08
「あだ名たん、飴食べる??」
昨日のヒュウガから一変、いつもと変わらない態度に戻ったヒュウガに私は少なからずともうろたえた。
まるで力ずくのような性急な行為。
暴れても怖いと言っても事に及んで、泣いて嫌がったのに最後までされたのは初めてで、ヒュウガが少しだけ怖いと思う。
でも飴を舐めているヒュウガの舌や、珍しくペンを持っているあの指を見れば、それだけで体が震えるのも事実。
あの赤い舌で、あの長い指で愛撫をされているのだと思えば、昨晩の情事を初め、色んな情事が思い出される。
その度に濡れていく。
自分の体は自分が一番わかるものだ。
「…ありがと。」
ヒュウガの手から飴玉を二つ貰った。
むき出しの飴玉を机の上に置く訳にもいかず、私は二つとも口の中に放り込んだ。
それにしても、だ。
濡れてしまうなんて自分はなんてふしだらなんだろう。
私にMの資質なんて全く皆無だし、今からMになろうとも思わない。
もちろんSでもない。
Sでもない、Mでもない、ノーマルで何よりだ。
なのにヒュウガの声を聞くだけでも快楽の渦に呑まれそうになる。
耳元で低く囁かれる睦言、たまに聞こえる絶頂を迎える時の荒い息遣い。
ヒュウガのすべてが私を蝕む。
「名前、体調が優れないのか?」
急に名前を呼ばれ、意識を戻して顔を上げるとアヤナミ様が目の前に立っていた。
「い…いえ…」
「顔が赤い。あまり無理はするな。」
「はい…ありがとうございます…」
赤いんだ、私の顔……。
軽く下を俯いていると、ふと視線を感じてすぐに顔をあげた。
するとヒュウガと目が合った。
何だか今、目を合わせるのは気恥ずかしくて、私が目線を逸らすと、ヒュウガは何を思ったのか椅子から立ち上がり私の腕を掴んだ。
「アヤたん、あだ名たん具合悪いみたいだから医務室連れてくよ。」
は??
アヤナミ様の返答も待たずして、目を点にする私を半ば強引に引っ張って執務室をでるヒュウガ。
引っ張られながら「具合なんて悪くない」と言ってもその耳には届いていないようで、スルーされる。
「入って。」
「は?え??ココってヒュウガの、」
「いいから♪」
強引に背中を押され、ある一室に入れられる。
強引なのは出会った時からだから今更気にしないけれど、私の記憶が正しければここはヒュウガの私室のはず。
むしろこっちのほうが気になって仕方がない。
始めてを奪われた時は私の部屋。
後は空き部屋だったり、外だったり廊下だったり、やっぱり私の部屋だったり…、実のところ、ヒュウガの部屋に入るのはこれで2回目だ。
初めて出会った時と、今の2回。
ソファに服が2着ほどぞんざいに置いてある以外は意外と片付いている。
「さ、シよっか♪」
………
「お邪魔しました。」
仕事中に人のこと引っ張り出したと思えば急に何。
むしろナニとか何。
ふざけんな。
背中を向けた私の首と腰に後ろから腕を巻きつけてくる変態少佐。
ついでに項にまで口づけられ、舐められればビクリと体が跳ねた。
「あだ名たん雰囲気大切にしたい人だもんね。」
お心遣いどうも。
でもそんな気遣いは不要です。
今この手を離してくれたらそれが何よりの最高の気遣いですから。
「さっき何考えてたの??」
耳の裏側を舐められ、首筋に指が這う。
「さっきって…、」
「さっきはさっき♪アヤたんに声かけられる前。」
耳の形を舌でなぞられたかと思ったら、今度は耳の中に舌をねじ込まれた。
愛撫をされている時のような水音にとても似ていて、少し落ち着き始めていた気分が一気にまた昂ぶる。
高揚する私を知ってか知らずか、ヒュウガは今日に限って確かなところには触れてこない。
首や腰を撫でるじれったい手、情事を思い出させる水音。
直に聞こえるヒュウガの声も私の欲を昂ぶらせるには十分だった。
「何にも、考えて…ない…」
「ウソ♪」
何故だか嬉々としているヒュウガの声。
わけが分からず、何故そうハッキリと言えるのか、内心首を傾げる。
「オレに愛撫されてる時の顔してた。」
全身が真っ赤になる錯覚。
いや、真っ赤になっているだろう。
確認したくもない。
しかし体が一気に熱くなった。
恥ずかしくて恥ずかしくて、羞恥心を暴かれただけでなく抉られたような気分だ。
「ほら、今も。」
俯こうとしていた私の顎を上に向けられて、上から覗き見られる。
上から見られるほどまでの身長差があるのが悲しい。
いや、悔しい。
「見ない、で…よ…」
そっぽを向いて、ヒュウガの手から顔を離す。
ヒュウガは面白そうに小さく笑うだけで、それ以上は深く顔を見てこなかった。
それが殊更悔しい。
なんだ、それが男としての余裕ってやつか!
