病人のおじさんは遠慮がちに言った。
それと同時に鳴るお腹の音。
(あれ?複数…?)
振り向くと、やべえって顔をしたスピードワゴン達。
寒い中こんな得体の知れない奴の指示に従ってくれた彼等。
きっと他の部屋にいる人も腹を空かせているだろう。
「待っててね。今から作るから」
「…!」
(確か食材買い溜めしたから、材料はある。時間はかかるが、みんなの分のご飯を作ろう!)
「刺青、さん?手伝って?ください」
「おう」
二人でキッチンに向かった。
「これで、あいつは治るのか?」
「‥分かりません。清潔キープ。と暖かいして、汗、いいよ。服チェンジも。あと、みんな手洗いうがい」
「日々の心掛けってやつか?」
「はい。重要です」
「ほ〜…」
高い所にある鍋やお玉、まな板包丁を刺青さんに煮沸消毒してもらい、私は荷物から野菜や肉を出す。
「何食べたい?」
「お、俺か?」
「はい。参考に」
チラチラこちらの様子を窺っていた仲間の人に聞いてみた。
「な、なんでもいい」
「…なんでも」
「おい、嬢ちゃんが困っちまったじゃねえか」
「す、すいやせん」
なら。
「とびきりおいしいの作ってやる!」
「「……」」
近くにあった椅子を踏み台にし、危なっかしい手つきで調理を始める。
火は起こしてもらい、その間に米を研いで炊く。
周りに手伝ってもらいズダンッズダンッと危険な手つきで野菜や肉を切り、油を引き炒めて煮て完成したのが。
「卵粥とシチュー、両方持って行けばいいのか?」
「はい!あ、ちょっと待って」
スポーツ飲料水を渡す。
「これ、飲めんのか」
すごい顔された。
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