02




まったく…。
昨日はひどい目にあってしまった。

ただ私はブラックホークの執務室に挨拶に行きたかっただけなのに。
あの男のせいで予定よりも挨拶する時間が遅れてしまった。
しかも運が悪いのか、
クロユリ中佐はお昼寝中、
ハルセさんはそれの付き添い、
ヒュウガ少佐はどっかへ逃亡中とのことで、
会えたのはアヤナミ様、カツラギ大佐、コナツさんだけだった。


どれもこれもあの男と最下位という運勢のせいだ。


私は昨日も訪れたそのブラックホークの執務室の扉を開けた。


「おはようございます、昨日挨拶に伺った名前です。本日よりアヤナミ様のべグ……な、ななななんでいるのー?!?!」

「あれぇ?昨日の巨乳ちゃんだ♪」


…ふざけんなぁ!!!


「なにその覚え方?!セクハラだ!立派なセクハラだ!昨日のことも含めて訴えてやる!!」

「あれれぇ〜?昨日のことは犬に噛まれたと思って忘れるんじゃなかったの?」


ニマニマと面白そうに笑っているのは言うまでもない、昨日の男だ。


「なんであんたがここにっ、」

「それはこっちのセリフだよ〜。あ、もしかしてやっぱり気が変わって抱かれに来たの??」

「んなわけないでしょ!」

「え〜またまた〜そんなつれないこと、」

「ヒュウガ、黙れ。」


アヤナミ様に注意されたヒュウガは「はーい」と間延びした返事をした。


「名前、この書類に目を通して重要度別に仕分けしておけ。」

「は、はいっ!」


さっそく仕事だ!

……っていうか、ヒュウガって、あのヒュウガ少佐と同一人物だったんだ…。

ブラックホークっていったらちょっと残酷だけど強くって、その中に入れるってんだから全員に憧れてたのに……。

これからはヒュウガだけ除外しよう。
敬称をつけるのさえ嫌だ。

真面目に仕分けをしていると、机のど真ん中に輪ゴムが飛んできた。

どうせ奴だろうと思い、スルーしているとまたも輪ゴムが飛んできた。

なんてコントロールがいいんだ。


邪魔しないでとヒュウガを睨めばヒラヒラと手を振られた。

さっき怒られたばかりだというのに反省の色というものが全く見当たらない。

あぁ…イメージが…イメージが崩れてゆく…。

ブラックホークの少佐、絶対かっこよくて強くて頼りがいのある人だと思っていたのに…。
中佐も然りだ。


また無視を決め込んで仕分けをしていると、次は肩口に輪ゴムが当たった。


「……」


なんか、イラッときた。


机に散らばっている輪ゴムを仕返しとばかりにヒュウガへと向けて投げ飛ばした。
しかし、それは威力が足りなかったらしく床へと落ちてしまった。


次!と次の輪ゴムを手に装着していると、頭を片手で握られた。
グググ…と圧迫感が迫り、痛い。


誰だ!と振り向くと、そこには鬼の形相をしたアヤナミ様が立っていた。


「遊んでいる暇があるならこれを情報機関へ持って行け。」

「…ハイ。」


クスン、私だけじゃないのに……。





えっと、情報機関の部署は…確かこの建物の一番隅っこだったはず。

私は目的地へと急いだ。
早く帰って仕分けの済んでいない書類を終わらせてしまわなければ。

名誉挽回!汚名返上だ!!と意気込んでいると背後からちょこちょことヒュウガがついてきていた。


……勘弁してください。


「なんでついてくるのよ。」

「情報機関にオレも用事♪」

「……ついでに一緒に済ませて来てあげるよ、用事って何?」


ついてこられるよりはマシだ。


「大丈夫。正確には情報機関に用事のあるあだ名たんに用事があるだけだから☆」

「情報機関に用事ないんじゃん!!」


もう、ついてこないで。と追い払うが、ヒュウガは懲りずに後ろからついてくる。


「ねーねーあだ名たん。」


情報機関も間近になったころ、ヒュウガが声をかけてきた。


「何。」

「情報機関の人間って、真面目であんまり部屋の外から出ないんだ。」

「だから?」

「声、出さない限りバレないって話♪」


…は?


