第14話 『お気に召しませ』




朝起きて、重たい瞼を開けると好きな人の寝顔。
起きてるときはあんなに怖いのに、寝ているときの顔はこんなにもあどけない。

その瞼が開けば深い紫色の瞳。
その唇が開けば低く脳に響く声。

どれも…好き。



「名前ちゃんふっかーつ!!」


執務室の扉を開けるなり、私は満面の笑みで叫んだ。


「あだ名ひゃん!!」


…うん、
ヒュウガ少佐、棒付き飴くわえながら抱きつかないでくれるかな。
さっきから棒が私の頭にガシガシ当たってるんだけど。
…背伸びしたら飴の棒、ヒュウガのノドに刺さっちゃうかな……?
……止めといてあげよ。


「元気になったようで安心しました。」


ハルセさんたちまで私の元に来てくれた。


「ご心配おかけしました!」

「ねぇあだ名たん…アヤたんの匂いがするぅ〜。」


クンクンと私の身体中を嗅ぐバカ犬…じゃなかったヒュウガ。
人がハルセさんの笑顔に癒されてる時に、そんな鋭いこと言わないで欲しい。
アヤナミさんは何事もなく仕事してるしさぁ。


「そ、そう?気のせいじゃ…」

「あだ名たんって、嘘つくと耳が動くんだよー。」

「えッ?!嘘っ?!」


急いで両耳を隠すと、ヒュウガは腹を抱えて笑い出した。


「それこそ嘘だよっ。あだ名たん、かわいすぎー。」


なんとも屈辱的。
笑い転げるぐらい笑うか?!
踏んでいいかな??
いや、マジで。


「少佐、笑いすぎですよ。」


コナツナイス!!
あともう少しで踏んじゃうとこだったよ☆


「だってー。あだ名たんかわいくって。でもさーなんでアヤたんの匂いがすんの?」


クッ。
何気に話戻しやがった!!
ここは素直に行くべきか?
いや、しかしだな…

二度も一緒に寝たとなったら、絶対ヘンに思われるよね!
またシたとかシてないとか…


「名前―。全部声にでてるよー?」


クロユリが自問自答している私の腕をひっぱって止めてくれた。
やっちまった。
声にでてたなんて…可愛くないひとり言だよ。


「ふぅん…一緒に、ねぇ……。」

「さ、先に言っておくけどしてないから!」

「別にまだ何も言ってないよ♪ただオレも一緒に寝たいなぁって…」


襲われる覚悟はまだしたくないんですけど!!
まだ純粋培養な私でいたいよ。


「アヤたんとは寝れて、オレとは寝れないなんて差別だよ!」

「日ごろの行いってやつだね。コナツやクロユリとも寝れるけど、…ヒュウガとは……」


絶対ムリ。


「あだ名たん、さすがのオレでも傷つくんだよ…」

「じゃぁせめて溜まってる書類どうにかしてください。それ頑張ったら考えてあげなくもないです。」


なーんて、条件だしてみるが、
絶対にムリなことはわかってる。
ディスクワークすると人を斬りたくなるんだもんね。


「じゃぁがんばろっかな、オレ。」

「え゛?」

「溜まってる書類終わらせたらいいんだよね?」

「…い、いや…」

「待ってて、今晩行くから☆」


いや、だから…
考えてあげなくもないって……

あれ?
もしかしなくても、地雷、踏んじゃった??


「前言撤回!」

「受け付けませーん。」

「どこまで冗談よ?!」

「え?全部本気だけど?」


…こいつの目、マジだ。


「アヤたんばっかズルイでしょ。」

「ズルイって、ヒュウガ…」

「ね、ね、名前って、アヤナミ様のこと好きなの?」





無邪気なクロユリによる急な爆弾投下。
確か、前回は「ヒュウガのこと好きなの?」だったから…(第8話『心地よい場所』参照)
二度目だね、このての爆弾。
もうこの子、可愛い顔して爆撃機だよ。

クロユリくん、何となく察してもね、聞いてイイコトと悪いコトがあるんだよ。

しかも…どうしてアヤナミさんがいるこの場でわざわざ聞くの?!
これがクロユリじゃなくヒュウガだったら速攻で刺してるよ私!!

あぁ゛〜アヤナミさんの手が止まってるぅ〜。
いつもはこんな無駄話しスルーのくせにどうして今日はスルーじゃないんですかね?!

言っちゃう?
言っちゃうか?!
でも言っちゃったら逝っちゃいそうで怖いよ!!

よし、こーなったら…


「え〜、アヤナミさんはヒュウガとデキてるからそれはないと…」


ビシィィィィ!!


ギャァー!
ダメですか?!
このカップリングはお気に召しませんでしたか?!


「そうなんだよ〜。オレとアヤたん恋人だからダメだよ〜。あ!でもコナツもオレと恋人なんだっけ?!」

「あの話しはもう記憶にありません!」


コナツが必死にそのカップリングに抵抗する。


「わー。オレッたらモテモテ☆三角関係?」

「昼ドラ並みのドロドロ恋愛だね!」


まさに夢の三角関係!
…あれ?
でもアヤナミ×ヒュウガ?
ヒュウガ×アヤナミ?


ビシッ!!!!!!!!


ひゃう!!
そ、そうですよね!
そんなカップリングないですよね!


「愛人は…アヤたん?」


ヒュウガ、それはさすがに言っちゃダメだと…


バシッ!!!!!!!!!


ほら。


「そんなに死にたいか、ヒュウガ。」

「冗談だよぉ、アヤたん。ムチ痛いからしまって!お願い!!」

「歯を食いしばれ。」

「食いしばっても痛いモンは痛いから!!」


よ、よし!

でもとりあえずヒュウガがノッてくれたおかげで、標的がヒュウガに代わった!!
卑怯だとは思うが、コレも身のためだと思えば安い代償だ。

さてと、今のうちに逃げる!!

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