ジーンさん3



「調べたら……おったで。新堂くんの事が好きで原因不明の怪我した子」


小春ちゃんの言葉に、私と謙也は心の底から深い溜め息と共に地面へと崩れ落ちた。ちなみに新堂くんと言うのは光くんのクラスメイトくんの名前である。


「誰や…なぁほんま誰が俺のこと好きなん?」
「やだなぁなんで私こんな女の子にモテない奴に絡まれてんだろぉ」
「ちょい待ちや壱加、モテない奴はいつもの事やからこの際スルーするけど絡まれてるってなんやねん。友達やん、仲良いんだろぉとか言えへんのか」
「友達になった覚えねぇよ毎回毎回面倒事に巻き込みやがって疫病神かテメェは」
「あかん、壱加ちゃんが荒んどる…」
「小春、あれいつもや」


けらけら笑って小春ちゃんにそう言う白石の顔面に一発食らわせてから私はもう一度深い溜め息を吐いた。隣で謙也が言葉無く泣いてる気がするがもう知らん。
光くんの推理はどうやら的中しているようだ。このままいくと私は、他に浮ついた話が無い謙也の唯一の仲良い女子としてジーンさんから嫌がらせを受ける事になるだろう。人間にもされたことないのになんで幽霊にされなきゃならんのだ。頼む謙也を好きな女の子、私は謙也に興味なんて無いから敵対心とか向けないでね。
渡邊先生から頂いたコケシ様を掲げて空に祈る私の後ろ姿を見て、小春ちゃんと一氏くんがヒソヒソ話しているが気にしない。コケシ様効くんだもの。


「嫌がらせはいつからされるん?」
「されるん決定なん!?」
「それが分からんねん」
「ユウくんと聞いて回ったんやけどなぁ、新堂くんは財前くんの言うてた彼女出来てからなんやけど、女の子達は疎らでなぁ」


せやから壱加ちゃん気ぃ付けてな、と小春ちゃんが首を傾ける。仕草は可愛らしいが私が狙われるの確定してるのなんでだろう。小春ちゃんも口では謙也を庇ってるけど、内心他に仲良い女子いないんだろうなとか思ってんのかな。
まぁ、私が狙われる前に謙也が恋する乙女を見つけて付き合ってくれればいいんだけど、学園中の女子に「今朝、部屋に青汁がありませんでしたか」とか聞いて回る変人には絶対なりたくない。やるなら謙也だけやればいい。


「ジーンさんに会う方法はあるで」


一氏くんがぽつりと呟くと、謙也が無言で一氏くんに詰め寄った。流石スピスタ、速い。


「どないすんねんユウジ」
「九十九と謙也が敢えて仲良ぅしてたらえぇねん。そしたら裏切り者言うて出てくんのやろ?」
「一氏くんそれ最終手段だから」


手っ取り早いで、と軽く言う一氏くんを小春ちゃんがど突いたのを横目に渇いた笑いを漏らす。
式神使ってとかそう言うのかと思ってたよ私は。でもいつだかコッソリと、みんなに言うなや、と言っていたから、きっとこの前の理科準備室の時のように本当に危なくならないと助けてはくれない気がする。そうだよね。最近色んな人に知れ渡ってるから忘れてたけど、私だって霊が視えるとか、ましてはお祓い出来るとか知られたくないし隠したりするよね。私は気が付いたら知れ渡ってるけど。


「せやかて、他に方法ないやろ」
「ほっといたら謙也にまた電話かかってくるんちゃう?」
「電話きたからって、私が狙われなくなる訳じゃないよね」
「「せやな」」


一氏くんも白石もそんな簡単に肯定しないでよ。泣きそうなのをぐっと堪えると小春ちゃんが頭を撫でてくれた。大好き小春ちゃん。


「ちゅーか自分ら、部活始めへん?」


呆れ顔で小石川くんに声を掛けられ、全員で小石川くんを見つめる。
しばし、間。


「ほなやるかー」
「壱加ちゃんゆっくりしてってやー」
「今日もNo,スピードNo,ライフや!」
「頑張れー」


実は放課後。しかも部活中だった訳で。
それぞれが部活に戻る姿を見て、小石川くんが大きな溜め息を吐いたのを横目に、申し訳ないと思いながら千歳くんの姿を探す。ごめんね小石川くん。私は王子の勇姿を見たいの。


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