09
多分、ここ最近の私は痩せたと思う。
フェラやら騎乗位やらと反応に困るようなことをさせられ、気絶するまで揺さぶられ、睡眠時間は減少。
足腰立たなくなるまでしないでと何度言っても、次の日は必ずと言ってもいいほどそれに悩まされる。
男と女の体力の差の以前の問題で、ヒュウガには性欲も体力も溜まりすぎなのだ。
「すこ、し、は…」
ベッドにうつ伏せになっている私の横で、髪を手で梳かして遊んでいるヒュウガに文句の言葉を投げつけてやろうと声を発したが、声が掠れて思ったように声がでなかった。
腰はズキズキと、人に言えないような部分は体が動くたびに痛い。
「あれだけ喘げば声も出なくなるよねぇ〜♪」
ヒュウガはベッドから立ち上がると、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してきた。
ちなみに忘れてはいけないことが一つある。
私は裸で、彼も裸ということ。
何しにいったんだろうと戻ってきたヒュウガに目線をやって後悔したのは後の祭り。
朝から目が汚れた。
もう見るのもおぞましい。
何だか子宮口がキュと閉まって、余計に痛みを感じた。
「起きれる?」
500mlのペットボトルに入っている水を透明なグラスに半分ほど入れたヒュウガは、起きるように催促してくるけど、こちとら腰が痛いので起き上がれない。
むしろ起き上がりたくない。
「起きれないなら口移しで、」
「起きれます!」
痛む箇所を叱咤して、必死に起き上がる。
枕を背もたれにして座ると、グラスの方を手渡された。
それを無言で受け取って、半分ほど一気に喉に流し込んだ。
そして少しホッとしたところで残りの半分を飲み干す。
冷たい水が喉を通り、潤していくのがわかる。
一息ついていると、ヒュウガは直にペットボトルに口をつけて一気に飲み干していた。
上下に動く喉仏がやけにエロイ。
いかん。
思考がヤバイ。
それもこれもヒュウガのせいだ。
「飲んだならグラスちょーだい。」
「…ありがと。」
空のグラスを渡すと、ヒュウガはまた裸でグラスと空のペットボトルを置きにいった。
頼むからその粗末なものを隠してくれ。
……なんて、粗末だったらどんなにいいか…。
あれが私の中に入ってきてるのは、やはり今でも不思議でならない。
また、子宮が痛んだ。
「あだ名たん、シャワーだけでいい?それとも浸かる?」
「その前に何か着て。」
「あだ名たんも裸でしょ♪」
「私はシーツで隠してるもん。」
それに、着替える気力さえも残っていない。
カーテンの隙間から入ってくる朝日さえ殺人的に感じるのに。
「じゃぁシーツ剥ぎ取っちゃおうか♪」
「そんなことしたら即効で部屋でてく。」
「足腰立たないのに?」
っく…ムカつくくらい、よくわかっていらっしゃることで。
「こうなるってことわかってたのに、なんで何回もするのよ。」
「シたかったから。」
どこの王様ですか。
「昨晩のあだ名たんも淫らで可愛くて♪一回じゃ終わらないよ〜☆」
どんな褒め方だ。
「前みたいにまた媚薬とか使ったら、殴るからね。」
一週間ほど前のことを思い出して、気が遠くなった。
フェラをさせられて、その後は騎乗位。
もちろん一回で終わるわけもなく、お次は立って揺さぶられて…。
媚薬が効いているのか体中が熱いし、あの行為はあまりにも激しくて、二回目が終わったのと同時に意識が飛んだ。
その次の日にはもちろん立てず仕事を泣く泣く休み、2日分の仕事を必死に終わらせたのは記憶に新しい。
ヒュウガは妙にさっぱりとしているのが、ものすごく腹立たしかった。
今のヒュウガもだけど。
「はぁ…ブラックホークのヒュウガ少佐ってもっとかっこよくて、セクハラなんてしないで仕事に真面目で、堅実健全なイメージがあったんだけどな…」
「それはあだ名たんが勝手につけたイメージでしょ?押し付けちゃ駄目だよ。でないとチューしちゃうぞ☆」
私はもう一度深いため息を吐いた。
