02




ステージ衣装を脱ぎ捨てて私服へと着替え終わり、鏡で手直しをして振り向いた私を待っていたのはマネージャーだった。


「お疲れ様、名前。あと、はい。」


目の前に大きな封筒が差し出された。


「何、コレ。」

「前に頼まれていたもの。」

「ハチミツ青年?!」


YES♪と笑うマネージャーから封筒を受け取って中を見る。
あの日からすでに3週間。
顔の広いマネージャーも、探偵も、さすがに軍の情報を手に入れるのには苦労したみたいだ。


「…コナツ=ウォーレン…」

「ねぇ名前、何かの間違いじゃないの?ハチミツ色の髪の青年で貴女のいう雰囲気の子がその青年一人しかでてこなかたけど…」

「けど?」

「その子、あの有名なブラックホークの人間よ。」


ぶらっくほーく??
なにそれ。


「皇帝が気まぐれで飼っているって聞くわ。ヴァルスファイルを使って、」

「へぇー。」

「……人が話してあげてるのに興味なさそうね。」

「うん。話してなんて頼んでないし、興味ないもん。コナツ=ウォーレンがコナツ=ウォーレンであることが私にとって一番大事なのよ。ってことで、名前ちゃん今から会いに行ってきまぁっす♪」

「ちょ、名前!次はジャケットの撮影が!」

それまでには戻るって♪もし遅れたらその時はヨロシク☆」

「遅れる気満々じゃないっ!」

「信頼してるわ。優秀なマネージャーさん♪」


チュッと投げキッスをして、私は心の踊るままに軍へと足を向けた。





親切なおにーさんに案内されてやってきたブラックホークの執務室の前で、私はここまで来ておきながら、今更、コナツさん私の事覚えているだろうか。と心配になって、腕を組んで仁王立ちしていた。

覚えていなかったら…んー…。
ま、覚えてなかったら思い出させるまでよ!


ケロリとした私は扉に手をかけた。

ノックもなしにガチャと扉を開けると、部屋の中に居る人の視線が一気に浴びせられた。


う゛、と一瞬躊躇いを見せるも、私がすぐに見つけたのだ。
ハチミツ色の髪をしたコナツ=ウォーレンを。


「ハチミツ青年!やっと見つけたっ!」


あー!とコナツさんを指差し、彼の所へ一直線。
しかし、枯れは興奮している私とは裏腹に、訳がわからないとばかりにキョトンとしていた。


「ハチミツ青年、また会えてよかった♪」

「…えと…すみません、どちら様で……あ、」


忘れていたようだったけれど、どうやら思い出したようだ。


「名前です。一ヶ月前は助けてくれてありがとう!」

「…い、いえ…。」

「なになにコナツー。どこで歌姫ちゃんと出会ったの〜??」


サングラスをかけた男の人がハチミツ青年こと、コナツの肩に腕をまわした。


「一ヶ月前、出かけたときに絡まれていたのを助けただけで…。で、でもどうして名乗っていない自分を探して…」

「会いたかったから♪」


ニコッと笑いながらはっきり告げると、コナツは「う…」と照れたように唇を引き締めて、サングラスの男の人はニマニマと笑った。


「若いねぇ〜。オレ、ヒュウガね。んでこっちのハチミツ青年がコナツ。よろしくねぇ〜。」

「名前です、よろしく!」

「そ、それにしてもどうやって軍に入ってきたんですか?!」

「入り口で「入りたいんですけど」って私のファンだっていうお兄さんにいったら普通に入れてくれたよ。」

「少佐、ここの警備…大丈夫か不安になってきました…。」

「そだね、コナツ。」

「じゃ、じゃぁ何故僕の居場所がわかったんですか??」

「探偵を雇ったから。私、目的のためには手段を選ばないの☆」


そういうと、今まで黙ってみていた無表情の人が私の頭を鷲づかみした。


「いだだだだ!!」

「仕事の邪魔だ、出ていけ。」

「人の恋路を邪魔しないで下さい!」

「…」

「私、コナツに一目ぼれしたの!!!!!」


拳に力を入れながら嬉々として話すと、諦めたように頭から手を離された。


きっと私の想いがこの人には伝わったのかもしれない!


「…ヒュウガ、私は会議へ行く。それまでに片付けておけ。」

「アヤたん…仕事の邪魔されるの嫌いだもんね。」


ん〜、どうやらやっぱりアヤたんという人には伝わっていなかったらしい。
呆れられただけのようだ。
ま、いっか!
コナツにさえ伝わっていれば!


とコナツに目線を向けると、どうしたらいいのかわからないのか、オロオロしながら少し顔を赤くしていた。


なんっっって可愛らしい!!


「え、えっと、出会ったばかりですし…すみません、そういう感情は…」


しかも手当たり次第付き合おうとかそういうのはなく、真面目で高感度が持てる!!


「いいの!これから私を知って??性格も、身体も全部♪」


私ってば大胆♪と頬に手をあてて照れた素振りをみせると、コナツは身の危険を感じたのか、一歩私から後ずさった。


もう遅いのよ、コナツ。
もう、遅いの。
貴方は初めて私に異性を好きという感情を芽生えさせたんだから。
狙った獲物は逃がさないわ!!


一人熱い私は、このとき執務室に寒い空気が漂ったことには気付かなかった…。

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