白雪姫と猛獣使い
腰まである長い黒髪に雪のように白い肌。
頬と唇は血のように紅く、その姿はまるで…
「白雪姫みたいな子だね。」
ヒュウガが呟いた言葉に、眠っている名前を見たブラックホークの面々が頷いた。
でもきっと、彼女が起きたら自分は魔法使いだと怒るのであろう。と名前としゃべったヒュウガとアヤナミは内心思う。
「ボクたちが小人?」
クロユリが首を傾げた。
「6人しかいないけどね。」
「ちゅーしたら起きるかな?」
「クロたん、それは王子様の役割だからオレが…、」
「眠っている女性にふしだらなことをなさるつもりでしたら追い出しますよ?」
カツラギの笑みに、ヒュウガは「ごめんなさい」と謝ってクロユリの背中に隠れた。
ヒュウガの方が背も体も大きいので全く隠れてはいないが。
頭隠して尻隠さずどころか、頭もお尻も隠れちゃいない。
なんともマヌケな絵面だ。
「ん…」
そんな中、噂の赤ずきんで白雪姫が眠りから覚めたようで、その大きな瞳を開いたのだった。
***
「ん…」
まぶし…。
「あれ?」
ここ、どこ??
っていうか、この人達誰??
……っは!!
私もしかして気絶させられた間に売られたとか?!?!
やばいまずい逃げなきゃ!
「おはようございます、名前さん。はじめまして、カツラギと申します。」
ニコリと微笑まれて紅茶を手渡された。
「カツラギ…?」
なんか、この人優しそう。
うん、絶対優しい。
喉渇いてたんだよね。
それにしてもどうして私の名前を知っているんだろうと首を傾げそうになって、側のサングラス男と銀髪の男の存在に気がついた。
きっと彼らから聞いたのだろう。
それからは各々に自己紹介されてしまった。
「カツラギにハルセにヒュウガにコナツにクロユリ。」
「うん、そ♪」
「…では貴方がアヤナミ?」
「ほう、私を知っているのか。」
私はコクリと頷いた。
「私達一族と似てるけど正反対の力を持ってるから。」
お母さんに教わった。
近づいてはダメ、と。
彼らはあのヴァルスファイルを使うのだと。
「正反対の力?」
「うん。アヤナミの力は陰。私の力は陽。」
互いに存在していないと存在できない存在。
あぁ、頭が混雑する。
「帰る。」
飲み干したカップをカツラギに手渡すと、アヤナミに腕を掴まれた。
「痛い。」
「お前を拾ったのは私だ。」
「でも私は私のもの。帰る場所を決めるのも誰かのものになるのも私次第だよ。」
「では私の物になれ。」
「嫌。人攫いのくせに。」
「貴様が魔法使いだとバラされてもいいと?」
これだから人間は!
「卑怯者!人攫い!」
「なんとでも。」
「……し、しばらくの間だけなら。」
「それで良い。」
「偉そうに。」
「口は慎んだほうがいい。弱みを握られているのを忘れるな。主は私だ。」
「…ご主人様、ね。」
嫌味で言ったつもりだったのに、案外しっくりときてしまった。
「ご主人様だって☆なんかいやらしい侍従関係みたいだねぇ♪」
ビシィィ!
鞭が撓った。
私もヒュウガみたいに鞭で叩かれるんだろうか。
それだけは勘弁してほしい。
「…私、鞭怖い。嫌い。」
「安心しろ、貴様には振るったりなどせぬ。…大人しく言うことを聞けばな。」
「あ、それなら大丈夫。私かーなーり、いい子だから。」
なんてね。
ビシィィ!
「えぇ?!なんで今私鞭振るわれたのっ?!?!ひどい!私には振るわないっていったのに!」
「手が勝手にな。」
「非を認めろよ!男って別の生き物なのは下半身だけなんでしょ?!手はちゃんとコントロールし、ぎゃぁ!」
ひどい、また鞭振るわれた…。
当たってないけど、怖いもんは怖い!!
「今のわざとだ!」
「最初のもわざとだ。」
「認めたっ?!」
な、なんかこの人…
「アヤナミって変!!」
「貴様よりマシだ。」
「私の方がマシだよ!」
「そうか。」
「聞いてる?!聞いてないでしょ?!」
なんか低レベルな争いを勝手に一人でしてる気分…。
「放置プレイは止めて!あ、でもたまにならいいかなぁ…、放置ってちょっと燃える…いや、でもやっぱり恥ずかしいから!」
「恥ずかしいのは貴様のその脳内だ。」
アヤナミひどい!
私が一人でショックを受けていると、ヒュウガが私の肩に手を置いた。
「オレならSMでも放置でもいくらでもしてあげるよ☆」
「きもい触んな。」
いや、マジで。
冗談抜きだよ。
「ね、アヤたんも3人でどう?」
あ、コナツが顔赤くした。
ついでにクロユリの耳を塞いでいるハルセも視界に捕らえた。
「たまには3人ってのもいいよねぇ♪ね、アヤたん☆」
「…」
ビシィィィィィィイィィィィイイィィィィィ!!
人攫い?
いえ、もしかしたらただの猛獣使いのようです。
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