「それにこの歳でセックスに興味ないってほうが病気だよ♪」
ヒュウガはベッドの淵に座って、私の胸元を覆っているシーツを指でずらすと、チュっと谷間にキスを落とした。
「ちょ、ヒュウガ!」
「好きな子に触れれば欲情するし、勃つし、ヤりたいって思う。普通の感情だよ。」
う…なんか、上手く丸め込まれていっているような気がする…
「性欲は食欲、睡眠欲に並ぶ三大欲求の一つだよ?おなか空いたなー眠たいなーヤりたいなーみたいな感じだよ☆」
「い、いや…それはちょっとおかしいかと…」
「ちなみに今オレはヤりたいなーと思ってる。」
「私は思ってません。」
朝からヤメテ。
「いいじゃん、今日は仕事お休みなんだから♪」
「いや、帰って部屋の掃除とかしたい…」
「一日中ヤれるよ?」
お一人でどうぞ。
「それで私は腰が痛くて明日も休む嵌めになると??」
「手加減はしてあげる。」
「ヒュウガの場合、その言葉ほど信用ならない。」
人間はね、学ぶ生き物なんですよ。
「それに私、ちょっとだけおなか空いた…」
「下のお口からオレのでよければ食べる?」
「結構です。」
朝からそんなクドイもの食べたら胃が凭れます。
「そっかぁ〜。オレは食べよっかな、あだ名たんを♪」
「朝から元気ですね。」
「うん☆」
嫌味なんですけど。
「シャワー浴びたい。」
「ぶっぶ〜。さっき聞いた時何も返答しなかったから時間切れ♪」
なんかムカつくなぁ…
時間切れって何よ。
ヒュウガはベッドに座っている私の足に跨った。
シーツの上から跨られたため、身動きが取れない。
「それともお風呂場でする??」
「どこでもしない。」
「つれないこといわないの。今日は一日中空いてるから、四十八手試してもいい?」
「今すぐ冷水浴びてきて。」
昨日散々しておいて、今日四十八手試すって馬鹿でしょ。
絶対馬鹿でしょ。
今のところあれやこれや四十八手を試されたことはないけれど、このまま試されずにこの男にだけ死期が訪れたらいいと思う。
「乱れ牡丹、炬燵隠れ、押し車、色々あるけどどれがいい?」
「人の話聞いて!!」
「個人的には松葉崩しとかが奥まで入るからいいな♪」
「もう体力カケラも残ってないの。昨日ので使い果たしたの。」
涙出てきた…。
名前言われてもどんな体位なのか全然わかんないし。
「あだ名たんと四十八手かぁ〜燃えるね!」
「全く!大体…四十八手の体位まで知ってるって……なんで?」
「なんでって、」
「やっぱいい。」
いままで他の女の人としてきたんだろうな…とか、考えるんじゃなかった。
「嫉妬?」
「してない。」
ふいっと顔を背けると、体に纏っていたシーツを一瞬にして剥ぎ取られた。
「ちょっと!」
「嫉妬してるあだ名たんも可愛い。」
昨日つけた赤い痕の上からまた赤くつけられていく。
二重につけられた赤い痕は色濃く残り、2、3日で消えないんだろうな、と思うほどだった。
ヒュウガの手が首筋を撫で、肩を滑り落ち、背中に辿りつくと私を仰向けに寝かせた。
ここまでスイッチの入ったヒュウガはもう誰も止められない。
ベッドに沈むと、ふんわりとヒュウガの香りがした。
私の私室のベッドより大きくて、ふかふかのベッド。
もうこのベッドで何度体を重ねただろうか。
最初こそ私のベッドでの回数の方が多かったけれど、もうこのベッドでの回数の方が多いことは明白。
ヒュウガの匂いも、このベッドも、私の安らぎになってしまった。
優しく、時に強引に触れてくるこのヒュウガの肌の体温も心地よい。
私はゆっくりと、ヒュウガの首筋をなでた。
先程、水を嚥下した喉仏を人差し指で触ると、私の胸元に顔を埋めて愛撫をしていたヒュウガの舌先がピタリと止まった。
「どったの?」
顔を上げたヒュウガ。
更に喉仏が触りやすくなって、遠慮なく触る。
皮膚の奥に確かにある喉仏。
女のそれとは違う。
「あだ名たん??」
しゃべるたびに動く喉仏。
私、喉仏フェチなのだろうか??