意味がわからなくて振り向こうとすると、背中を押された。

壁にぶつかる一歩手前で踏みとどまったが、後ろからヒュウガの左手が伸びてきた。
その手が壁についたので、逃げ道が狭まってもどかしくも身動きが取れなくなる。


「…何の冗談?」

「冗談じゃないことくらい知ってるでしょ?」


ヒュウガは背を向けたままの私の太ももへと右手を伸ばした。


昨日の恐怖からか、異常にビクリと体がビクつく。


「かーわいー♪」


ペロッと耳たぶを舐められた。


「ひゃっ!」

「耳、弱いの??」


イイコト知っちゃった♪と嬉々とするヒュウガとは反対に、私は顔を青くした。

今から始まろうとしていることは、こんな通路でするようなことではないはずだ。
まるでそのスリルさえも楽しんでいるようなヒュウガに怖くなる。


「…退けて。」

「ヤだ♪」


人に見られたらどうするつもりなんだ。
あんまり部屋の外からでないっていったって、絶対というわけではないのだ。
外にでることだってあるだろう。
それなのに……この男は。


「…アヤナミ様に言い付けるよ。」

「じゃぁ言いつけるのも恥ずかしいようなことしちゃお♪」


逆効果ー!!!


低反発もいいところだよ!
少しは打って響いて!!
お願いだから!


ヒュウガは私のスカートから手を差し込んできた。

急いで両足を閉じようとしたが、それはヒュウガの足が入り込んで来たことによって阻まれてしまった。

ズボンかスカートか選べるからとスカートにしてしまった自分を今更ながら恨む。
いや、恨むべきはこの男か。


「あだ名たんって足キレーだねぇ。白くて細くて…美脚だ♪」

「ありがとーでもタダじゃないのよ、タダじゃ。」


撫でているヒュウガの手を抓って放そうとするが、力では勝てない。


「いくら?」

「残念ながら金では買えないの。愛をくれる人じゃないと触らせたくないんだけど。」

「んーじゃぁ、愛あげるよ。」

「そんな軽い愛はいらないよ!!」

「もー我が侭だなぁ…」


は?これ、我が侭か?!?!


「じゃぁ別のモノあげるね、ココに♪」


スルリと内太ももを撫でられたかと思えば下着越しに秘部を撫でられた。


「ッぁ!」


不意をつかれて声が小さくもれた。


「気持ちいい?ココに欲しくなったでしょ?」


もう『何を』とは聞くまい。
答えなんてわかりきっている。


「欲しい…わけ…ない、でしょうが!」

「あんまり大声だしちゃうと誰か出てきちゃうよ。」


耳元でクスクスと笑うヒュウガ。
その間も耳と秘部への愛撫は止まらない。
布越しだというのに足に力が入らなくなるくらい感じてしまう。
ヒュウガの舌が耳を舐めてくるのでピチャピチャと水音が直に聞こえ、羞恥で顔が赤くなった。

胸に抱きかかえるように持っていた書類をきつく握ってヘタリこみそうになるのを堪えていたが、ついにはガクンと膝から折れた。


「大丈夫?」


ヒュウガはシラッとして、私の秘部に触れたまま、空いていた左腕で腰を支えてくれた。


「ッ〜〜〜!!またお腹好いてんの?こういうの止めてよ!」

「感じてたくせに♪」

「感じてない!」

「そっかな?ほら、なんか湿ってきたよ?」

「っ、ゃ…ぁ…」


止めて…人が来たらどうするのよ…。


ヒュウガの腕に爪を立てて、その与えられる感覚に耐えていると、ふとその行為が止んだ。


スカートから手が出て、軍服を軽く整えられる。
その様子に首を傾げると、ちょうど人が一人歩いてきた。

その人はヒュウガに挨拶すると私達の前を通り過ぎて情報部へと入っていった。


その様子を唖然としてみていると、ヒュウガはニコッと笑った。


「あだ名たんも人の気配を読めるようにならないとね☆」


…最初から…
最初から人が来たら止めるつもりだったんだ…。
人の気配がしたら止めるつもりだったんだ…。

それなのに私は一人馬鹿みたいに焦って……


私は羞恥と怒りで顔を真っ赤にさせると、そのまま怒りに任せてヒュウガの頬に平手をお見舞いしてやった。








おまけ。



「ヒュウガー顔どうしたの?」


お昼寝をしようとしていたクロユリは帰ってきたヒュウガに首を傾げた。


「…ちょっとした愛の鞭だよ。」

「違うから。少しは反省してよね。」


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