あとがき



『青い傷痕』、最後まで拝読ありがとうございました。

こちらは数年も通っていただいてくださっている上にもうお礼を言っても言い尽くせないほど拍手やメールをいただいております朔良様よりいただいたリクエストを元に書かせていただきました。
まずはお礼を言わせてください。
朔良様、リクエストありがとうございました!!

さて、まさか短編のお話がこんなに長くなるとは私自身ビックリですww
リクエストをいただいたときは『長くても前編後編ぐらいかなー』と思っていたのですが、書いていっていたらヒュウガが出てこない出てこない(笑)
急遽プロットを作ってみたら中編ぐらいの長さになって。
『じゃぁ10話前後ぐらいかなー』と思いながら書いていったらヒュウガが夢主と再会したのが5話目という…。
やっと再会したーと思ったら全くプロット通りに進んでいないことに気付き…。

結果、23話。

予定は未定ですってやつですね。
でもいやー楽しかったー。


青い傷痕という題名は必死に考えました。
青い=青春。
その傷痕という感じです。


やはり長編を書き上げた後は達成感に見舞われてすごくいい気分になれますね。
今回も『それから』を書いておりますので、よければご覧下さいませ♪





〜After that〜

(前半のみ22話で夢主が強盗に掴まっている時のヒュウガ達のお話)



『あー名前がせっかくデートに誘ってくれたのに仕事だなんてオレってばついてないなー。あーあ。』


机にダラリと体を預けている少佐の手には一応ペン。
一応だ。

少佐のそのペンが書類を走った覚えなど、ほんの15分前から見た記憶がない。

これではデートに行っても行っていなくても同じだったような気がしなくもないけれど、数行でも進んでくれればそれだけでもありがたいと思ってしまうほど自分は追い詰められているのだ。


『少佐、口だけじゃなくて手を動かしてください。』

『怨霊がオレの腕にくっついてて動かないー。』


さっきからこんな調子だ。
あからさまに大きなため息を吐くが一向に少佐が仕事をしてくれる気配はない。

早く終わらせて夕方からでも会えばいいのにと思う。
夕食だけでも一緒に食べれるように頑張れば、恐らく昼間に死ぬほど仕事を頑張ったとしても報われるだろうに。


『少佐、早く終わらせ、』

『ねーねーヒュウガ、街で銀行強盗があってるらしいよ。知ってた?』


昼の休憩から戻ってきたクロユリ中佐とハルセさん。
僕の言葉を遮った中佐の言葉に、屍と化すんじゃないかと思っていた少佐がピクリと動きを見せた。


『街で?』


上半身を起こし、椅子の背もたれにきちんと背をつける少佐。
その表情はいつものように飄々としているようにも見えるが、どこか真剣だ。

少佐はいつもこうだ。
名前さんのこととなったら笑顔を浮かべながらも冷静に頭を働かせる。

きっと街で偶然にも名前さんがその銀行強盗にあってたいたら、目の前にある書類の山を放って行ってしまうのだろう。

まぁ、たくさんいる街人から名前さんがその銀行強盗にあっているという確立はとてつもなく低いが。
絶対大丈夫だろうと書類にペンを走らせる。


『今さっき食堂で名前が捕まってるの偶然見たってヤツがしゃべってたよ。』

『はぁ?!あ、いえ、すみません、続けてください。』


あまりの確立に、らしくない声を上げてしまったが中佐の続きを促す。


『なんかねー、この前の遠征で癒してもらったヤツらしいよ。そいつが名前を銀行に入って行くのを見かけたと思ったら顔を隠した男が数人入って行ってシャッターが閉まって強盗の騒ぎになったって。』

『そ、それは…名前さん、大丈夫でしょうか…。心配ですね、少佐…って、もういないっ!!!』


という会話があったのが数時間前。

自分達も助けに行くかと話になったが、ヒュウガ一人行けば十分すぎるだろう、しかもヒーローは一人で良いのだと、ちょうど休憩から帰って来たカツラギ大佐に言われたのでこうして変わらず書類にペンを走らせている。