今まで特に気にしたこともなかったのだけれど。
「…舐めてみる?」
ヒュウガの魅惑の言葉に、私は素直に頷いて頭を持ち上げた。
ヒュウガも私が舐めやすいように近づいてくれて、私はそこに舌を這わせた。
すると、腹部にヒュウガのそれが当たる。
「ン…感じるの?」
「好きな子に舐められれば男でも感じるよ。」
しゃべられると動く喉仏を必死に下で追う。
腹部に押し付けられる何ともいえない感覚に、吐息が熱くなった。
舌を這わせるだけじゃなく、唇や歯で軽く甘噛みする。
とてもいやらしいことをしているはずのに、体も脳も嫌がらずにしたいがままに舌を這わせる。
「随分いやらしくなったね。」
確かに昔の私がこんな光景を見たらビックリするだろう。
「抱くたびにオレ色になる…。」
ヒュウガは私の後頭部に左手を回すと、深く口づけてきた。
いつもより荒く、奪うような口づけ。
歯列をなぞっていたかと思えば、急に舌を吸いとられる。
ヒュウガの唾液が流し込まれてきて、必死でそれを飲み込むが、どうにかして息をしようとした時に口の端から零れでた。
ヒュウガは唇を離し、それを人差し指で掬い取ると、私の唇に押し当てて舐めさせる。
ヒュウガの長い指は刀を振っているからか無骨で、男の人の手だと思い知らされた。
舌で指先や爪、指と指の間を舐める私の様子を満足げに見ていたヒュウガは、私の秘部に手を這わせた。
急な愛撫にびっくりして指を軽く噛めば、口の中に舐めていたその人差し指を思い切り入れられた。
そして秘部にも一本の指が入ってくる。
「噛んだらダメだよ。」
快楽に溺れきっている私にヒュウガは無理難題を押しつけてくる。
必死に噛まないようにしていると、秘部に入れられている指がもう一本と増え、口の中にもう一本指をいれられた。
「ッ、っふ…ぁ…ふ…」
喘ぎ声もままならない。
鼻から抜けるような喘ぎ声。
口の中に指を入れられているため声を出しにくいのだ。
秘部を出たり入ったりする指が3本目まで増やされた。
そしてやはり口に入れられている指も3本に増やされる。
「どっちの口も小さいね。」
もう入らないよ、と言うヒュウガの笑みは艶やかで、息苦しさと快楽に溺れた瞳で見つめると目尻に口づけを落とされた。
その口づけに合わせるかのように自然と零れ出た快楽の涙もその唇に吸い取られる。
昨夜の情事で擦れて痛かった秘部がすっかり潤いを増して、仄かな痛みしか感じない。
しかもその痛みさえも次第に快楽に変わっていく。
私はすぐそこにある絶頂に手を伸ばした。
「腰、揺れてる。」
今日は一体なんの言葉攻めだろうか。
羞恥を煽るような言葉ばかりを口にされて、今すぐにでも顔を隠したい衝動に駆られる。
「いいよ、イかせてあげる。」
ヒュウガはそういうなり指のスピードを早め、あっさりと私を絶頂へと導いた。
ビクビクと痙攣する体。
半端なく押し寄せてきた快楽に耐え切れず、私はヒュウガの指を無意識に噛んだ。
「っ、…ごめ…」
噛んでしまった事に気がついたのは、鉄臭さが口の中に広がってからだった。
「いいよ。痛くない。」
血が出ているんだから痛くないことはないはずなのに、ヒュウガはそういって微笑んでくれた。
右足の付け根辺りに跨り、左足だけを高く持ち上げられ、ヒュウガの右肩に置かれた。
濡れている秘部が余計に空気にさらされ、ひんやりとする。
下半身は横にさせられ、上半身は仰向けにさせられるという、その妙な体勢に首を傾げていると、ヒュウガ自身が入ってきた。
「ぁ…ぅ……ッ、」
痛くはないけれど、その質量には毎度の事ながら圧迫感を感じてしまう。
それにこの体勢は初めてで…。
「ッ、は…ヒュ、ガ…」
「どう?」
どうって聞かれても返答に困る。
体勢のことについて聞いているのだろうか??
