少女漫画的表現に代表されるもの



「跡部さんってなんであんなにキラキラしてるんですか?毎日毎日、キラキラキラキラ…、鬱陶しいんですけど」

部活が始まる前のちょっとした空き時間。すでに氷帝のジャージに着替え終わりソファーでくつろいでいる忍足相手に、愚痴っぽく部長の文句を言い始めたのは日吉。ちなみに日吉自身は下だけをジャージに着替えたのみである。無言で着替えるのもなんだかアレだ、という日吉なりの考えだったのだろう。そしてそんな日吉の発言にポーカーフェイサーは意外にも顔いっぱいにその驚きを示したのだった。

「キラキラ?跡部が?」
「そうですよ」

同期であり部長でもある跡部景吾の姿を忍足は思い浮かべた。そういや今日の体育が合同でサッカーの前に大分話し込んでいた。その時のことを思い出すが、けしてキラキラしている、などの感想を思ったことはなかった。派手な顔立ちだから人目をひくが、本当にそれだけだった気がする。
    
「ほかの人もキラキラして見えるん?」
「まさか、そんなはた迷惑な人はあの人だけですよ」

ほーん、きらきらねえ…、と日吉には聞こえない声量で忍足はつぶやく。

忍足はラブロマンス系の話が好きだ。そんな自分に言わせてもらえば、相手がキラキラとして見える、しかもそれは特定の一人、となると、ああこれはもう、いやそういうことだろう、と容易に想像がつくのだ。

「…俺の思ったこと言ってみてええ?」
「?ええ」

他愛のない会話を続けているうちにどうやら日吉のほうも着替えが終わったみたいだ。パタリと仕事をなくしたロッカーの扉が閉まる音が響いた。

「それって跡部のこと好きなんちゃう?」

いつもなら、なにをバカなことを、と極めて冷静かつ冷えた視線で日吉は返しただろう。忍足もその反応をそこそこに期待してこの言葉をかけたのだ。が、しかし。

「な、にを、バカな…っ!」

声がひっくり返っている日吉というのは初めてみた。顔を真っ赤にして必死に言い訳をする姿も初めてだ。どうやら忍足の発言は図星だったらしく、また日吉自身も跡部への想いに気付いてしまったようだ。

大慌てで部室を飛び出す姿をとりあえず見送った忍足。そして、日吉と入れ替わりに入ってきたのはなんと話の渦中の人物である跡部だった。

「日吉のやつ、どうかしたのか」
「さあなぁ」

ふーん、と興味がなさそうな声を漏らす跡部。その声には特になんの感情もこもっているようには感じず、これは日吉にとって楽ではない恋への道のりやんなあ、と忍足が心のうちで一人納得していた矢先であった。

「なあ忍足、最近日吉の奴、なんかキラキラしてないか?」

前言撤回。さっきの感情のない声色は、単に日吉に対してのみにしか意識が働いていなかっただけのようだ。日吉が去った先を見つめる跡部の目には、隠しきれない愛おしさとでもいうべきものが浮かんでいた。そっとため息をつき、自分がまるでキューピッドのような役割を果たすことに我ながら自嘲的な笑みが自然と零れた。


「なあ跡部、それって―――」