「オレとのセックス思い出してたの?それともオレとシたいプレイでも想像してた??」
「変態。」
「でも、どっちかはあだ名たんも思ってたことでしょ?」
ねぇ、どっち?と、追求してくるヒュウガ。
さっきまでの男の余裕は何処へ行ったのやら。
「オレはね〜どっちもだよ♪」
「聞いてないっすけど。」
「あだ名たんとのセックス、毎日思い出すよ。白い肌に浮かぶオレのつけた赤い痕に細く華奢な体。オレのが入っていく様。もちろん想像だってする。縛って、目隠しして、バックもいいけどやっぱ正常位のほうが善がるあだ名たんの顔見れて好き♪」
「やめんか!!」
何言っちゃってくれてんのこの人!
羞恥心というものはないんですか?!?!
「ベッドにあだ名たん押し倒して、両足大きく開いて、露になったそこにオレの挿れるの。想像しただけで興奮するよね。」
同意を求めないでください。
「ねぇ、あだ名たんはどっち?それともどっちも??」
やっぱり何が何でも聞くわけね。
言わされて事に及ぶのか、
事に及んで言わされるのか、
どちらにしても言わされるし事にも及ぶことは決定されている。
それは想像するまでもない。
私に拒否権は無いのだから。
「…少なくとも、後者じゃ…ない。」
「オレとのセックス思い出すんだ?へぇ〜セックスをねぇ〜♪そっかぁ〜セックスをねぇ〜☆」
「いかがわしい単語連発しないで!」
「いかがわしくなんてないよ☆成人男性と成人女性の嗜み♪」
「やめて。そんないかがわしい事を当たり前みたいに言わないで。」
「それで?思い出して濡れるんだ??」
人の話聞いてないな。
「濡れません。」
「ふぅ〜ん?オレは勃つよ?」
「聞いてない!」
耳が!
耳が汚れる!!
穢れる!!
「こうやってあだ名たん抱きしめてるだけで、…ほら。」
お尻の辺り…というか、ヒュウガは足が妬ましく羨ましいくらい長いから、実質、腰の辺りに硬い何かが押し当てられた。
もう何も言うまい。
というか、今のでしゃべる気力は一気に奪われた。
顔を真っ赤にしてため息を吐くと、軽く擦るようにもっと押し付けられた。
「人様の腰でナニしてんですかね。」
「何って、…ナ、」
「お決まりのセリフは結構です。」
「何ってナニ♪」
「言わなくていいって言ったよね私?!」
その耳はお飾りですか?!
