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「ア、アヤナミさん??ほんとに…するんですか??」


ちゅ、ちゅ、とわざと音を立てて瞼や額に口づけが落とされる中、私は恐る恐る聞いてみた。


「ここで止めろと?」


ここでって、まだ服を脱いでもいないこの状況ですけど。
ただアヤナミさんがキスの雨を降らせてくるだけで。


「そういうわけじゃないんですけど、いや、そういうわけで…」

「うるさい。」


ベロリと上唇を舐められて軽く吸われた。

ぞくりと肌が粟立つ。


「アアアアアヤナミさん、ちょっと、色々と事はゆっくり進めていきましょう?ね?ね??」


出来ればこの雰囲気を壊したいのでしゃべりまくる。
なのにアヤナミさんは止めるどころか、頬、耳、首筋へと唇を下ろしていくではないか。

これはマズイ。
別に生理中というわけではないし、嫌というわけではないけれど、何だか…乙女心がマズイと叫んでいる。

服のボタンを外されながらふと考えてみた。

こういう行為をするのは始めてなのだが、やけに頭が冴えている。

むしろ行為は初めてだからとパニックすぎて、沸点を軽く過ぎているからこんなにも頭がスッキリとしているのだろうか。

あぁ、でもアヤナミさんだからという言葉が一番しっくりときた。
アヤナミさんだから嫌じゃない。
アヤナミさんだから怖くない。
いや、怖い人だけど。

でもこの人は私に怖いことはしない。
…多分。
痛いこともしない。
…恐らく。
嫌がることもしない。
…きっと。

そうだといいなぁなんて思っている私もいるけれど、アヤナミさんを感じたい私。
そして私を感じて欲しいとも思う。

だけど知識はあれどそれに体も脳もついていかないのが現状だ。


「アヤナミさん、聞いてます?」

「聞いているからその口をしばらくの間閉じていろ。私の名を呼び、大人しく身を任せて嬌声をあげていればいい。」


それは私にマグロになれと??
いや、確かに初めてなのにあれやこれやできないですけどね。
そんな度胸あったら初めからアヤナミさんのもとから逃げ出したりしてませんし。

だけど、


「んっ。」


あっという間に服を脱がされ、下着姿になった私は羞恥に悶えていた。
アヤナミさんが胸の谷間にキスを落としてくるのだ。


もうマグロでも何でもいいからサッとしてサッと終わって欲しい。
こんな恥ずかしい格好、嫌だ。


無意識に胸を隠すと、その手を優しく取り払われた。


「隠すな。全て見たい。」


ブラのホックを器用に片手で外し、あっさりとそれを床に落とすアヤナミさんの手際の良さに感服する。


「は、恥ずかしくないんですか?」

「それは名前の方だろうが。」


た、確かに。


「じゃ、ぁ…アヤナミさんも脱いでくださいよ。私ばっかり不平等です!」


頑張って意見を言うと、アヤナミさんは数秒考えた後、あっさりと上着を脱いだ。

薄暗い闇の中、闇に慣れている目が微かにその肌を捉える。
しなやかな筋肉は少しだけ胸をときめかせた。


「触ってもいいですか?」


答えを待たずして手を伸ばすが、アヤナミさんは何も言わずに触らせてくれた。

胸板、腹筋と触ればそれで満足だ。


「…すご……」


私も鍛えたらこんなふうになります?と言えば、絶対止めろと言われた。


「いいじゃないですかー腹筋割れてる女の子もいいですよ?」

「良いか悪いかじゃなく、名前だから止めろと言っているんだ。どうせすぐ筋トレに飽きるだろう?そのくせジョギングに付き合えだの言われそうでな。」


つまりアヤナミさんに被害が被るのは面倒だから絶対止めろと。


「失礼ですね。ヒュウガさんとかコナツさんにでも頼みますもん。」

「あの二人が仕事を抜けたら誰がその分の仕事をすると思ってるんだ。いいからそのままでいろ。」


そ、それって、今の私のままで十分好きだよってことですか??!!
嬉し…


「少しぷにぷにしていて触り心地がいい。」


くない。
やっぱ全然嬉しくない。


「そりゃぁ男の人より体脂肪率はあるでしょうけど??」

「そんなの当たり前だ。」

「あ、きっと胸だ!胸で体脂肪率が…」

「大きすぎず小さすぎず、普通だな。」


普通が一番だよ!
何が悪い!
そりゃぁもうちょっと欲しいけど!
神様が運命の赤い糸は繋げてくれても、胸まではくれなかったんだよ!!


