07
「名前とヒュウガって付き合ってるの??」
お昼も過ぎ、何となく皆の集中力が切れてくるこの時間、ふとクロユリ中佐が首を傾げた。
なんてことを聞くんだ、この人は。
そんなことあってたまるか。
しかもなんだ、ヒュウガは私の答えに興味深々なのか視線を感じる。
「中佐、それは絶対ありえません。」
「え〜?でもラブラブじゃん、ね?ハルセ。」
中佐の問いに、ハルセさんは少し困ったように笑った。
私達の曖昧で微妙な関係性に気付いているのだろう。
「ね、コナツだってそう思うでしょ?」
次のターゲットはコナツさんだったようで、コナツさんはこの前の衝撃的な目撃をしているせいか、少しだけ顔を赤くした。
「そ、そうですね…。付き合っていないということが不思議です……」
「言っておきますけど、あれは無理矢理ですからね?!?!」
決して私から誘ったわけでも、乗ったわけでもないですから!
うん、あんなふしだらなこと外でなんて絶対しない!
「無理矢理って何してたの〜?」
「お気になさらず。断言しておきますけど、私はヒュウガと付き合ったりなんて無いですから!」
この時、ヒュウガは何も言わずにいてくれたので、私は自分の言葉に数回頷いて納得するとまた書類に目を通し始めた。
「終わった〜!」
今日はウトウトと瞼が降りてくることもなく仕事が終わった。
アヤナミ様はまだ仕事をするらしいが、私はもう今日は上がりだ。
お疲れ様でした、と頭をペコリと下げて執務室を後にする。
長い通路を歩き、自室へ向かっていると急に後ろから口を塞がれてすぐ側の部屋に引きずり込まれた。
「んん゛っ!!」
どうにかして逃げ出そうともがき、ドアの縁を掴もうと手を伸ばしたがその手は悲しくも空を切った。
バタバタと暴れるせいで靴があちこちに飛ぶ。
扉の鍵が閉められ、ベッドに放り投げられた。
こんなことするなんて誰よ!と振り向こうとすると目に布を被せられ、後頭部で締められた。
その時、ふんわりと香った知った香りがした。
「…ヒュ、ガ…??」
何度もこの香りは嗅いだことがある。
強引で、でも優しい人の香り。
しかし、返事は無い。
目隠しを慌てて解こうとするが、両手も彼の手によって一括りにされてベッドに押し倒される。
「ヒュウガでしょ?!ふざけたことしてないで離してっ!」
バタバタと暴れるが、器用に服を脱がされる。
ヒュウガ…なのだろうか?
いや、ヒュウガだろう。
でもチラともヒュウガの姿を見ていない上に、声まで聞こえないというのはとても恐怖だ。
「ゃ…おねが、い…せめて顔、見たい…」
必死に懇願するが、ついには下着まですべて取り払われた。
「怖いから…怖い…よ、ヒュウガっ!」
思い切り叫ぶと、耳元で吐息を感じた。
「先輩には敬語使わなきゃ。ほら、お仕置きだよ。」
クスクスという笑い声。
その声の主はヒュウガに間違いはないようだが、どこか怒気を含んでいた。
お…しおき??
私、何かした??
記憶を巡らせていると、前戯もなしに秘部に指が入ってきた。
「ぃッ…っ、」
痛みに息が漏れた。
慣らされてもいないそこは痛みしか生まれない。
「痛い…ゃ、めてっ。」
体を大きく動かしてうつ伏せになると、ヒュウガの指が抜けた。
痛みが消え、ホッとしたがまたすぐに秘部に指が挿れられた。
「っぁ!ッ…」
耐え切れないほどの痛みが全身を駆け巡り、手のひらに爪を立てて耐えていると、両手首から手が離されて自由になった。
が、全く濡らされてもいない中を2本の指が蠢き始めて、私はシーツをキツく握った。
「オレを見るだけで濡れるように、しっかり体にオレを教えてあげる。」
目尻に涙が浮かぶ。
それはすぐに目を隠している布に吸い込まれていった。
「ヒュ、ガ…なんで、こんな…ひど、い…」
「ひどいのはあだ名たんだよ。」
私?