「…だから押し当てるのヤメテ。」
腰に当たるヤツから逃げようと必死でもがくが、ヒュウガの右手が腰に回っており、逃げることは叶わない。
「押さえきれないくらいに興奮してきた。」
知らん。
そんなことは知ったことではないのですよ。
「一人で頑張ってね。」
「ナカに挿れていいって?わぁーありがとう☆」
「そんなこと言ってない!さっきからどんな都合のいい耳してるの!!」
「だって一人でヌくより、あだ名たんのあったかいナカの方が何十倍も気持ちいいんだもん♪」
猥談禁止令発令してくれないかな、アヤナミ様。
「それに、ホントに濡れてないか…確認しなくちゃ☆」
「は?!ゃ、ちょっと!!」
腰に回されているヒュウガのしっかりとした腕に抱えられてベッドに下ろされた。
いくら女だからといっても、成人女性を軽々と片腕で持ち上げるヒュウガにはびっくりする。
「あの、ですね…する気満々のところ申し訳ないんですけど、私生理中なの。」
「じゃぁお風呂行く?」
首をコテンと傾げる様は少しだけ可愛いけれど…。
ヒュウガの中の『生理中=セックスできない』ではなく、『生理中=お風呂場』という概念にガックリくる。
「勘弁して。」
実は生理だなんてこの場しのぎの嘘なのだが、少し想像して頭が痛くなった。
もし本当に生理中だったら、私はこのままお風呂場まで強制連行されて血まみれスプラッタで喘がないといけなかったのか、と思うとちょっと気分がよろしくない。
新境地が拓かれるのかも知れないけれど、私は股から血が出てくるのをあまり男性に見られたくない。
百歩譲って、恋人だったら良しとしよう。
しかし彼氏でもないこの男が見るのはおかしいし、お風呂場とかいう考えに至ることが私は意味がわからない。
一生、わかりたくない。
「じゃぁ…今日は『ヒュウガの性教室♪』に変更☆」
「…………馬鹿?星教室ならいいよ。」
星座を教えるついでにそのままお星様になってしまえ。
そしてその真っ黒な心と、真っピンクな頭を清めてくればいいさ。
「ついこの間まで処女だったあだ名たんに、手取り足取り腰取り教えてあげたいんだ♪」
「マジ無理です。警察呼びます。なんなら軍の派遣も検討します。」
「あだ名たんが軍人でしょ。オレもだけど♪」
世も末ね。
「あだ名たんはオレのいう通りに手と口を動かしてくれたらいいから♪」
「ナニさせる気だ、何。」
「真っ白だったあだ名たんがオレ色に染められていくの…ゾクゾクする。」
今のセリフ、せめて語尾に☆か♪つけて!!
真面目な顔して言わないで!
余計に怖いから!!
しかも今の一言で何か…何か大きくなってませんか?!?!
目線やりたくもないのに、目が行ってしまった自分が悲しい!
一人で悶えている私のおでこにキスを落としたヒュウガは、ベッドの淵に座って私を床に下ろした。
「……あの、」
この体勢、妙に嫌なんですけど。
「脱がせてくれる?それとも脱いだ方がいい?」
あぁ、本格的に頭が痛い。
誰か頭痛に優しいバファ○ン下さい。
ホントに逃げたい。
でも、ここまで来てヒュウガが逃がしてくれるはずがないことは今までの経験上、わかっている。
でも、できる抵抗はしておこう。
「どちらもお断りします。」
「じゃぁ痛くしていい?気絶するまでしていい?四十八手全部試していい?」
「自分で脱いでください。」
何だろう、目から汗がでてくるや…。
下を向いて自分の膝が目に映っているはずなのに目が翳む。
そんな私をまるっとスルーしているヒュウガは、ベルトを外すとそれを適当に後ろに放り投げ、ジッパーを下ろした。
この私が直視なんてもちろんできるはずもないから、全て音で判断しているに過ぎないのだけれど。
……といいますか、ヒュウガの下着って何なわけ??
トランクス?ボクサー??……ブリーフはないだろう。
個人的にボクサー希望で。
「あだ名たん、ちゃんと前向かないとできないよ?」
「しないならしないでも…」
「四十八手試していいって?」
「ごめんなさい!」
この人は決めたら絶対にやる!
そんな…意味の分からないプレイなんかできるか!!
ここはもう素直に従おう。
そしてすぐ部屋に帰ろう。
それがいい。
うん、それがいい。
「はい、顔あげてー♪」
ヒュウガの長い指で顎を掴まれ、強制的に上を向かされる。
自然と目を閉じる私に、目を開けないと気絶するまで犯すと言われてしまえば開ける他なく。
硬く閉ざしていた瞼をゆっくりとあげると、辛うじて下着を纏っているヒュウガがいた。
というか、ヒュウガ自身が見えた。
目を逸らしたいけれど、ヒュウガの視線が先を促す。
「ぬ、脱いで欲しいって…言った、ハズなんだけど…」
よかった…。
ボクサーでよかった…。
「うん。でも最初から実物みたら怖がられそうだから♪」
そういう気遣いはしてくれるわけね。
「そりゃお心遣いどーも。」
棒読みで言えば、右手を掴まれて、明らかに膨らんでいるそこに手を乗せられた。
ヘンな気遣いはしてくれたくせに。心の準備まではさせてくれなかったので、一瞬ビックリして息を止めた。
「軽く触って。とりあえず好きなようにしていいから。」
好きなようにって何?!
別に好きなようにするほど知識も何もないですけど?!?!
むしろ何したらいいんですか?!?!
硬直していると、ヒュウガが面白そうに目を細めた。
「それとももう直に触る?」
それもちょっと…
下着越しに触っただけで硬直してる女を見て面白がって、直にって…ドS!鬼畜!悪魔!!
