「忠誠心は邪魔なだけです」




「では行ってくる。」

「はい、いってらっしゃい。」


にこやかに手を振って、今から会議へ向かうアヤナミ様達を見送った。

久しぶりに執務室に一人だ…

なんてふと思い、急に寂しさを感じていた頃、あくびをしながらまだ会議中であろうヒュウガ少佐が一人帰ってきた。


「あら?ヒュウガ少佐、会議は終了したんですか?」

「いんや、まだまだだよ♪あんまり長いから〜そっと抜け出してきちゃった☆」

「…いいんですか?」


いや、答えは決まっている。
絶対駄目だ。


「いいんだよっ☆オレね、あだ名たんと二人っきりでお話したかったし♪」

「改まって何か御用ですか?あ、ディスクワークはお手伝いいたしませんよ。」

「違う違う。んっとね〜、前から気になってたんだけど〜、」


私の机の上に肘を突かれて、グイッと私の顔にヒュウガの顔が近づいた。


「あだ名たんって、アヤたんのこと好きデショ?」





沈黙を作ってしまったのが悪かった。

無言は肯定と取られ、ニンマリとした笑みを浮かべる少佐。


「何のことでしょうか?」


上手くしらばっくれるには少々遅すぎた。


「もうごまかせないよ〜。」


するどい少佐に一瞬だけ嫌気が差した。
と同時に逃げ出したくもなったけれど、ここはグッと踏みとどまる。


「何故急にそんなことを?」

「ん〜?なんとなくっ!だよっ☆」


なんとなくでバレてしまったのが少しだけ情けない。
この男にだけはバレたくなんてなかった。


「…少佐、私の立場もお考えください。」


人気はないとはいえ、軽々しく主人をお慕いしているだなんて言えるはずもない。
もし誰かに聞かれていたら、私の立ち位置もアヤナミ様の立場もない。


「最初は忠実な娘だと思ってたんだけどね。」

「…はぁ。そうでしょうね、私も最初は忠誠心だけで動いてましたから。」

「あらら、認めちゃったねぇ。」


認めさせたのは貴方でしょう?
しつこい。


「…忠誠心なんて邪魔なだけです。あの人をお慕いするには…邪魔でしかない…。でも、拾われた私にとってアヤナミ様は一人の人間である前に「主」なのです。」

「ちゃぁんとわかってるんだね。」

「はい。」

「それでも?ちゃんと立場をわきまえていてもアヤたんが好き?」

「……はい。」

「バレたらどうするの?」

「忠誠が愛に変わったところで誰が気づきましょう。」


貴方以外に、気づく人なんてそんなにいませんよ。


「…そうだね。アヤたんに告白しないの??」

「いたしません。」

「拒否されるのが怖いんだ。」

「…そうですね。」

「でもさ、よ〜く考えてみて!アヤたんだって結婚するかもしれないんだよ?そうなったらあだ名たんはアヤたんの側にはいれなくなる。それなら告白したほうがいいんじゃないの??」


なるほど。
告白をしないまま、アヤナミ様が別の女性とお付き合い、またはご結婚なされて離れ離れになるか、
それとも告白をして、フラれるか、奇跡的に受け入れてもらえるか。に賭けたほうが良いと。


「遅かれ早かれだよ。」

「…遅かれ、早かれ……」


離れ、離れに……なってしまうの??



そんなの、イヤ。

イヤだ。



ずっと側にいてほしいと願ったばかりなのに…



いつまでも、この幸せな毎日ではいられないの??

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