第23話 『瓶詰めロマンス』
朝日が眩しくて目を覚ました。
横ではまだ眠っているアヤナミさんがいる。
女の仕度は時間が掛かる。
まだ眠たい目を擦りながらゆっくりと体を起こし、次の瞬間私は枕元にあるたくさんのプレゼントに目を見張った。
「…え?!」
プレゼントがいっぱいだ。
1つ、2つ、3つ、4つ、5つも…
「あ、あ、あ、ああアヤナミさん!おきてください!!サンタさん来ましたよ!!」
信じるものは救われるのです!!
ユサユサとアヤナミさんの肩を揺さぶり起こす。
「…信じていたからだな。」
「はいっ!!」
プレゼントを眺めて幸せのため息をもらす。
「あけないのか?」
「……なんかもったいなくって。」
一番手前にあったプレゼントを愛おしそうに撫でる。
「開けないほうがもったいないと私は思うが。」
「そうですよね……」
アヤナミさんは寝転がったまま体を横にして、ベッドに正座をして包み紙を破らないようにそっと剥がしていく私を見ている。
プレゼントの中には
香水
万年筆
クマのぬいぐるみ
蝶々のブレスレット
オルゴール
がそれぞれの箱に入っていた。
「ん〜なんとなく誰が何をくれたのか想像がつくなぁ…」
「誰が??それをくれたのはサンタクロースなのだろう??」
…わかってて言ってるな、この人。
「……まぁ…ね。」
きっと
香水はヒュウガ
万年筆はカツラギ大佐
クマのぬいぐるみはクロユリで、
蝶々のブレスレットはきっとコナツ。
オルゴールはハルセさんだろう。
誰がくれたのか一目瞭然。
「うれしいなぁ…」
サンタクロースはもう私の元には来てくれないと思っていたから…
「あれ??アヤナミさんの枕元にもプレゼントがありますよ?」
私が置いたプレゼントとは別にもう一つプレゼントが置いてあった。
面倒くさそうな顔をしながらもアヤナミさんはプレゼントの包装紙を豪快に破り、箱を開いた。
「……」
あぁ…ヒュウガか…と思わせるようなプレゼント。
静かにアヤナミさんがお怒りのようで、私は一人苦笑いしてしまった。
「あいつの気持ちは良くわかった…」
きっと、朝一発目はヒュウガがプレゼントした新しい『ムチ』でプレゼントした本人が叩かれるんだろうな…
ムチを乱雑にベッドに放り投げたアヤナミさんは私が置いたプレゼントに手を掛けた。
中身は腕時計。
それはみんなにあげたものとおそろい。
時計の秒針だけ、みんなそれぞれ色が違うだけだ。
アヤナミさんは銀色。
ヒュウガは黒。
コナツがオレンジで
クロユリはピンク。
ハルセさんが藍色で
カツラギ大佐は茶色。
それでもって私は白。
ブラックホークみんなでおそろいのものだ。
それをしばらく眺めたアヤナミさんは私の頬に小さくキスをした。
「大事にさせてもらう。」
「…それは、私からじゃなくてサンタさんからなんですよ。」
アヤナミさんは気づいてる。
だけどちょっとした悪足掻きをみせると、ふと笑われてしまった。
「もう!私からのプレゼントはここにあります。」
実はベッドの下に隠していた彼女としての私からのプレゼント。
それをアヤナミさんに渡す。
「置時計か。」
「はい。だってこの部屋殺風景なんですもん。」
最初来たときから気になっていたのだ。
「すまないな。礼を言う。」
アヤナミさんはベッドから降り、クローゼットの中から一つプレゼントを取り出した。
「これは私からだ。」
ずっしりと重いそれを私の掌に乗せる。
「あけても、いいですか?」
頷くアヤナミさんを確認すると、私はガサガサと袋をあけた。
中には大きなビン。と、その中に飴がいっぱい詰まっていた。
「異性に何をあげたらいいのかわからなかった。」
「そんな!」
もらえるだけで嬉しいんです。
恋人のアヤナミさんから貰ったんですから。
「ただ……食べるのがもったいないですね。」
小さくそう洩らすと、微かに笑われながら頭を撫でられたのだった。
***
少し遅れて執務室へ行くと、ヒュウガがニマニマしながら私のことを見てきた。
「気持ち悪い。」
「そんなこと言わないで。」
机に肘をつくヒュウガの腕には私があげた時計がしっかりと主張するかのようについていた。
まわりを見渡せば、みんなの腕にもそれがついている。
「…幸せだよー!!」
心の中の幸せメーターがオーバーしてついつい言葉にしてしまった。
「まさかこの年にもなってサンタさんからプレゼント貰うとはおもってなかったです。」
朗らかに笑うハルセさんは本当に嬉しそうだ。
「ボクもー!!」
いや、クロユリはまだもらってもいいと思うよ??
自分の机の上にアヤナミさんから貰った飴の詰まったビンをコトリと置く。
「あだ名たん、それどーしたの?」
「アヤナミさんから貰ったの。」
「恋人として?」
「うん。」
毎日1個ずつ食べるんだー。と今日一個目の飴を食べるためにビンの蓋を開けた。
ビンをひっくり返して、どさーっと机の上に広げる。
「結構はいってるねー。1個ちょーだい。」
「だめ!これだけはダメ。飴が欲しいなら別のあげるから。」
これは、アヤナミさんからもらったものだから…
「…あだ名たんかっわいー!女の子だねぇ…」
く…恥ずかしいなーもう。
「ね、あだ名たん…なんか飴の中にはいってるよ??」
飴を掻き分けて見てみると、そこには…
「なにこれ、口紅?」
ちがう。
「グロスだ……」
飴を食べていけば後に気づいたであろうが、子供のような選び方が幸いしたのか飴に埋もれて隠れていたグロスをこんなにも早く見つけることが出来たのだった。
「粋な事するねー、アヤたんも♪」
ホントだよ。
鏡をポケットからとりだし、グロスを唇に塗る。
それはほんのりとピンク色で可愛らしく優しい色。
「あだ名たんにぴったりの色だねぇ。」
きっと、アヤナミさんは一生懸命選んだんだと思う。
私に似合う色を。
私は鏡を直して、アヤナミさんの前まで少し急ぎ足で歩くと、ピタリと立ちどまった。
「アヤナミさん、似合いますか?」
私の声に顔を上げたアヤナミさんは私の唇に気がついたのか、目を細めて「似合っている」と呟いた。
そんなアヤナミさんの胸元をどこぞのヤンキーのようにグイッと引き寄せた私は、つやつやとグロスの光る唇をアヤナミさんの唇に押し当てた。
もう誰が見ていようと構わない。
幸せが溢れすぎてきてどうしようもないのだから。
ゆっくりと唇を離すとアヤナミさんの唇に私のグロスが薄っすらとくっついて控えめに輝いていた。
それを指で拭うように撫で、私は「アヤナミさん、大好きです!!」とアヤナミさんに飛びついた勢いで、イスと一緒に後ろにひっくり返ったのだった。
……傷口が開いたのは言うまでもない。
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