気持ちいい?って聞かれたほうがまだ素直に頷ける。
ヒュウガは緩慢に腰を打ち付けてきた。
左足は快楽のせいでピンと伸び、ヒュウガは目の前にあるふくらはぎに舌を這わせながら太ももを撫で上げる。
その触れるだけの愛撫も気持ちよい。
「っは…きもち、ぃ…よ」
「この体勢好き?」
やけに深く聞いてくるな、と思ったけれど、私は素直に頷いた。
「お、く…まで…くる…」
いつもの体位より奥を突かれる。
最初の頃は奥まで入られると痛くて痛くてたまらなかったけれど、今となっては奥まで突かれるのが気持ちよくてたまらない。
ヒュウガによって拓かれたこの体が、ヒュウガに溺れている事実。
そんな事実から目を背けてばかりいた私も、最近では素直に求めるようになったと思う。
快楽だけを欲しいんじゃなくて、ヒュウガを欲しいと思った。
慣れない体位に戸惑っている私のために、ヒュウガはゆるく腰を動かしてくれているだけで早急に求めてはこない。
優しいと心も体も感じる。
同時に、愛されているとも。
欲望のままに体を打ち付けてこないで必死に耐えている、そんなヒュウガが愛しいと、心から思った。
「ヒュウガ…ぁ、ん…いい、よ…ひどく、して…」
体と心で求めると、ヒュウガはふくらはぎを強く吸うと、打ち付けるスピードを速めた。
抉るように腰を回され、水音がひどく鳴る。
ヒュウガと私の荒い息遣い、それにベッドの軋む音を聞きながら私は絶頂を迎えた。
キツくヒュウガを締め付けてしまう。
いつもならここで数回打ち付けて外に出すヒュウガだが、今日は違った。
中ではじける熱い欲。
それは私の欲ではなくヒュウガの欲で、荒い息を整えるのも忘れて瞠目した。
中に吐き出された白濁を今も感じる。
熱くて、熱くて、心臓が耳元で鳴っているようだ。
「今、…中に…」
え、今日、避妊具つけてたっけ??と頭をめぐらす。
つけてくれたり、つけてくれなかったりするけれど、ヒュウガは一度も中に出したことはない。
だから安心しきっていた。
ヒュウガは私の中から引き抜くと、ティッシュで私の秘部から零れでてくる交じり合った愛液を拭った。
ただでさえ今日は子宮口まで入ってきていたのに、中に出されて呆然とする。
「もしできたら責任取る。」
…は?
できたらって何が??
責任って何の??
全く頭が回らない。
「好きだなんだ。あだ名たんが。世界中の誰よりも。」
そういってヒュウガは私の肩口に顔を埋めた。
「繋ぎとめられるものがなんであれ、繋ぎとめられるのなら、それでいい。」
いつもの自信満々なヒュウガからは想像がつかないほど苦しそうな声。
「…きら、われても??」
「うん。」
迷いもなく即答したヒュウガの髪が首筋に当たってくすぐったかった。
私は一度深く深呼吸をしてそのヒュウガの髪を撫でた。
「馬鹿だね…。もし本当にこれが原因で私がヒュウガのこと嫌ったらどうするつもりだったのよ…。」
小さく笑うと、ヒュウガは顔を上げて真っ直ぐに私を見下ろした。
彼はディスクワークこそしないけれど、頭も勘もいいから、今の言葉で全て察してくれただろう。
嫌ったらということは、同時に嫌っていないということになる。
その事実を、彼は悟ったのだろう。
ヒュウガは安心したように口の端を少しだけ緩め、ギュウッと私を抱きしめた。
「あだ名たん、好き。」
「…うん。」
「好き。」
「うん。」
彼はずっと悩んでいたのだろうか??
私がいつまでたってもヒュウガのことを好きと言わなかったから。
ずっとずっと、体を重ねるたびに悩んでいたのだろうか。
「好きだよ。」
「わかったってば。」
「好き…」
「私も……好き。」
私は笑って、ヒュウガの手を掴んだ。
先ほど噛んで傷つけてしまった指の血は止まっているものの、少し痛々しくてそっと舐め取ると、口の中に鉄臭さが広がった。
「誘ってる?」
「誘ってない。」
本当にいい加減お腹も空いた。
お日様もきっと天辺にいることだろう。
「四十八手、気持ちよかったみたいでよかった♪」
「…は?」
意味の分からない言葉に聞き返す。
「松葉返し、奥まで当たって気持ちよかったんでしょ?♪」
え、もしかして…。
あの…不思議な体位は……
「あ、あれが…」
四十八手の一つ、松葉返し??
こ、この男は…
イヤだっていってんのに…
「何やってくれてんの、馬鹿。」
つい最近まで処女だった私が…四十八手……。
今まで媚薬やらなんやら好きなようにされてきたけれど…
なんかショックだ。
確かに気持ちよかったのは今更隠しようのない事実。
でも、
「またしようねー☆」
「しません!!!」
ついこの間まで処女だった私には恥ずかし過ぎる上に、ハードルが高いんです。
「次は炬燵隠れで♪」
「だからしないってば!!」
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