「敬語…じゃないから?」
「あんなのウソ。でもお仕置きはホント。だってあだ名たん、」
全然オレのこと見てくれないんだもん。と聞こえたような気がしたけれど、指が出し入れし始められて話しどころではなくなった。
裂けるかのような痛みの中に少しずつ快楽が混ざってゆく。
「なんか濡れてきたよ?無理矢理なのに感じてるの?」
無理矢理はいつものことだ、と言い返したい。
言い返してやりたい。
んでもって殴ってやりたい。
だけどそんな余裕はすでになく、首をふるふると横に振るのが精一杯だった。
「そう?感じてるみたいだよ?」
クチュ、と卑猥な音が部屋に響く。
「あ、見えないからわかんないのか。そっかぁ〜。」
一人で勝手に納得したヒュウガは、私の中から指を抜くと私の頬にペトとその指をくっつけた。
ヌルリとした愛液は私の頬の上ですぐに空気に触れて冷たくなった。
「ね?」
何だか楽しそうな声色だ。
私は羞恥と恐怖の半ばに立たされているような感覚に背筋を凍らせた。
腰を軽く持ち上げられ、四つん這いにさせられると、合図もなしに中にヒュウガ自身が入り込んで来た。
「ッッッ!!」
まだ慣らされ足りないせいで、痛みが全身を駆け巡った。
シーツを握っているのに爪が手のひらに食い込む。
それほどきつく握り締めていた。
イライラをぶつける様な激しい律動に、私は眩暈がした。
次第に訪れてきた正常位とは違った快楽に息が詰まる。
気が飛びそうになると律動を緩められ、気を飛ばすことは叶わなかった。
いっそのこと気を失う方が楽だろうに。
「っぁぁ、あっ、ん、ッ、ぁあ!」
イきそうになるとまた律動を緩められた。
何とももどかしい気分になる。
「っ、は…」
背筋を舐められ、熱い吐息が漏れた。
「まだイくなよ?」
彼らしくない強い口調が耳元で低く囁かれ、ぞくりとした。
「なーんて♪」
じょ、冗談…?
こんな時になんて最悪な男。
「あ、今冗談だって思ったでしょ?冗談なんかじゃないからね♪」
律動がまた激しくなり、私はまた眩暈と共に絶頂への階段を登ってゆく。
だが、また登り切りそうになるとゆっくりと攻められ、中々絶頂を迎えられないでいた。
「ゃ…ヒュウガ…」
「イきたい?」
羞恥がまた頭の中に残っていたが、私は素直に頷いた。
「じゃぁさ、少しはオレのほう見てくれる?」
見る?
ヒュウガのほうを?
あぁ、そうか。
中佐が付き合っているのかとか聞いてきたから、あの後ヒュウガのことを少し意識して見れなかった…。
そのことを言っているのだろうか?
私は寂しかったのか?と勝手に思い込んだ。
私はヒュウガの『見る』とは若干のズレがあったことに気付かず、首を縦に振った。
目隠しが幸いしたのか、災いしたのか、ヒュウガがそのズレに気付いて苦笑いしていたのを私は知らなかった。
「っぁ、ん、ッ、ぁ…」
それからも激しい律動は変わらなかった。
しかし、絶頂を何度も迎えるはめになった。
白濁とした愛液が太ももを伝い、シーツを濡らす。
もうやめて、と言っても終わらない行為。
これでは絶頂の拷問だ。
「ぁ、っ、ん、ぁっ、ッ、ぁあっ!」
結局ヒュウガの気が済むまで私はその行為につき合わされ、眠った頃は時間の感覚もわからなかった。
目隠しのせいで時計を見ることも叶わず、ただ真っ暗な世界でヒュウガの行為を受ける。
目隠しをされているぶん、聴覚と触覚が強調されて今まで以上に感じていたと思う。
明日は絶対ヒュウガのことを普通に『見る』ことを決意して、私は意識を手放した…。
ヒュウガは気を失うように眠った名前の髪をベッドに座って優しく撫でていた。
決して欲に溺れたわけではない。
ただ、悔しかったのだ。
名前の見ている世界にオレが写っていないことが。
名前は『絶対』と言った。
自分と付き合うことは絶対無いと。
名前は『見る』と言ったけれど、直接的な意味ではないそれに、オレはふと首を縦に振った名前を思い出して自嘲気味に笑った。
自分は少なからず救われたのだ。
嫉妬の沼から這い上がれた。
名前が直接的な意味で『見る』と頷いたことなんてわかっている。
けれど、名前は頷いた。
それが違う『見る』の意味でも嬉しかった。
あだ名たんの中でオレは何番目?
…ねぇ、
「2番目でもいいから、好きになってよ。」
ぐったりとしている名前の唇に小さく口づけた。
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