なんていうと、本当に四十八手なりなんなりさせられそうなのでここは黙っておく。
ヒュウガは一旦、私の手を離すと下着を脱いだ。
今度は目を逸らす暇さえなかった。
すでに上を向いているそれを、もう一度握らされる。
硬く熱いそれに触れると、ぴくりと動いた。
ドクドクと脈打つそれは、男兄弟のいない私にはすごくグロく感じた。
こんなのが私の中にいつも入ってきてたのかと思うと少し腰が引ける。
ついでに緊張で頭がクラクラしてきた。
恥ずかしいしグロいし、もう頭の中はゴチャゴチャしている。
「あ、あの…これから…ど、したら…」
「知識全くない?」
「…はぁ。」
曖昧に頷く。
あるといえばある。
ないといえばない。
ただ上下に扱くということくらいしか…ぶっちゃけてわからないのです。
そんな私を見兼ねたのか、ヒュウガは私の手の上に自分の手を重ね、しっかり掴むと緩慢に上下に動かし始めた。
手の中で脈打つそれはどんどん硬くなっていき、先の方から何かがでてきた。
それが私の手まで垂れて来て、滑りをよくさせる。
その代わり、粘着質な音が部屋に響くようになったけれど。
その頃にはヒュウガの手も私の手から離れていた。
「あだ名たん、舐めて。」
左手で髪を梳かれながら、頭が真っ白な私はとりあえず言われる通りに、先のほうを口に含んだ。
口の中に青臭さと苦味が広がって、何ともいえない。
美味しくもないし、まずくも…ないと思うけれど、この匂いは独特で鼻につく。
「歯、立てたら四十八手ね。」
絶対立てません!
何があっても立てません!!
私は咥えているだけじゃだめだろうと、適当に舌で先を舐めた。
「そ、舌使って…、たまに軽く吸って。」
言われた通りに吸うと、小さくヒュウガから声がもれた。
しっかりとした喘ぎ声とは違うけれど、確実に空気を吐く吐息のような声。
いつも啼かされてばかりだから少し気分がいい、と気付いた私は、扱いている手のスピードを早め、舌先で裏筋を舐めたり吸ったりする。
慣れたわけではないが、きっと私の中でふっ切れたのだろう。
自分のことなのに、何だか第三者目線でそう思った。
たまに力の入れすぎでヒュウガが痛そうに眉を顰めるけど、特に咎められたりはしない。
初心者だし、ちょっとは多めに見てくれているのだろうか。
じゃぁちょっとくらい歯を立てても…と頭の片隅で考えていると、長い指で喉を撫でられた。
「歯、立てたらダメだって言ったよね?」
何故歯を立てようとしたのがバレたのかはわからないけれど、ヒュウガの少し低い声に、四十八手の存在を思い出した。
私の考えなんかお見通しなのだろう。
やっぱりここは大人しく従っておこうと、舌先と手に集中した。
「ッ、ふ…」
ずっと咥えているのは辛い。
というか顎外れそう。
しかし、ヒュウガは最初よりも息を荒くしていた。
初心者の私の愛撫でも感じてくれているのだろうか、と思うと、正直に嬉しいと思った。
私の愛撫でもうはち切れんばかりに大きく硬いそれ。
いつも、こんなのが本当に私の中に入っているのか不思議でならない。
こんなの挿れたら裂けるんじゃないかと思うけれど、実質入っているのだから殊更不思議だ。
これが私の中で蠢いて、最奥を突いているのだと思うと、じんわりと秘部が濡れていくのがわかった。
「あだ名たん…そろそろ出る……飲む?」
「っっ、飲まない!!」
いつもより艶めいた低く掠れたヒュウガの声と、爆弾発言にビックリして口を離す。
「じゃぁかける」
私の手にまたヒュウガの手が触れたかと思うと、強めに握らされて、今ままで以上に激しく上下に数回扱くヒュウガ。
「っく、」
するとヒュウガの苦しそうな声が聞こえたと思ったら、ビクビクとそれが動き、私は驚いて軽く手を引いた。…のがいけなかった。
吐き出された白濁が私の軍服に散ったのだ。
唖然とする私を他所に、ヒュウガは深く深呼吸して息を整えると、「顔にかけようと思ってたのに〜。」と何とも残念そうに呟いた。
「今度は飲んでね♪」
絶対イヤだと思った。
でもその絶対以上に絶対、飲ませるんだろうな、とも思った。
呆然としている私の脇の下に手を突っ込んで自分の膝の上に乗せたヒュウガは、白濁で汚れた軍服を脱がせ、丸めて床に放った。
あっさりと下着姿にされた頃に、私の意識がやっと戻ってきた。
しかしすでに遅く、私は足を広げさせられてヒュウガの膝の上に乗っているものだから、秘部にヒュウガのが当たって仕方がない。
先程ヌいたばかりだというのに、もうすでに硬さも太さも保っている。
「まだまだ下手だけど、気持ちよかったよ♪またゆっくり教えてあげるね☆」
ふるふると首を横に振るけれど、意味はない。
これもまた、絶対に教えられるのだから。
ヒュウガの手が私の下着を脱がし、秘部に触れた。
「んゃっ!」
「すっごく濡れてるよ?ヌルヌルしてる。」
「そ、それは…」
「それは??」
…ヒュウガとのセックス思い出して濡れたって言える?
