04




顔の赤みも引き、心臓の音も平常に戻った頃、私は執務室に戻った。

ヒュウガはさっきのことなんかなかったかのように、椅子に縛られて仕事をしているし、私ばかりうろたえてバカみたいだと思った。

アヤナミ様はいつも通り、姿勢正しく書類を次々に処理していっている。
その姿はもう神々しい。
こちらがうっとりしてしまうほどの仕事の速さだ。


「あ、あだ名たんおかえり〜♪」


私が帰ってきたことに逸早く気付いたヒュウガはヒラヒラと手を振ってきたが、無視しておいた。


「アヤナミ様、こちらが次の書類です。」

「そこに置いておけ。」

「はい。」

「もーあだ名たんってば連れないんだから。あーんなことやこーんなことシた仲でしょ☆」


私はヒュウガの声にゾクリと粟立って、自然とアヤナミ様の後ろに逃げた。


「へへへ、ヘンなこというの止めてくれる?!」



じっとりと足のつま先から頭の天辺までを見られているような気分がすごく最悪だ。
ねっとりと服の下まで見透かされているような気分になる。


アヤナミ様の後ろだとその視線から逃げられる。
私はそのアヤナミ様の後ろで彼を睨んだ。


「…。あだ名たん、アヤたんの後ろじゃなくてオレの膝の上においでー。」


両手を広げられて、いつでも来い!という状態のヒュウガに冷たい目線を送った。


「絶対ヘンなことするからいや。」

「大丈夫、ちょ〜っと腰とかお尻とか触るだけだから☆」

「それがヘンなことだって言ってるの!」


もうヤダ。


「アヤナミ様、アレ、どっかに左遷してください。」

「これ以上騒ぐなら二人纏めて左遷させてやるが。」

「すみませんでした!仕事します!」

「アヤたん…何だかんだいってあだ名たんを助けたね…。」

「黙れ。本当に飛ばすぞ。」





「これでよし!」


干していたシーツもベッドに敷き終わり、ベッドに寝転がった。
お日様の匂いがする。
夜だというのに、まるでお日様のぬくもりに包まれているかのようにシーツは温かい。

布団を干すと、すごく気持ちがいいから好きだ。


後は電気を消して寝るだけ。
でもその前にちょっと読書でも。

部屋の電気を消して、枕元のスタンドに明かりを灯す。
この雰囲気の中で、枕の上に本を置いてうつ伏せに寝転がり、読書をするのが私は気に入っているのだ。
そうして、プライベートの時間を楽しんでいた時だ。


コンコン、と部屋の扉が叩かれた。


こんな時間に誰だろう…。もしかしたら緊急の呼び出しかもしれないと体を起こそうとして、止めた。


「あだ名たん、オレだけど、起きてる??」


ヒュウガの声がしたからだ。

彼が夜に訪ねてきてすることといえば一つだろう。

ここは寝たフリというものをするのが得策といえよう。
運よく部屋の電気も消えているし、このまま寝ているものと引き返してくれるはずだ。

パラリとページを捲った。

甘いラブストーリーがふんだんに描かれているこの小説は、私のお気に入りだ。
硬派な上司とのぎこちない恋。
登場人物がちょっとアヤナミ様に似ているような気がするが、絶対にアヤナミ様はこんなふうに激しく抱きしめて愛を囁かないと思う。
…全く想像がつかない。


