映画と砂嵐
腹が立つ。
明日は2人とも休みだからと晩御飯を食べてからすぐにベッドに縺れ込んで、シーツを馬鹿みたいにぐしゃぐしゃにした後2人でお風呂に入った。
お風呂でもまた盛った中学生みたいに繋がって、まだお互いにしたりないけど私が疲れたから、先週のレンタルビデオ店で私が見たかった恋愛映画と、ヒュウガが借りてきていたアクション映画のどちらを今晩見るかで運命を決める聖なるじゃんけんをした2時間前までは全てが上手くいっていた。
見始めたのは深夜0時を過ぎた頃で、映画が終わった今とっくに日付は変わっているが、いつもの私達だったらこれからまた何回かやって昼くらいまで死んだように寝るのがお決まり。
なのにだ。
私の隣に座っているヒュウガは気持ちよさそうに寝息を立てて寝ている。
別にセックスができなくて腹が立っているとかそういうわけでは断じてなく、じゃんけんでヒュウガが勝って、私は興味もないアクション映画を見せられていたというのに、見たかった本人が序盤から寝たことに腹が立っているのだ。
しかも面白かったのが余計腹が立つ。
「むにゃむにゃ〜。アヤたん、もうそんなに食べれないよ〜。名前ならいくらでも食べれるけど……むにゃむにゃ…」
彼は一体どんな夢を見ているのか。
会話から察するに彼は変態みたいだ。
や、違った。
変態そのものだった。
この淫獣め。
虚しく流れるエンドロールを見ながら貸出し用のケースを手に取っては見たものの、わざわざDVDをデッキから出してケースに入れるのも面倒で、また適当に足の低いテーブルの上に置いた。
「あ、これ返却日明日までだ。」
といってもすでに時計の針は0時を過ぎているため正しくは今日だけど。
深夜に映画を見る時は電気を真っ暗にしているため、この部屋にはテレビ以外の光はない。
ヒュウガだって日中しているサングラスも今は外している。
平和そうな顔をしてたまに船を漕いだりしている様はどこか可愛らしい。
基本的にヒュウガはサングラスを外さないから、こうしてサングラスをしていない彼を見ていられるのは貴重だと思う。
何だか私だけの特権みたいで嬉しいけれど、エンドロールが終わってテレビ画面が最初のメニュー画面に切り替わった瞬間やっぱりこの寝顔が憎たらしくなった。
可愛さ余ってなんとやらだ。
「ちょっとヒュウガ、こんなとこで寝ると風邪ひくけど?」
ソファに並んで座っている私達は1枚のブランケットに2人で包まっているが、夜は体の芯から冷えてくる。
肘で突いて起こしてやると、ヒュウガは本気で寝入っていたらしく眠たそうに目を瞬かせた。
「おはよう…。」
「や、まだ夜だし。」
寝ぼけているヒュウガに鋭いツッコミを入れて、リモコンを手に取りデッキ電源を切る。
真っ暗な画面から、チャンネルに変えたところでヒュウガに肩を抱き寄せられた。
彼も眠たそうだし今日はもう寝るかと、次テレビを点けた時のために適当なチャンネルに変えて電源を消そうとしていたところだったのに。
変えたチャンネルはすでに何の番組もやってなくて、砂嵐がザーッと耳につく。
「……する?」
耳を食まれながら聞かれたけれど、どうにも乗り気じゃないように見える。
今は欲求も欲求で睡眠欲求の方が強そうだ。
「聞くくらいならしない。」
私は別にどっちでもいいけど。
アクション映画見せられたせいで妙に気持ちが興奮していてまだ眠くないし。
それに、したいかしたくないか聞かれるくらいならしなくてもいい。
私はどちらかというと少し強引に攻めてくれた方が好きだ。
「じゃぁしよっか♪」
なんだ、結局したいんじゃん。
そんな言葉は飲み込んで、私は自分のポケットからゴムを取り出して彼の手に握らせた。
「いいけど、さっきも言ったけどゴムはつけてね。」
そう告げるとヒュウガは明らかにふて腐れた。
子どもできたら結婚しようか。という意見が一致した半年前ぐらいからずっと生でしてきたせいか、ゴムが窮屈なのだろう。
気持ち良さも全然違うというし。
女の私としてもつけてないほうが気持ちいいけれど、こればかりは譲れない。
子どもができたら結婚しようか。という結論に2人で至った経緯としては、長くダラダラと付き合っているせいでお互いに切っ掛けを逃しただけだ。
一緒に住んでいるし、恋人のままでも結婚しても大して変わらないと思っている。
第3者から見たら呆れられてばかりの私達だけれど、お互いにこんな性格だからこそ、私はヒュウガと付き合っていけているし、ヒュウガだって私に付き合っていけているのだと思う。
「何、名前はオレの子欲しくなくなった?」
「じゃなくて、」
「何、他に男でもできた?」
「違うし馬鹿。」
「じゃぁ結婚したくなくなったの?」
「あぁーもう!人の話聞け!」
脳天チョップを一つかましてやったが、痛かったのはどうやら私だけのようだ。
軍人である彼が石頭なのか、頭まで訓練で鍛えているのか、痛みに強いのかはわからないが、頭をチョップした私の右手が少しだけジンジンと痛くて軽く悶えると、ヒュウガは吹き出すように笑いながら「大丈夫?」と聞いてくる。
それが何だか悔しくて、アクション映画の恨み辛みも含めてジト目で睨んでやった。
「結婚はしたいわよ。子どもだって産みたいわ。それはヒュウガとがいいし、むしろもうヒュウガとじゃないと嫌。だけどエッチするならゴムはつけなさいってお医者様が言ったのよ。」
「は?」
何でそこで医者が出てきたのだろうとでも思っているのだろう。
ヒュウガは目を点にした。
そんな彼を尻目に砂嵐の流れるテレビを見やる。
「砂嵐、今の内から録画しておかない?ほら、赤ちゃんって砂嵐の音聞くと泣き止むって聞くでしょ?」
砂嵐と私と私のお腹を何順も見たヒュウガはようやく察したのか、「もしかして…、」と私の両肩を掴んだ。
「ま、そういうこと。」
どうやら私たちは恋人から大きな1歩を踏み出しそうです。
映画と砂嵐
(あ、そうだ。DVDはヒュウガが返しに行ってくれる?)
(今は話し変えるとこじゃないよねっ?!?!今はオレが決めるとこ!!)
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