それにそれだけじゃない…
多分、ヒュウガの扱いて余計に濡れた。
これもいえるはずが無い。
ヒュウガは私の反応を見て面白がっているようで、にんまりと笑ったまま先を促す。
今更だけど性格最悪だ、この人。
「ちゃんと言えたら、気持ちよくしてあげる。」
秘部にヒュウガのそれが触れた。
秘部の少し上にある小さな突起にもそれが触れる。
腰を動かしているわけでもないのに、互いの呼吸で体が微かに動くから、自然とその突起も擦れ、私はそれだけで小さく震えた。
ものすごく、欲しいと思った。
後でなんてこと言ったんだと後悔してもいいから、早く確かな快楽が欲しい。
私は顔を見られまいと、ヒュウガの肩口に額を押し当てて、先程の先走りの液で濡れた唇を開いた。
「ヒュウガ、との…ことも思い出して濡れた。それに…さっきのでも、…濡れた。」
「さっきのって?」
恥を忍んで言ったのに、更に追求される。
「…舐めるやつ。」
「フェラっていうんだよ。」
「……フェラ。」
聞きなれない言葉にイマイチピンとこないけれど、卑猥な言葉だということだけは理解した。
「よくできました。」
ヒュウガはとてつもなく機嫌がいいらしく、私の首筋にキスを落としていく。
どうして口にしてくれないのかと聞くと、どうやらフェラというものをした口でキスはイヤなのだそうだ。
咥えさせたのはあんただろうに。
未だに口の中に苦味と青臭さが微かに残っている中、首筋、肩、腕、胸元に赤い痕を散りばめられていると、秘部にピタリと冷たいものが押し当てられた。
「な、何?!」
ヒュウガの指が私の中に入ってきている。
それだけではない。
クリームみたいなものを中に塗られていた。
「そ、れ…何?」
いつの間に取り出したのだろうそれの正体を聞き出そうとしても、ヒュウガはニコニコと笑うだけで答えてはくれない。
「ね、ヒュウ、…ぁ、ゃ……ッ。」
「効いてきた?即効性の媚薬だよ♪」
体中が熱く火照る。
秘部からはトロリと愛液が流れ出るのがわかった。
「生理中だって嘘ついたお仕置きだよ。」
ヒュウガが胸を揉み、嘗め回すだけで、絶頂を迎える。
胸の突起を摘まれ、舌で嘗め回され、ありえないほどの感情の昂ぶり、体の高揚感。
それらを抑える術を私は知らない。
たった一つの方法を覗いては。
「ヒュ、ガ……ヒュウガ…も、欲しい…。」
ギュウッとヒュウガの首に腕を回して抱きつく。
胸がヒュウガの胸板に当たっているけれど、気にしていられる余裕は皆無。
「早く…、挿れて…っ、」
耐え切れない程の熱に浮かされる。
頭の中までボーっとしてきて、私はもう一度「欲しいの…」と呟いた。
「欲しいなら…ね?わかるでしょ??自分で挿れてみて。」
「ゃ、無理。」
ものすごく欲しい。
けど、それはやっぱり少し怖くて。
私はヒュウガの肩口に顔を埋めたまま顔を横に振るが、すでにドSモード全開のヒュウガには通用しない。
むしろ、もっとドSにさせてしまうだけだった。
「ほら、腰上げて。オレのを手で持って。」
また脈打つそれを握らされ、私は腰をゆっくりとあげると自ら秘部にそれをあてがった。
「いつもオレがしてあげてるように…、できるよね?」
小さく頷くと、頭を撫でられた。
その手の大きさと温かさに少し気持ちが落ち着く。
私は意を決して、ゆっくりと腰を下ろし始めた。
ツプ、と入り込んでくる異物感がいつもよりきつくない。
もう濡れすぎているからだろう。
ヒュウガとのセックスを思い出して濡れ、舐めて濡れ、媚薬を塗られて更に濡れ、胸の愛撫だけで絶頂を数回迎えたのだから、かなり濡れているはずだ。
