魔法使いとご主人様



あれから約一週間が経った。


「名前。」

「ありがと、アヤナミ。」


右足はまだちょっと痛いけれど、こんなふうにアヤナミが手を貸してくれるし、順調に回復してきている。


「いいですか、女性は特に体を冷やしてはいけませんよ。」

「うん、大丈夫だよカツラギ。」

「栄養も大事だよ??ひじきチョコ食べる?」

「う゛。クロユリ、それはちょっと遠慮しとく…。」

「えー?!ハルセ、いらないって。」

「そうですか。では、新たに鉄分の取れるものを作成いたしましょうか。」

「うん!」

「いや…普通にひじきでいいんですけど。」


生理も昨日で終わり、


「名前さん!少佐知りませんか?!」

「あー知らないなぁ…」

「そうですか。では他のところ探して見ます。」


コナツが執務室を出て去った後、私は机の下を覗き込んだ。
そこには大きな体を小さく丸めているヒュウガがいて、見た目とは裏腹に少し可愛くも感じるが、如何せんギャップがすごいので小さく吹き出して笑った。


「コナツ行ったよ、ヒュウガ。」

「ありがと♪助かったよ〜☆コナツってば真面目さんだからねぇ〜。」

「もう、コナツ可哀想に。今回限りだからね。」


やっと気分的に落ち着いてきた。
そんな私はアヤナミの恋人になってからというもの、毎日家事を練習しています。
掃除機を使って掃除をしたり、ご飯を作ったり、書類を整理したり。
魔法を使っているときより断然スピードは遅いし効率も悪いけれど、こんな生き方も楽しいかな、と思ったりしている今日この頃…。




***




「アヤナミ、もう寝ようよ。」


自室にまで仕事を持って帰ってきたアヤナミの肩に後ろから顎を乗せながら駄々をこねる。


「誘っているのか?」

「違うっ!」


なんでそうなるかなぁー。


「終わったのだろう?」

「終わったけど…まだ早い。」

「他人を基準に考えるのは関心しないな。」

「アヤナミは我が道を行き過ぎ!」


私は空になっているアヤナミのコーヒーカップを下げるために手に取った。
が、その手を掴まれ、引き寄せられる。


「わっ!」


ガシャンと音を立てて机に戻ったコーヒーカップはギリギリ割れずに済んだようだ。


「もう、アヤナミ、んん…」


一言文句を言ってやろうと思ったが、その文句は全てアヤナミの口内に消えていった。
深い口づけのあと、私は横抱きに抱えられてベッドに寝かされる。


「っ、アヤナミ、」


服を脱がしながら首筋に舌を這わせ始めたアヤナミに私は観念した。
もう逃げれそうにない。


「せめて電気…消して。」

「この方がよく見える。」

「だから嫌なんだってば!」


お願いだから電気消して!
恥ずかしいったらありゃしない。
魔法が使えたらここで『電気消えろ』って念じて消え……


「消えた…。」


あ、あれ?
確認のためにもう一度電気をつけてみた。

…うん、点く。
そして浮ける。

行為中ということも忘れて少し浮くと、アヤナミの手によってベッドに戻された。


「魔法使える!」

「それよりもこちらに集中したほうが身のためだと思うが?」

「ひゃ、ぁッ!」


急に胸に舌が這い、やわやわと揉まれると甘い嬌声が漏れた。


「ゃ、待って、アヤナミ…んっ、ぁ」

「待たぬ。」


秘部に細く長い指が入り込んで来た。
甘く焦らすように中をかき回され、理性がぶっ飛ぶ。
強請るようにアヤナミの首に腕を回すと、そのまま指でいいところを触られて私は軽く絶頂を迎えた。


「名前…好きだ。」


熱い吐息と交じって聞こえた言葉に私は全身の血が沸騰する錯覚に襲われた。


「私も、好き、好きっ。」


濡れそぼった秘部にアヤナミ自身が押し当てられ、ゆっくりと中に入ってくる。
息が詰まる…。
必死に息をしようと口を開けると、アヤナミの唇が重なってさらに呼吸が困難になった。
律動が始まり、打ち付けられるたびに熱い吐息が重なる。
それにさえも感じてしまって、私は四肢を震わせながら達し、アヤナミも中で絶頂を迎えたのだった。




***




互いの体を清めた後、私達はベッドに横に並んで掛け布に包まっていた。
胸いっぱいにアヤナミの香りが広がる。


「ね、私魔法使えたね。」

「そうだな。思ったより気付くのが早かったな。」


え?
何、今のセリフ。
まさか、


「し、知ってたの??」

「文献に書いてあったからな。初潮の一週間は魔法が使えなくなると。」


なんですと?!?!


「黙ってるなんてアヤナミひどい!」

「むしろ知らない貴様のほうが驚きだ。魔法使い本人のくせに。」

「関係ない!これだから人間は!!」

「久しぶりに聞いたな。」


うん、久しぶり言った。


「だって私…本当は人間好きだもの。」

「…そうか。」


アヤナミはそういって私の髪に指を絡めた。


「またそれだけ?」

「あぁ。名前がそう思っているのならそれで良い。」

「そうね…。…そうね……。」


私はアヤナミの胸板に額をくっつけた。


「人間に殺された魔法使いがいたことを忘れちゃいけない。でもそれだけじゃ何も変わらないから…。私、自分の気持ちに素直になってみる。」

「あぁ。」

「…いい加減帰らないとなぁ。」

「家にか?」

「うん。心配してると思うし。」

「明日一日だけ休みをやる。ただし明後日からは今日の倍以上の仕事をしてもらう。それから上層部の会議に透明になって出席してもらおう。」

「また?!」


魔法が使えるようになったからって…こき使いすぎ!


「もう…。」


私は小さく笑った。
もう、これだから人間は!!



勇者?
いえ、素敵な恋人で、ただの仕事馬鹿な私のご主人様です。


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