ジーンさん5



「これより、緊急会議を始めます」
「なんでこのメンバーやねん」


私の深刻な第一声は、一氏くんのあっけらかんとしたツッコミによって緊迫感が無くなってしまった。ひどいよ一氏くん私真剣だったのに。
恨めしげに一氏くんを見つめれば、やはり軽いノリで、あ、すまんと手を上げた。するとその横にいた光くんが口を開く。


「それは同感っすわ。なんでこのメンバーなんすか」


ちらりと光くんが視線を送った方を私も見る。
昼休み、此処科学準備室にいるのは私と光くん、一氏くんに小春ちゃんに小石川くんである。
何で、と言われても。このメンバーってそんなにおかしな組み合わせだろうか?首を傾げれば小春ちゃんが困ったように眉を下げた。


「何で、ちゅーのはな壱加ちゃん、蔵りんと謙也くんがおらへんことに対してやねん」
「白石と謙也?」
「せや。わざわざ呼んだっちゅーのはジーンさんの事やろ?」
「うん」
「せやったら原因の謙也さんおらへんの変ちゃいます?謙也さんに話せん事でも部長おらへんのは不思議やなって思うんすけど」


光くんの言葉に恐らく一番事情が分かってない小石川くんまでも頷く。なるほど、だから最後にやってきた光くんが微妙な顔をしていたのか。しかし私にだってそれなりに色々考えて4人を呼び出したのだ。あのね、と口を開けば全員の視線が私へと集まる。


「光くんの言うとおり、謙也抜きで話したくて。ただ、私だけいないならジーンさんに巻き込まれたくないから謙也近付くなの一言ですんだんだけど」
「過去形ちゅー事はすでに謙也に言ったんやな」
「頻繁にテニス部でお昼食べてるみたいだし、みんな呼んだら絶対謙也うっさいじゃん」
「九十九さん結構酷いんやな」
「小石川くん勘違いしないで!私、謙也と白石にだけ優しく出来ないだけなの!」
「なんか…、ほんま堪忍な?」
「ありがとう小石川くん大好き!」


勢いで小石川くんに抱きついたら風の如く早さで一氏くんに引き剥がされた。抗議の目を向ければめっちゃ笑顔で、ほんで?と言われた。こめかみがピクピクとしていて、漫画だったら絶対怒りマークついてる。怖い。ふざけてごめんなさい。文句など言えず、素直に椅子に座り直す。


「その、だから、白石には謙也の相手をしてもらって、ます」
「俺達おらんで平気なんか?」
「銀さんにも相談してみよかって連れてってたから大丈夫じゃないかな?」


そう言って隣りに立つ一氏くんを見上げれば、彼は納得の声を上げた。こういう時に白石の頭の回転の早さには感服である。故に私は酷い目にも合ってるのだが。
つい白石への恨み言が出そうになるが、みんなが私の言葉を待っている視線で一度口を閉じて、一つ息を吐いてから話し始める。
クラスメイトの市川さんが謙也に優しいこと。2人が話してるときにジーンさんらしき人形が姿を現したこと。今日の数学の時間に合ったことから、私と白石の中で二つの可能性が浮かんだこと。そして、それらにまだ謙也が気付いていないことを。
あらかた話して一息吐くと、最後まで静かに聞いていた小石川くんが口を開く。


「ジーンさんって女子の中で有名なやつやろ?謙也と、その…市川さんはなんか危ないんか」
「あぁ、小石川は知らへんのか。ジーンさんが応援してる女以外の奴と付き合ったら怪我させられるんや」
「しかも恨み言付きでやで〜」
「……なんや、思い通りにいかんと癇癪起こす子供と変わらんなぁ…」
「あー…、過激なファンクラブとか?」


ぽつりと私が呟やけば、小春ちゃんと小石川くんが苦笑する。思い当たる人でもいるのだろうか。冗談だったのに。四天の人だったら嫌だなぁと思っていると、壱加さん、と光くんに呼ばれ視線を光くんに移す。


「副部長とか何が起こっとるのか詳しく知らへんのに呼んだんは理由あるんですか」
「それは、知能班だからかなぁ」
「「は?」」
「小春ちゃんはもちろん、噂を知ってた小石川くんは情報収集得意そうだったから。光くんと一氏くんは情報収集もだけど、なんかあったときの戦闘要員になれるオールマイティーさで呼んだの」
「なるほど」
「金ちゃんと千歳くんは…考えるより行動!みたいなイメージだからさ」
「まぁ…間違ってないなぁ」
「ほんで壱加ちゃんはうちらに何してほしいん?」
「小春ちゃんと一氏くんは市川さんについて、あと他に謙也を好きそうな人いないか調べてほしいの。私より人脈あるし。市川さんの好きな人が分かればいんだけど、とにかく、出来るだけ情報がほしい」
「了解や、うちらに任しとき!なぁユウくん?」
「大船に乗ったつもりで待っとき!」
「ありがとう。それから小石川くんはジーンさんの被害にあった人について調べてほしいの」
「被害…って具体的にはどういう事なんや?」
「ジーンさんから電話がきたことがある人とか、好きな人の好物が届いてた人を調べてほしいんだ。その中で怪我や嫌がらせみたいな事故にあった人いるかもしれないし、もしいたらまだ被害にあってるか知りたい。もし被害が無くなったならきっと理由があるはずだから」
「分かったわ」
「光くんは、私とジーンさんについて調べてくれる?」
「俺、学年ちゃいますけど」
「私と一緒に行動してて謙也が不思議に思わなそうだから。これで一氏くんや小石川くんと2人で行動してたら、なんで急に仲えぇねんってしつこく聞いてきそうだし、それでジーンさんに狙われたくないし」
「そういう事やったら納得っすわ」
「それじゃ、長くなっちゃったけどお願いします」


深々とお辞儀すればそれぞれから了承の返事が聞こえる。やっぱり私の人選に間違いはなかった。話が早いし何より頼りになる。
そして、ようやく私達はお昼ご飯に手をつけ始めた。小石川くんに後で詳しい事情を話しておこう、と玉子焼きを頬張った。

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