「文句あるなら触んないで下さい。」

「いや、ちょうどいいと言っているんだ。」


アヤナミさんはそう言って私の右胸を掴むとやわやわと揉み始め、左胸に唇を這わせた。

胸の先を舌で転がされていると思ったら、甘く噛まれて嬌声があがった。

まるで自分のものとは思えないほど高くて甘い声。
体はどうしようもなく熱く火照ってきている。

何だか私ばかりが感じているようで、もどかしい気持ちになる。
早く最後までさせてあげたい、したいと思うのに、アヤナミさんは念入りに前戯を行う。


「っふ、ぁ…アヤナミさ…、キス、したい…」


キスを強請れば、少し強引に口づけが施された。
口内に入ってくる舌は熱くて、私の舌がとろけそうだ。

そんなことを思っていると、太ももに熱い昂ぶりが押し当てられた。


ドクリと心臓が飛び跳ねる。


「ア、…ぁ、アヤナミ、さ…」


押し当てられているのは私なのにこっちが恥ずかしくて、震える声を頑張って出しながら顔を背けると、両手で頬を掴まれ真っ直ぐ前を向かせられた。

そうしてまた口づけ。
今度は触れるだけだったけれど、それもまた気持ちいい。


アヤナミさんは私の体のラインをなぞるようにして、若干濡れてきている秘部に指を這わせた。

ピクリと肩が跳ねたきり、私の体が硬直する。
他人が触れる場所ではないところを指が割いて中に入ってくる感覚。

素直に怖いと思った。
それはアヤナミさんを怖いと思っていたあの日と同じ感情ではないけれど、明らかなる戸惑いからくる怖さ。

自分さえ知らない中をアヤナミさんの指が入っているのだ。
怖くないはずがない。


「ぁ…アヤ、さ…ゃ、ヤだ…」

「人の膝の上に乗って誘ってきたやつの言葉とは思えないな。」


喉の奥で笑われる。

こんな時に、私の意思でやったわけではないということを分かっているくせに意地悪を言う。

あぁ、こんな時だからこそか。
きっとアヤナミさんは私の気を紛らわそうと…


「すぐに慣れる。」


そういって秘部に舌を這わせ始めたアヤナミさんに絶句する。


な、慣れるかぁ!!
ぜんっぜん紛れなかった!
全然紛れてないよアヤナミさん!!


「…ふ…っ、ッん…」


手のやり場に困る。
どこに手をやったらいいのかわからなくて、シーツをキツく握れば薄く微笑まれた。


舌が出入りし、指が中を押し広げるようにかき回す。


「ぁ…、ッ」


その不思議な感覚に気が遠くなる。
それがアヤナミさんにも伝わったのか、アヤナミさんは「前戯の段階で気絶するなよ」と言って指を激しく動かし始めた。

シーツをしっかり握っているのに、手のひらに微かに爪が食い込んだ。
力むなとかなんとか言われているような気がするけれど、もう言葉なんか頭に入ってこない。
額に珠のように浮かぶ汗が流れたのを感じ、私は絶頂を迎えた。

ビクビクと四肢が痙攣し、一際高い嬌声があがる。
アヤナミさんは満足したように口の端を微かに吊り上げて指を抜いた。

大きすぎず小さすぎずとか言われた胸を上下させてまどろんでいると、覆いかぶさってくるアヤナミさんの体。

私の体なんてすっぽり隠せてしまうくらいしっかりとしているその体が目の前にある。
太ももを先程より開かれ、

ふと、くる…と思った。

このアヤナミさんが私を達せただけで満足するわけがないのだ。


秘部にアヤナミさん自身が押し当てられた。
先程太ももに押し当てられた時よりも熱く、硬い。


緊張で私が息を飲む前にと思ったのか、アヤナミさんは早急に中に入れてきた。

圧迫感で内臓がせり上がってくるような感覚はあまりいいものとはいえない。

それに、とてつもなく痛い。
割かれているだけなのに、裂かれているようだ。

アヤナミさんも辛いのか、少しばかり眉間に皺を寄せていた。


その表情が何だか色っぽく見えて心臓が高鳴る。
それと同時にまた一本、アヤナミさんの眉間に皺が寄った。


「お前は食いちぎる気か。」


何をとはさすがに聞かなかった。
というか、聞けなかった。

圧迫感のせいで上手くしゃべれないのだ。
それよりも、アヤナミさんの掠れたような熱っぽい声が更に興奮させる。


「ぃ、ッ、いた…ぃ、んっ、ぁ」


ゆっくりと揺さぶられ始め、シーツをキツく握っていた右手を絡め取られた。
左手を何となく縋るようにアヤナミさんの腕に添えると、打ち付けられるスピードが速くなった。

ベッドの軋む音がやけに耳につく。
この時にはすでに痛みなんてどこかに飛んでいっていた。
びっくりするくらい気持ちよくて、逆のその快感に絶えようとしてアヤナミさんの腕に爪を立てた。


絶え間なく響く水音に、私は精神的にも追い込まれる。
体はすぐそこまできている絶頂を迎えようとしていて、それを手助けするように気持ちが逸って頭がおかしくなりそうだった。


「ぁ、アヤナミさ…、っぁ、ん、ッ!」


名前を呼ぶと、箍が外れたかのように快感が堰を切って溢れ出てきた。
愛しさと気持ちよさとが交じって、私は二度目の絶頂を迎えた。


「名前…、名前…」


アヤナミさんもうわ言のように私の名前を呼びながら、数回腰を打ちつけた後、私のお腹の上へ欲を吐き出した。

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