03




朝です。
眩いばかりの朝です。

空気も美味しく、シーツとか干してきました。


そんな清清しい気分で出仕してみたら、執務室には誰もいませんでした。





「あれ?」


いつもならアヤナミ様は当に出仕していらっしゃるはず。
カツラギ大佐だって私よりいつも早いのに。


「あ、そっか。」


アヤナミ様は今日、朝一で会議だと仰られていたような気がする。
カツラギ大佐も確かアヤナミ様と一緒に会議だ。


参謀と大佐は大変だ。


そういえば私はまだ新米だからと、残って書類を処理しておけって昨日のうちに命令されていたことを思い出す。

でも、ハルセさん達もいないなんて…。


扉の前に立ったまま首を傾げていると、後ろからふぅ〜っと耳に息を吹きかけられた。


「んひゃぁ!!」


びっくりしてうるさい心臓と共に、私は跳ねた。


「ん、朝からイイ反応☆」

「あ、朝からふざけないで!」

「え〜いいじゃん♪」


いつの間にやってきたのだろうか、ヒュウガは勢い良く距離を取った私に笑った。


「警戒心丸出しだなぁ。」

「当たり前!」


もう二度とあんな…あんなことには……。

ッ、恥ずかしい!!


「あ、今エロっちいこと思い出したでしょ?顔赤いよ♪」

「思い出してなんかない!!」


豪快に自分の椅子に座ると、ヒュウガも自分の椅子に座った。


「もう、早く中佐もハルセさんもコナツさんも来ないかな…。」


この二人きりの空間は無理。
正直って無理。

意識してしまう。
顔を見ただけで昨日のことを思い出してしまう。

心臓…うるさい。


ペンをきつく握り締めた。


そうして、出仕の時間を過ぎても来ない3人をおかしく思い、私は仕方がなく、本当に仕方がなくヒュウガに声をかけた。


「中佐たち、珍しく遅いね。」


中佐だけならわかるんだけど、ハルセさんとコナツもというのは不思議だ。


「ん〜?あれ?あだ名たん聞いてないの?クロたんとハルセは討伐に行ってて、コナツは過労で倒れたんだよ、昨晩。だから今日はオヤスミ♪」

「あ、なるほど…。」


コナツさん、本当お疲れ様です。
今日くらいゆっくり休んでくださいね…。


………


「えぇ?!」

「反応遅っ?!?!」


ちょ、ちょっと待って!
っていうことは何?!
『コレ』とあと1時間近くは一緒ってこと?!

うっわ、ありえない!
会議早く終わらないかな??

誰でもいいから帰ってきて!!


「急に意識始めた?」


グシャっと書類を握り締めて一人の世界に入っていたらしく、気がつけばヒュウガが目の前に立っていた。


「始めてないから。」


必死に取り繕い、皺くちゃになった書類を伸ばす。

よし、ギリギリ大丈夫そうだ。

ヒュウガのことなんか放っておいて、私は私の仕事をしよう。
そうしたら1時間なんてあっという間。

っていうか、先に他部署に行かないといけない仕事からしたら、ここにいなくて済む!


私はナイスアイディアとばかりに勢い良く椅子から立ち上がった。


「どこ行くの?」

「ちょっと急ぎの仕事を思い出したから出てくる。ヒュウガは誰か来るかもしれないからココにちゃんと、ちゃんと居てね。」


ニッコリと微笑み、『ちゃんと』を二回繰り返しておいた。

これで敵陣から逃げられる!と踵を返すと、急に腕を掴まれて引っ張られた。


「なっ!!」


抵抗する暇もなく、あっという間に先程まで私が使っていた机に仰向けにされていた。

肩を硬い机に押し付けられていて、痛い。


驚いて目をパチクリさせていると、ヒュウガはクスクスと笑っていた。


「な、何。」

「あだ名たんってば魂胆丸見え。」


どうやらバレバレだったらしい。


「ヒュ、ヒュウガが悪いんでしょ?!」


バレているなら仕方ない。
開き直ってこの場を脱出しようじゃないか。


「ん?なんで??」

「意識させるようなことするから!」

「あは☆やっぱり意識してたんじゃん♪」


や、やられた…。
自滅した…。


「何?こういうことされるかもって期待してた?」


プチ、プチ、と上着のボタンを外されてゆく。


「期待じゃなくて警戒してたの!!」


殴ろうと右手を振りかぶるが、その手を取られてしまい左で殴ろうとすると、また軽々と受け止められた。


「今、何時だと思ってるのよ。」

「ん?10時だけど?」

「朝よ?朝っぱらからすることじゃないでしょ?!」

「朝も昼も夜も、愛し合うのに時間は関係ないよ。」


ヒュウガは私の両手を一括りに纏めると、私の頭上に手で押さえつけた。


「愛なんて…ないくせに。」

「あるよ?オレの愛撫で気持ちよさそうに喘ぐ女の子見ると愛しいなって思うよ?」

「結果論でものをいわないで!!」


そんなお飾りみたいな愛はいりません!!


