何故こんなにも腹立っているのかというと、朝いつもの時間に家を出ると、玄関前にめっちゃ爽やかな塊みたいな笑顔で「お早う!」とか言うコイツがいて、たまたま見送りにいた母さんにまで「いつもお世話になっとります、白石言います」とか挨拶始めて、挨拶もそぞろに母さんに玄関の中に連れ戻され何かと思えば「彼ならオッケー!」と親指立てられ。笑顔で送り出された後、角を曲がった瞬間に「メモとったやろ?」と先程の爽やかなど嘘のようにいつも通りの態度で手を出されたのだ。三段階で腹立つ。
「部活の朝練行けし…」
「今日、朝練休みやねん」
「じゃあ学校でいいじゃん…私ギリギリに行かないし」
「九十九のご両親に会っときたかったんや」
「白石…」
少女漫画や夢小説女子ならここでキュンとかなるんだろうが、私はならない。だってコイツが私の両親に会いたい理由なんて想像付く。
「言っておくけど、私も両親も除霊出来ないからな?」
「………なんの事やろなー」
図星かよ。
あからさまに目を逸らす白石に舌打ちしてから鞄を持ち直した。一通り見終わったのかメモを閉じたので、手を出してメモを受け取る。学校の見慣れた古風な門をくぐりながら首を傾げる。
「どう?」
「髪型も使うてる小物も話し方も似とるなー、ってとこやろか」
「やっぱり?なんかさー、今時女子の平均集めたってくらい同じような雰囲気だよねー」
「あーわかるわー」
「名前と顔、メモあるけど一致してないもん私」
「俺ももっかい会わんと自信ないなぁ」
「こう言うの、この間テレビでなんちゃら女子って言うんだよってやってた、ほらあの、なんだっけ?」
「「………量産型女子?」」
「息ピッタリやなぁ」
白石と同時に首を傾げながら言えば、小石川くんにしみじみと言われる。と言うか小石川くんいつの間に傍にいたの、気配無かったよ。しかし白石は馴れているのか「以心伝心やで」なんて返しているので、取り敢えず殴ってから小石川くんに挨拶をする。
「ほんま仲良ぇなぁ」
「どこが?小石川くんは何を見てそんな事言うの?」
「当たり前や小石川、俺と九十九で今年のベストカップル賞狙うんやからな」
「冗談でも止めろ白石」
眉間にシワを寄せてそう言ってから靴を履き替えて教室に向かうと、後ろからつれないわーなんて聞こえてきた。うるさい、お前が彼氏とか死んだってお断りだ。ふと顔を上げれば、視線の先に楽しそうに話している謙也と市川さん、それに銀さんの姿が見えて少し歩くスピードを落とす。いつの間に随分仲良くなってまぁ。控え目に笑う市川さんは女子の私から見ても可愛らしいと思う。と言うか銀さんとも知り合いなのか。そう思って見ていると、ぞくりと悪寒が走る。この感じ、知っている。唾を飲み込んだ私の後ろで、白石が口を開いた。
「ジーンさん…」
歩む足を止め、目だけで姿を探す。そして、謙也達の更に後方に、美しい人形の姿を、見つけた。ただジッと、三人を見つめている彼女が、ゆっくりと此方を見た。その動作はまるで人のように滑らかで、ブワッと一気に鳥肌が立つ。そしてジーンさんは教室で見たときのように、ニコリと微笑んで姿を消したのだった。
「ほんまに、謙也を見とるんやな」
ジーンさん、と呟いた小石川くんの言葉に、私と白石はただ無言で頷いた。
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