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 初めて触れたビリーの身体は随分熱く火照っていた。シャツとジャケットを隔てていてもなおその熱さを伝える熱量に、はっと息を呑んで、一瞬指を浮かせてしまう。そして彼はそれに気付かない男ではない。彼の愛嬌ある顔立ちにさっと妖艶な笑みが広がって、
「怖いのかい、マスター?」
 と柔らかな問いかけが降ってくる。
「怖、くない、」
 と言えばそれはもちろん嘘になる。私は男女の睦み合いについてなど何も知らなかった。知識として頭に入れているというだけであって、そこに体験は伴っていない。本当の意味では、何一つとして情報を持たない純然たる初心者だった。ビリーもそれを薄々感じ取っているらしい、怖いならやめておこうかと切り出した彼の表情には慈しみさえ滲んでいる。
 「怖くない」と今度は幾らかはっきりと告げて、再びビリーの背中に腕を回した。
 全然怖くない。私はちっとも怯えてなどいないのだと自分によくよく言い聞かせる。彼はきっと優しくしてくれる。普段の所作からして女性に優しく接している彼のことだから、魔力不足という緊急事態であっても、性急にことを進めるということはない、はずだ。恐怖を与えぬよう、痛みがないようにしてくれるはずである。私はこの点について彼とは何の約束も取り決めていなかったが、そのように取り計らってくれるのだと半ば強引に、意識的に彼を信じていた。
 ビリーは軽く肩をすくめて私の肩を柔らかに抱き、「なるべくゆっくりするよ」と囁いた。温かな息が耳朶を掠め、ぴくりと身体が小さく跳ねる。単なるくすぐったさとは違う慣れない感覚に焦げつくような不安を抱く私を、彼はゆったりと撫でた。小さな子供を宥めるような手つきだった。

「キス……はやめておこうか。君も本当に好きな奴としたいだろうし……」
「ううん、いい」

 「いいの?」と軽く目を見開いた彼にうんと頷く。彼の柔らかな丸い頬にそっと手を添えると、すぐさまビリーの細い手が重ねられる。彼の身体は指先まで燃えるように熱いらしい。火傷しそうだと安直な感想を抱きつつ、恐る恐る顔を近付けてみると、彼は大人しく長い睫毛に縁取られた両目をそっと伏せた。
 その日最初のキスは、私から彼に贈ったものだった。