小さくクスッと笑うと、ベッドのスプリングがギシッと音を立て、明かりが差し込んでいる本にふと影が差した。


「寝たふりだなんて卑怯だなぁ〜。」

「ッ、きゃ、ッッッ!!!!」


ビックリして振り返り、声を上げそうになったが、ヒュウガの大きな手に口を塞がれて、叫び声は喉の奥に消えた。


「しー。静かにしなきゃ皆起きちゃうでしょ?」


人差し指を立てて唇につけるヒュウガ少佐はどこか楽しそうだ。


今日は心臓がいつになく激しく鳴る日だと思う。
今のは特に寿命が縮んだ気がする。


「なんでっ、」


驚きすぎて言葉が出ない。


「ちゃんとノックしてドアから入ってきたよ?」

「カ、カギ、閉めてたはず、」

「うん、閉めてあった。」


細い針金を見せたヒュウガは、それを少し離れているゴミ箱まで投げ入れた。
憎たらしいほどナイスシュートだ。


「…卑怯なのはどっちよ…。」

「お互い様でしょ。」

「…私、もう寝るの。帰ってよね。」


本をパタリと閉じてスタンドの横に置いた。
すると、それをヒュウガは手に取って中を見た。


「うわ〜。ベタ甘だねぇ…。」

「見ないでよっ!!」


必死に奪うように取り返す。


「名前、好きだ。」


耳元で急に囁かれた。


「な、何っ?!」

「そういうの好きなんでしょ?本に書いてあった。」

「真似しないで!」

「なんだかその男の人、アヤたんに似てるね。口調とか。」

「どうでもいいでしょ。」

「あだ名たんってアヤたんのこと好きだよねぇ。」


スタンドだけの優しい雰囲気が、何故か一気に怖くなった。


「今日もアヤたんの背中に隠れちゃってさ。何、アヤたんとはシたの?」


顔を近づけてくるヒュウガは私の上に跨った。


「あ、アヤナミ様はそんなんじゃない!!尊敬してるだけなんだからそういうこと言うのやめてよ!」

「尊敬…ね。」


私は無意識のうちに逃げようと足掻いたが、両手をあっさりとザイフォンで纏め上げられた。


「何でかなぁ…あだ名たんがアヤたんのこと話してるの見るとムカつく。」

「は?」

「ねぇ、オレはあだ名たんの中でどんな存在?何番目に大切?」

「何番目って…人に順位なんて…。」

「じゃぁどんな存在?」

「…ヘンな人。エロイ人。…寂しい人。」

「寂しい?」


ヒュウガが首を傾げた。


「実際そうでしょ?」

「…じゃぁあだ名たんがオレの寂しさ埋めてよ。」

「嫌よ。そういうのは好きな人として。」

「…なんかこの状況なのに焦らないね。」


ふん、慣れたのよ。


「何回目だと思ってるわけ?」

「……襲われないって思ってない?」


私はギクリと息を止めた。


図星指された気分だ。
だって、襲うチャンスはいくらでもあったのに、無理矢理最後までしようと思えばいくらでもできたはずなのに、ヒュウガはそれをしようとはしない。

初めて会ったときだって無理矢理できただろうし、
廊下で触れたときだって、そこらへんの空き部屋にでも連れ込めば最後までできた。
今日だって早急に求めれば出来たはずなんだ。