「っぁ、は…ぅ……」
快楽で足に力が入らず、そのまま重力に任せて腰を下ろしたいけれど、ゆっくりと中を押し広げるように入ってくるこの感じがとてつもなく気持ちいい。
「気持ち良さそうだね。」
その言葉に2、3回頷くと、背中を撫でられた。
「ぁあっ!」
たったそれだけで絶頂を迎える。
まだヒュウガのそれは全て入りきっていないのにも関わらずだ。
しかし、その急に襲ってきた快楽についに足腰は耐え切れず、体が重力に従った。
「ッぁああァ!!!」
一気にヒュウガの根元まで入ったのでまた絶頂を迎えた。
今度は最奥にまでヒュウガ自身が入っているため、少しばかり痛い。
重力と自分の体重も重なって、いつもより深い挿入になった。
「ねぇ、子宮口に当たってるよ。」
絶頂を迎えた余韻と、まだ襲ってくる快楽に身悶えている私にヒュウガは笑みを浮かべる。
「あだ名たん…可愛いよ…」
ヒュウガはそういって私の太ももを開き、お尻から持ち上げると、まだ余韻に浸っていた私を無理矢理動かし始めた。
「ッゃ、ぁ、あ、ん、ン、ぁッ、ッ。」
「ホント、淫らで…可愛い…。」
ヒュウガに何度も揺さぶられながら、何度も絶頂を迎える。
媚薬が手助けしているらしく、いつもより感じる上に絶頂がとても近い。
絶頂の余韻なんか感じさせてくれる暇もなく、腰を打ち付けられる。
「ぁ、ッ、ぁン…っ、ヒュ、ガ…」
しっかりとヒュウガの首にすがり付いて善がる。
ヒュウガは小刻みに律動した後、私の腹部に白濁を放った。
熱い飛沫が腹部にかかったのがわかる。
乱れた呼吸も、髪も、もうどうでもいい。
まだ体の火照りは続いていた。
「オレので汚れて…なんかエロイね。」
返事をするのも気だるくて、私は荒い呼吸を整えるので精一杯。
「そのまましがみついてて。」
「ん、ぁ…」
ヒュウガはもう一度私の中に埋め込むと、繋がったまま抱きかかえ、部屋の隅に移動した。
移動するだけでも感じてしまう。
ヒンヤリとした壁に背中をつけられ、少しだけ身震いすると「大丈夫、すぐあったかくなるから。」と、諭すように言われた。
優しい、慈しむ声だ。
「ヒュウガ…、」
熱に浮かされるままに、私はヒュウガの頬にキスを落とした。
ヒュウガは嬉しそうに目を細めて笑うと、私の頬にもキスを落とす。
そうしてまた律動が始まった。
壁に背中がくっついているせいでたまに擦れるけれど、火照っている体にはそれされも快楽に変える。
私の腰を掴んで動かしているヒュウガの腕に足を乗せる。
バランスも悪いし、ずり落ちそうで怖いけど、何よりヒュウガは私を落とさないと、どこかで安心感があった。
同じ軍人とはいえど、ここまで体力の差があり、体格の差がある。
重くないはずないのに…と真っ白い頭の片隅で思えば、胸の突起を吸われた。
「ぁあッ、ン」
「何も考えないで、オレだけ感じて。」
余裕がないのか、ヒュウガは低く苦しそうに声を出した。
私は頷く代わりに、きつくヒュウガの背中にしがみ付く。
爪だって立てた。
快楽に溺れている体が持て余している快楽を逃がしたがっている。
それなのに、貪欲に求めているのも事実。
「ぁ、もっと…ヒュ、ガ…ッ、もっと、ぁ、ァ、ァ、ァアッ!!」
もう何度目かの絶頂を向かえ、私はグッタリと意識を失った。
ヒュウガの欲が今度は胸元にかかるのを感じながら…。
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