「ねぇ、何事も試して見ないとわかんないと思わない?すっごく相性いいかもよ?試して見なきゃ、世界は開けないよ〜?」

「そんな世界、私には必要ないの。」


私が思い切り睨むとヒュウガは目を丸くして、次の瞬間には喉の奥でクツクツと笑った。


「オレには必要だからさ、少しくらい付き合ってよ。」


首筋にヒュウガの舌が這う。

ざらりとしたその感覚にギュッと目を閉じると、それをいいことにヒュウガは私の服を脱がせ始めた。


上着のボタンが一つ一つ外され、胸元が開いてゆくたびにヒュウガの舌がゆっくりと下へ下へと降りてゆく。


「会議が早く終わって、アヤナミ様たちが帰ってきたらなんて言い訳するんですか。」

「ん〜。あだ名たんが誘ってきたって言っちゃおうか♪?」


ブラを長い指でちょいっとずらされれば、その赤い突起に生温かい感触が這った。


「ッ、…冗談。」

「冗談じゃないよ?それとも何、アヤたんたちに見せ付けたいの?こーんなにエロイ姿を♪」

「そんな、ことしたら…地の果てまでも追いかけてその首へし折ってやる。」

「あは☆いいねぇ、あだ名たんが追いかけてきてくれるんならそうしちゃおっかな♪」

「最低!」


そう叫ぶと、カリ…と突起を甘噛みされ、体が跳ねた。


「イイコト教えてあげる♪アヤたんたち会議終わったみたいで、気配がこっちに近づいてるよ♪ねぇ…、この続きしたらさ…、軽蔑する?」

「ッ!!するに、きまって…るじゃない。退けて!離して!!」

「じゃぁさ、約束して?」

「な、何…。」

「あだ名たんの処女、オレに頂戴?」


ぞくりと粟立った。


「な…なんで貴方なんかに…。」

「じゃぁこのまま続けるよ?アヤたんにバレちゃうね。」

「っゃ!!ヤダ!」

「どっちの『ヤダ』?」


耳元で低く囁かれる声。
まるで悪魔との取引をしているような気分になる。


「…ッ…あげる!あげるから退けて!!」


口から零れ落ちた言葉はもう元には戻らない。


「約束だからね。」


ヒュウガは私の手を放すと、机の下に私を押し込めた。


次いでガチャと扉が開く。


「おかえり〜アヤたん☆あれ、大佐は〜?」

「そのままクロユリたちの討伐に向かわせた。」

「そっかぁ♪」

「名前はそこで何をしている。」


アヤナミ様の声がして、私は急いで胸元のボタンをしめ始めた。
わたわたと慌てているからか、中々上手くしめれない。


「なんか、コンタクト落としたみたいだよ☆」

「そ、そうなんです!ちょっと待ってください!」


コンタクトなんかしてないんだけど、と思いながらもヒュウガに話をあわせ、ボタンを閉じ終えた。
すると、バサッと軍服の上着が手渡された。
ヒュウガによって。


いつのまに上着脱がせたんだ、とムカついて奪うようにそれを取ると、ゴソゴソと着る。

そして、私は立ち上がった。


「おはようございますアヤナミ様会議お疲れ様でした私は今からちょっと他部署を回ってきます!!」


ヒュウガと目を合わせるのも嫌で、息継ぎも無しに早口にそういうと、逃げるように執務室を出た。



「…ヒュウガ。」


地を這うような低いアヤナミの声が響いた。


「ん〜?」

「仕事中に私のべグライターに手を出すとは、冗談にしては笑えぬな。」

「言っておくけど。先に出会ったのはオレだよ、アヤたん♪」

「…」

「面白いよね、あだ名たん。あんなに拒まれたのオレ初めてかも。な〜んか燃えちゃうなぁ♪」


今頃、赤くなりながらぶつぶつと文句を言っているであろう名前を想像しながら、ヒュウガは口の端を吊り上げて笑った。


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