でもヒュウガはそれをしていない。


「まぁ…、確かに今までは最後まで襲うつもりはなかったけどね。」


ほらね。


「でも勘違いしないで?今まではって言ったんだよ?今日、オレと約束してくれたよね?」

「約束?」

「覚えてないなんて言わせないよ。だって約束したから。あだ名たんの初めてくれるって。」


わき腹をツとヒュウガの指が滑った。


「あだ名たんが悪いんだよ?アヤたんのことばかり気にしてさ。オレを本気にさせたんだから、責任くらいとってよ。」


わき腹を撫でていたヒュウガの手が、寝間着の裾から入ってきた。
廊下で触られたみたいに下着越しではなく、直に。


「ゃッ!!」


手を振りほどこうとするものの、がっちりとヒュウガのザイフォンが両手を固めているせいで動けない。

ヒュウガの左手が直に胸を揉んでいる間、寝間着が次々とベッドの下へ落ちてゆく。


「ッ、ヤダ、離してっ!」


抵抗をするものの、ヒュウガの膝が秘部を下着越しにグリグリと押し始める。


「っぁ、ん、ゃぁ…」


一糸纏わぬ姿になった私の胸元に顔を埋めてきた。


肌に吸い付くような弾力のある肌に夢中になるヒュウガはその突起には触れずに揉み、唇を首筋から胸へと滑らせた。

それでも確かなところへは触れない。

すでに胸の突起は主張しているというのに、ヒュウガは首筋や胸元に赤い痕を残してゆくばかりだ。


そのじれったさに身を捩ると、ヒュウガは楽しそうに笑って、やっと胸の突起を甘噛みした。

その瞬間、全身に鋭い快楽が走り甘い吐息が漏れる。


「気持ちいい?」


ヒュウガは私の反応を楽しむかのように確実に攻め立ててゆく。

胸はヒュウガの手によって形を変え、弾力を楽しむように揉みしだかれる。


「ぁ…ん…ゃぁ…」


抵抗の声をあげるものの、それは確実に快楽の色を増していた。

私の足の間に体を割り込んできたヒュウガは、下着を取り払うと少しだけ濡れているそこに舌を這わせた。


「っぁ、ャ…そんなとこ、やだっ、」


ジタバタと暴れるが、全てヒュウガの手によって押さえつけられる。


花弁を割り、生温かいヒュウガの舌が愛液を舐め取るとともに、中に差し込まれて解される。

無意識に太ももを閉じようとしてしまうが、このまま閉じてしまえばヒュウガの頭を挟んでしまうと、どうしようもなくなり、開かれたまま抵抗を見せる。

身を捩るが、男の力には到底適わない。
そんなことはわかっているのに、やらずにはいられなかった。

ピチャ…と水音がし始めれば、今なら羞恥で死ねると本気で思った。


しかし、そんな私を知っているはずのヒュウガは、容赦なく舌を這わせているそこに指を一本挿れてきた。


「ゃ、やだ…ヒュウガ…ぁ、ッ、怖い…ッ」

「解しておかないと後であだ名たんが痛いんだよ?」


誰も受け入れたことのないそこを他人が暴いてゆくのがとてつもなく怖かった。
狭い中をかき回す長い指。
たまに爪で中を優しく引っかかれると愛液が溢れていくのがわかった。


「増やすよ?」


何を増やされるのかと思えば、一度指を引き抜かれて、次は2本の指を中に入れられた。


「い、た…ッ、」

「まだ2本なんだけどなぁ…オレの入るかな?」


シーツをきつく握り締めて慣れるのを待つ。
痛いと喘ぐことはあっても、抵抗という言葉すらいつの間にか忘れてしまっていた。


「まぁ、無理矢理にでも入れるんだけどね。」


中を荒らしていただけの指が急に動きを変えた。

出し入れするように指が私の中を出たり入ったりする。
その際、急に指を3本に増やされて、背が一瞬だけ反った。


「いた、ぃ、ぁ、ん…ゃ…も、むり…」


「これぐらいで根をあげちゃダメだよ〜♪オレのはまだもっと太くて長いから☆」


痛みを誤魔化すように、ヒュウガの親指の腹が秘部の少し上の突起を撫で始めた。

電気のように体中を走るその快感に太ももが痙攣し始める。


「ぁ、あ…、ゃ…ぁあ、あ、ン、は、ぁあっ!」


ブルリと体が震えた。
それとほぼ同時にヒュウガの指が引き抜かれる。

頭が真っ白になっている私に、ヒュウガが微笑みながら頬に汗で張り付いている髪を払ってくれた。


「色っぽいね、あだ名たん。」


体はグッタリとし、ただただ新鮮な空気を吸い込むばかりだ。

焦点の合わない瞳でいると、また太ももを掴まれて広げられた。

そして秘部にあてがわれたそれに急激に冷えた頭が覚醒する。


「ゃ、やだ…ヒュウガ…怖い…ッ」

「大丈夫、力抜いて…。オレの背中に手まわしてごらん。痛かったら爪立ててもいいから。」


いつの間にか解かれていたザイフォン。
両腕を縛っているそれがなくなり、私はただただ言われるがままにヒュウガの背中に手をまわした。

ヤケに優しい声色だと思った。
全身を優しく撫でるような、そんな甘くて優しい声。


そう思っていると、情事、初めてのキスが落ちてきた。
薄く開いた唇にヒュウガの唇が重なる。
舌までは入ってこなかったけれど、どこかぎこちないそれに私が気を抜いた瞬間、秘部にヒュウガ自身が入ってきた。


「ッッ〜!」


声にならない声が出る。

舌や指とは違ったひどい圧迫感。
息の仕方さえ忘れてしまいそうになるそれに、私は耐えるようにヒュウガの背中に爪を立てた。


「ッ、」


思っていたより狭かったのか、ヒュウガも眉間に皺を寄せて息をつめた。


「痛…、ゃ…痛い、ッ」


喘ぐようにもれた声。
ヒュウガが中に入ってくる途中で、一瞬違う痛みを感じたのだ。


「奥まで入ったよ。」


お互いに少し息を整えて、次の行動に移す。
ヒュウガは私の息が整うまで随分待っていてくれた。


「動くよ?」


疑問系なのに、答えを待たずして律動を始める。


痛いだけの律動は、私の破瓜の血と愛液で、次第にスムーズになってきて嬌声が部屋に響き始めた。


「ぁ、あ…ぁ、ン…ッ、は…ぁ、ぁあっ!」


どんどん絶頂へ攻め立てられて、指を出し入れされた時みたいに頭が真っ白になってゆく。

必死にヒュウガの背中に爪を立てて、目をきつく閉じた。


「ぁ、あ、…ン、ッ、ん、ぁあ、あっ!!!」


次いで襲ってきた絶頂を私は受け入れた。

背中が反り、ヒュウガのそれを締め付ける。
ヒュウガもその締め付けに耐え切れなかったのか急いで引き抜くと、私の太ももに欲を放った。


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