「九十九」
「?あ、一氏くん、どうしたの?」
ジーンさんについて俺らが調べ始めた日から、ユウジが合間を見ては九十九に会いに来るようになった。
「なんか変な事ないか?怪我とか」
「今のとこ大丈夫!ありがと」
「や、別にたまたま通りかかっただけやし」
たまたま通りかかったが一週間続いたら、たまたまって言わへんでユウジ。明らか九十九の心配しとるやん。そんで気ぃ付かん九十九も九十九や!
なんちゅー俺の心の声を微塵も顔に出さずに、斜め後ろで会話を続ける2人に聞き耳を立てる。視線なんか送ったらユウジに気付かれてまうからな、当たり前やろ。
「今日は彼女等に話聞きいくんか?」
「うん、捕まえられたらね!」
「捕まえるてそれ犬猫や」
「ハハッ!犬猫より簡単だといいけど!」
相手は人間やからいけるんちゃう。口には出さへんけどツッコミを入れたくなるのはご愛嬌、ちゅー事で。次の授業の支度をしつつ意識だけ後ろの2人に向けとると、九十九の溜め息が聞こえる。
「なんで毎回謙也と白石に振り回されてんだろ…」
「そら、九十九がえぇ奴だからやろ」
「良い奴じゃないよ私!むしろ皆も巻き込んでるし、ほんとごめん」
「まぁ、無理せんとき。何か合ったら直ぐ俺に言えや」
「うん、分かった!」
めっちゃユウジが女に優しいんやけど…!いや、元々財前みたいに冷たい態度とかせぇへんけど、それにしたって優しすぎやろ。振り回してるのに俺の名前があるんはこの際シカトや。
ここ一週間ほど様子見とって思ったんやけど、もしかしてユウジ、九十九にホの字……いやいや、ユウジは小春がガチで好きなはず、モーホーのはずや。まさか、どっちもイケる奴やったんか…?
「せや、コレやるわ」
コレ。
コレって何や。気になる。
ちらりと視線を向けると、ユウジが手を差し出して九十九の手に何かを乗せとった。
「……お守り?」
首を傾げる九十九に、おん、と頷く。
「自分持っとる札、爺さんからの貰いモンなんやろ?使っとったら減ってまうしな」
「え、これ可愛いーどこのやつー?」
「俺の手作り。九十九の持っとる札より効力無いけど、そこらのよりは効き目あるで」
「嘘!?手作りなの!?凄い器用!!」
「裁縫とか得意やねん」
「うわーうわー!ありがとう大事にする!!」
「……おん」
目を逸らして頬を掻くユウジを見て確信した。
ユウジは九十九に惚れとる!!
そういや小春が話とったけど、俺抜きで空き教室に集まった時に、小石川に抱き付いた九十九を謙也ばりのスピードで引き剥がしてたちゅーんは、もしかして嫉妬なんちゃう。めっちゃ笑顔やった言うてたから「俺の目の前で何他の男に抱き付いとんねん」っちゅー副音声付けたら完璧やん。
ユウくん最近短気なんよ〜、なんて小春は言うとったけど、昨日も謙也達を見てた九十九を小突いたりとか妙に気にしとったし、それが全て九十九にホの字という答えを導き出した今なら『恋』の一言で片付くやん。小春もなるほど納得やで。
しっかし、効果がないって分かっとんのに九十九もあんな喜んで…そら惚れとる方は嬉しいわなぁ。
(※白石は一氏が式神使えるのを知りません)
「色々ほんとありがと!」
「いや、まぁ…自分が怪我したら嫌やねん」
「え?」
「あ、あーっほら!小春が心配するやろ!せやから一応、一応な!」
へたれか!!
ちなみにお守りは小春とお揃いや、と慌てているユウジに俺は溜め息を吐いた。小春が好きな九十九は特に疑問も持たず、お揃いのお守りを喜んどるし、ほんまこの恋、実るんやろか。
←