地球外生命体
今、私の耳はちゃんと機能しているのかと一瞬不安になった。
大きな病気も怪我もしてこなかった私が、ついに人の言葉を勝手に耳が変換して脳へ伝達するという摩訶不思議な病気にでも罹ってしまったのではないかと半ば本気で思ってしまったのだが…
「す、すみません…今、何と??」
「私と付き合って欲しい。」
どうやら病気でも聞き間違いでもなかったようだ。
ということは目の前に立つ彼、こと、この帝国軍の参謀長官がヘンな病気なのか。
恋という名の病気さ…なんちって。
しかしあの有名なアヤナミ参謀が下っ端の下っ端のそのまた下っ端である私なんかと付き合いたいだなんて重症かもしれない。罰ゲームかなんかだろうか。
それとも『笑って許して!衝撃!ドッキリ!!』とか??それならば、アヤナミ参謀に呼び出された段階から私は十二分に衝撃を受けているから成功だよ。大成功だよ。
早くドッキリだとバラしてくれて構わないよ!と思うのに、どれだけ待ってみても『なーんてね!』と誰かが現れる気配はないし、アヤナミ参謀だってピクリとも動かない。
こりゃ本気か?と訝しがり始めたところで「嫌なら断ってくれて構わないが」と返答をしない私に痺れを切らしたのかそんな言葉が降ってきた。
嫌とかそういうのではなくて、理解不能なだけだ。
「えっと…私の事好きなんですか?」
「そうなるな。」
「そうですよね。」
うーん…告白って、こう、なんていうか、もっとドキドキってするものじゃなかったっけ?
ましてや告白する側は特に。
なのにどうしてアヤナミ参謀がいつもと表情がかわらないんだろう。
この表情は仮面か何かなんだろうか。
しかも何故私なんだ。
顔だって普通だし、出るとこ出てないし戦闘能力だって低いっていうのに。
強くてビジュアル良し、頭も良くてスタイルだって良い、その上高収入で地位も高い彼は平々凡々な私からするとちょっと出来すぎているというか、正直雲の上の存在で、地球外生命体みたいな…いや、むしろ地球外生命体そのものみたいな人なのに、疑問は募る一方だ。
大体私のどこが好きなんだろうか。
顔…いや、それだけはないな。
スタイル…これもないな。
いくら考えても出てきやしない。
いっそのこと私のどこが好きかを聞いてみるのも良いかもしれないが、今始めて話したというのに、いくら地球外生命体といえど私の内面全てをわかっているはずもない。
逆もまた然りだ。
私だって彼の事はほとんど知らないのだから。
つまり、頷く理由もなければ断る理由だってないということなわけで、じゃぁ私はどうしたら…
「色々考えて迷うくらいなら付き合え。」
「へ?!あ、ハイ。」
思考の渦の中にいた私は、命令にも似た口調で言われたせいか咄嗟に頷いてしまった。
命令口調で言われると、とりあえず頷いておけとばかりに反応する身体は下っ端の悲しき性か。
ハッとした時には彼が少し満足気に笑っていたから、ま、いいか。なんて思ったりして、この地球外生命体と前向きにお付き合いする事にしてみた。
(笑うと意外にかわいいんですね。と言ったら、彼は怒るだろうか。)
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