高い位置にあった太陽はほぼ沈んでいる。
遠くには薄っすらと夜が迫ってきているが仕事が終わる気がしない。







「少佐が、帰って来ない…」


コナツがポツリと呟いた言葉にハルセ以外がだんまりを決め込む。


「そういえばそうですね。現場はすでに収集がついたと聞きましたが…」


この純粋純情な2人に一体誰が『空気読みましょうか』と言えるだろうか。
言った瞬間、『どういう意味ですか?』と聞き返してきそうな2人。
言ったが最後だ。

ヒュウガが名前さんを部屋へと招き入れるのを見たという目撃情報はすでに得ている。
恋人のピンチに駆けつけて、無傷で助け、部屋へ連れ込めばすることといったら一つだろう。

カツラギは一人参謀長官室にいてこの会話を聞いていない彼と同じように少しだけこの場から抜け出したい衝動に駆られた。

ヒュウガが帰って来ないことに対して、あのアヤナミでさえ何も言わないのに。

クロユリはクロユリで呆れた目を2人にむけているし、この執務室は今微妙な雰囲気だ。


「部屋に帰ってきてるんですか連れ戻しに行ってきますね。」

「そうですね、それがいいと思います。」


いやいやいやいや、とクロユリとカツラギは心の中でツッコむ。

純粋なことはとてもいいのだけれど、ここまでいくと悪意さえ感じる。


「名前さんが無事でホッとしていらっしゃるんですよ、ヒュウガくんも。今日はゆっくりさせてあげてはいかがです?」

「でも書類が……。……いえ、やっぱりそうします。そうですよね、恋人が無事で嬉しくてホッとして寝てるのかもしれませんね。」


寝てるの意味が色々と違うだろう。

けれどコナツは素直に頷いた。
彼は真面目だが人を思いやる気持ちは人一倍強い。
それがサボり魔な上司であろうとも見逃してあげてしまう。

カツラギの言葉に頷いたのは純粋が故だ。

彼はきっと本当に心の底から『ヒュウガが名前が助かったことにホッとして気が抜けているのであろう』と思っているに違いない。


カツラギとクロユリは小さく2人にバレないようにため息を吐いた。


夜は、すぐそこまで来ていた。








「んぅ…」


筋肉って重い。
そんなことを朝焼けに照らされながら思った。

腹部に回っているヒュウガの腕の重さに身じろぎながら、寝ぼけ眼のまま彼の寝顔を見つめる。

素肌に彼の素肌が触れていて恥ずかしいけれど、体温を直に感じることができる。
私を抱きしめるように眠っている彼はどこか幸せそうな顔をしていて、見ているだけでこちらも幸せになれた。


「ヒュウガー朝ですよー。」


もぞりと体を動かしてヒュウガの肩を揺する。

ヘッドボードに置いてある時計は7時を差したばかりだった。
彼が何時に起きないといけないのかわからないため、とりあえず起こしておく。

が、彼は身じろぎ一つしない。


「ヒュウガ、7時だけどまだ起きなくて平気なの?」


まるで母親のようなセリフに自分で言っておいて自分で笑ってしまった。

ヒュウガが今度は小さく身じろぎしたかと思えば、押しつぶされるように抱きしめられた。


「あと10分。」

「重いー!潰れる潰れる!!起きて!でないと私死んじゃう!」

「あと20分…。」

「なんか長くなってるよ?!?!」


耳元で叫んでしまったせいか、ヒュウガは「んー…朝から元気だね…」と言う。
言うだけ。
起きはしない。


「ヒュウガさーん、ちょっとホント起きようか。」


朝から生死の境目に合わされるのはごめんだ。
なのにヒュウガはまだ起きなくて。

仕方がないから彼の唇に唇を押し付ける。
そうするとヒュウガの重たい瞼がパチリと開いた。


「起きた?」

「起きた。」


この男はシンデレラか、と笑いながら彼の肩を押し戻そうとした。
しかし未だ動いてくれない。


「ヒュウガ?もう起きてるでしょ?退いて欲しいんだけど。」

「んーもう一回。」

「は?」

「名前からキスしてくれるのなんて初めてだから。もう一回♪」

「却下します。」

「ヤダヤダー。」

「子どもかっ!」


そんな攻防戦を朝からくり返し…。

もちろん私は負けてキスをし、お礼とばかりにキスを返され、それからどちらからともなくキスをした。
そうしてもう一度、キスをした。

光のシャワーを浴びながら、穏やかな朝の風景。



(こんな朝がずっと続いて欲しいな、なんて乙女チックに思ってしまったりして)


―Eternal live happily―

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