ジーンさん7



「なんや、可笑しな書き込みばっかやなぁ」


次の日、昨日の放課後に光くんと調べた掲示板のコピーをぼんやりと眺めて登校していると後ろから声を掛けられる。振り返れば、考える仕草をしている白石としみじみと覗き込んでいる千歳くんが立っていた。どうして王子に会えたと思うと隣に白石がいるの。ねぇ嫌がらせ?


「どげん事ね白石」
「小春が言うとった事しか書かれてへんねん」
「うん、光くんもそう言ってた」


そう私が頷けば白石がそうかと私から掲示板のコピーを奪い取った。この野郎、何ちゃっかり取ってんだよ。ガン飛ばすが特に気にも留めず白石は読み進めていく。隣の千歳くんが首を傾げるのが見えて、どうしたのと声を掛ければ少し空を仰いだと思えば、ぽんと手を叩いた。


「ジーンさんっち、クラスの女子が話しとったけん」
「え、王子が聞いたのどんなの?」
「ジーンさんが好きな人の好きなものを机に入れとっとくれるけん、恋の応援ばしとっと?」
「うーん、やっぱそういうのだよねぇ…」


はぁと息を吐くと千歳くんが首を傾げた。あぁ、その仕草可愛い。もう一度、どげん事ねと問い掛けてきたので少し考えてから口を開く。


「んーと、謙也のせいでジーンさんについて調べてる、かな」


そう答えれば、大変とねぇと苦笑しながら頭を撫でてくれた。もう王子ほんと好き何もうイケメン。
実は、千歳くんはやっぱり巻き込みたくない、なんてそんな乙女心で昨日の昼に呼ばなかったとかそんな事は内緒である。


「これ、もろていい?」
「うっさい白石、今私はねぇ…って貰うって、それ?」


王子から目を逸らして、白石を見ながら奪われた掲示板のコピーを指差すと、せや、と頷く。元々渡すつもりだったので、了承の返事をすればおおきに、と微笑んだ。ちくしょう、騙されないんだからな顔だけイケメン。
ジトリと睨みつけながら歩いていき、千歳くんと別れると2人で教室に向かう。


「千歳には話さんかったん?」
「王子にはいつも助けられてるから巻き込みたくないの」
「ハート飛ばして…ほんま好きやなぁ」
「好き大好き超好き」


真顔で答えれば、はいはいと適当に流された。ちくしょう白石のくせに。まだ謙也のがもうちょっと聞いてくれ、


「あれ?そういや謙也はどうしたの?お前といたらアイツくんじゃん」
「あぁ、それなら問題ないで」
「は?」


首を傾げると同時に教室のドアが勢い良く開かれた。驚いて見れば、ドアを開けた状態で謙也が立っていた。おい、もうスピスタ現れたぞ。思わず怪訝な顔を白石に向けようとしたとこで、謙也が一歩踏み出した。


「銀さんとこ、行ってくるわ」


真顔でそう言ったかと思うと、次の瞬間には数メートル先を駆けていた。速いなほんと。


「女の九十九とおると狙われるんやから、男の銀さんとおったらえぇやん、って言っといたんや」
「成る程よくやった白石」


走り去った謙也を見送りながら教室へと入る。白石にしては良い仕事するじゃない。銀さんとこ行ってたら市川さんとの接触も減るし。グッジョブ!と肩パンしたら痛いわーと棒読みで返ってきた。むしろ私が痛い。右手をさすりながら席に着くと、自分の席に荷物を置いた白石が此方に来て謙也の席に着いた。


「…何の用?」
「誰に何頼んだか教えてくれへん?」


あぁ、とカバンからメモ帳を取り出して昨日の割り振りを淡々と説明すると、顎に手を当てて考え込んだ。メモ取らないのがムカつく。もっかい聞いてきたら殴ってやる。あ、嘘手痛いから蹴る。


「女子だけに広まってる噂やったら、九十九・財前は時間かかるやろ。コピー見た感じ、既に行き詰まってるみたいやし」
「そうなんだよねぇ…私噂とか興味ないし。小春ちゃんと一氏くんは心配してないんだけど」
「小石川も時間かかるやろな。怪我してもジーンさんを見たり聞いたりせんかったら怪我した方も気にせんやろ」


そうか、難しい事を頼んじゃったな。大きく溜め息を付けば、小石川なら何とかするやろ、と白石が笑った。
テニス部と知り合ってから思ったんだけど、皆の信頼関係凄いよなぁ。というか単純に仲良しなのか?ジッと白石を見ていたら不意に目が合う。あ、その顔ダメ女子惚れるやつ。そんな事を思ったら、奴は不敵にニィっと笑った。あ、やな予感。


「そんな見つめられると照れるわぁ」
「み、見てないっ!」
「穴開いてまうかと思たわー」
「見てないってば!!」


殴ろうとして振り下ろした拳は軽くかわさた。くそっ!一年の時からこうやって私をからかうんだコイツは!私がイケメン好きで自分がイケメンって理解してるから!悔しい!!うぅぅと唸っていると笑って頭をポンポンとしてきた。


「俺も九十九達に合流するわ」
「へ?」
「ジーンさん見とるし、財前よりは同クラの俺とのが動きやすいやろ」


な?と首を傾げられ、私は何度もただただ頷くしかなかった。くそ、顔だけイケメンめ…!!

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