キッチンにて、
私の腰に回る逞しい腕とか、お腹辺りに這っている無骨な指とか、背中に感じる体温に、首筋に掛かる吐息とか。
どれも日頃私をドキドキさせてしまうものなのだけれど、今は…今だけは邪魔で邪魔で仕方がない。
「ねぇ、邪魔なんだけど。」
「んー♪」
聞いちゃいねぇ。と呆れながらトントンとリズミカルに長ネギを切っていると、腰に回っていた彼の手がサワサワと私の腰を撫でてきた。
包丁で刺してやろうか。と、わざとらしく私の目の前まで包丁を持ち上げると、その手はまたお腹辺りに回った。
大体ヒュウガが『今日鍋食べたいなぁ♪一人で鍋つついてもつまんないから作りに来てよ。』と言ったから、溜まっていた書類も終わらせて仕事でヘトヘトのところを『彼氏のためだ。』と身体に鞭打って作りに来たっていうのに、なんだこの状況は。
手欲しがりの子どもか!といくら言っても聞きやしない。
「何、今日はいつもより甘えたさん?」
「ん。」
微かに頷いたヒュウガは私を抱きしめる腕により一層力を込めた。
ここ最近私の仕事が溜まっていて寂しい思いをさせてるとは思っていたが、反動がここまでひどいとは思っていなかった。
さて、この大きな子どもをどう宥めてソファに座らせていようかと模索し始めた時、するりと太ももを撫でる大きな手の感触がした。
びっくりして私が手を切ったらどうするんだと言うと、彼は「その時は舐めてあげる」と言ったっきり左手を内太ももへ、右手を服の裾から中へ入ってブラ越しに胸を撫でてきた。
駄目だ、これはもう彼に面倒なスイッチが入ってる。
こうなったら私が料理中であれ仕事中であれ関係ない。
私はこの鍋よりも先に彼にいただかれるのだろう。
ため息と共に、ぐぅ、と私のお腹が虚しくなった。
(キッチンにて、材料は君とオレ)
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