(3)
朝、リサリサは気づいていた。
弟子二人の動きが、昨日までと違いどこかぎこちなく、修行後もろくな会話をしていないことに。
そして弟子二人がお互いを片思いしていることにも気づいていた彼女。
こっそり応援していた。
柱の男との闘いやジョセフと名前に秘密のお互いの親子関係。
冷たく厳しい女性という印象を彼女に抱く人は多く、それはあながち間違いではない。
闘いを前に浮ついた考えを持つなと言ったとしても正論だ。
しかし、彼女も人。
これまで以上に修行に力も入り、成果を出していた二人。
自分の愛娘と、自分のことを先生と慕い、娘を気にかけ大事にしてくれる青年。
両者の幸せを願うのも師匠としても親としては必然と言える。
※親だという秘密をバラしていないが。
「げほっ…」
「一度休憩にします。名前」
「う…はい」
リサリサの鮮やかな蹴りが名前の鳩尾に入ったところで休憩にする。
「座りなさい」
「へ?ぁ、はい」
隣にスペースを空けられ座るように促される名前は、困惑しつつ座ると手渡された水筒の中身を飲む。
「…」
「…」
「名前」
「は、はい」
「シーザーと上手く行っていないのかしら?」
「!?!…ブフウッげほっげほっ!!」
てっきり修行内容の説教かと思っていた名前は、師匠からのまさかのガールズトークに度肝を抜かれたッ!
思わず飲んでいた水を吹き出す。
「汚いわね。でも良い波紋を練れていたわ」
「ありがとうございます…って違う!」
ノリツッコミまでしてしまう始末。
「ななななんででしょう?」
「見ていれば分かります。…それにジョセフに相談しているのを偶然聞いてしまって。ごめんなさいね」
後半は嘘である。
「い、いいえ。…すみません。浮ついた考えで。今は大変な時なのに……」
「…確かに浮ついた考えかもしれないわ」
「…」
俯く名前。
「でも、その恋が貴女をここまで成長させたのも事実。…ジョジョもそう思ったから、妹の成長と幸せを願って相談に乗っていたのでしょう。だから私も黙認していました」
「…お兄ちゃん」
幼い頃の喋り方に戻る。
ジョセフは幼い頃から、意地悪でおちゃらけているが、いつも名前に優しかった。
困った時に相談に乗ってくれたし、彼女をからかういじめっ子から助けてくれた。
「もしかしたら死ぬかもしれないのに、妹の心配なんか…バカ」
「誰がバカだってぇ〜」
「げ!お兄ちゃん!」
後ろから抱き締めのしかかってくる兄は、昔の呼び名にキョトンとしたが嬉しそうに頬擦りしてきた。
「あいっかわらず可愛いなぁ〜お前は!!」
「はぁ!?どこが!痛いいたい!」
「チューしちゃう!チュッとな!」
「ぎゃああ!」
抵抗もむなしく右頬に熱いキスをされる。
「仲が良いのね」
「だって俺名前が大好きだもんねー!名前は?」
「わ、私も大…好きだよ」
「イエーイ!ハッピーうれピー!」
ギャイギャイ騒いでいると。
「おいジョジョ。名前から離れろ暑苦しい」
「シーザーちゃ〜ん?別にいいだろぉ休憩中だっしぃー。可愛い妹と愛を深めても〜」
「…」
「それとも、なんかご不満?」
どこか挑むように話すジョセフ。
顔は見えないがおそらくニヤリと笑っているだろう。
どこか不穏な空気に名前は焦った。
「おにいちゃん」
「ん?」
「いや、ん?じゃなくて」
「名前」
「シーザー…」
「…」
見上げるとシーザーの瞳は揺れていた。
不安げに、苦しげに、熱を持って。
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